「管理技術」とは、あまり聞きなれない言葉です。
これは、企業や工場の持つ特殊技術、ノウハウといったものを総称する固有技術に対応する言葉で、科学的に管理するための道具群といった意味があります。
具体的には、IE(動作研究、時間研究など)、QC(品質管理)、VE(価値工学)の三つが有名です。
歴史的に見ても、IE・QC・VEの順番で普及、拡大していきました。
日本では、カイゼン、小集団活動などで知られるQCが最も知られているところです。
QCは、原因と結果の因果関係を徹底的に追及していくことが、そのコンセプトの中心です。
なぜを5回繰り返したり、七つ道具を駆使して問題を解決していきます。
VEが専門だったわたくしの師匠は、メジャーなQCへの対抗意識からか、「QCには、夢やロマンがない」といったニュアンスのことを語っていました。
そして、グラスを傾けるたびに「IEは犯人探し、QCは恋人探し」という口癖を繰り返していました。
VEとは、「value engineering」の略で「価値工学」と呼ばれる管理技術の一つです。
VA(バリュー・アナリシス)と言われることもあります。
これは、第二次世界大戦後、米国GE社で用いられた管理技術で、有名なアスベスト事件がその端緒と言われています。
戦後、高騰したアスベスト材(不燃材)に悩む同社が、同じ機能で低価格な別素材を用いることができることを見出し、これを法則化したものとも言えます。
VEは、「V=F/C」の方程式によって表現されます。
Vは価値、Fは機能(ファンクション)、Cはコスト。つまり、バリューを高めるためには、Fを高める、Cを下げる、あるいは同時にこれらを行うことによって価値の向上を目指します。
製品改善を志向する2nd-LookVE(セカンドルックVE)、開発設計に用いる1st-LookVE(ファーストルックVE)、新商品開発のための0-LookVE(ゼロルックVE)に分けられます。
また、VEは、ハードな製品だけではなく、建設VE、業務改善やサービス向上のソフトVE等が派生しています。
VEの基本的なコンセプトは、目的と手段の合理的な連鎖。機能(F)の追及のため、目的から手段への機能展開していくことなのです。
この目的-手段の機能展開は、「能率」でいう目的-手段の関係と同位といえます。
能率コンセプトでは、目的>手段のことをムダ、目的<手段のことをムリ、そしてムダとムリを合わせたものをムラと呼んでいます。
能率の追及のためには、目的と手段そのものを徹底追及していくことが求められるのです。
また、能率コンセプトでは、そのもののモチマエを活かすことが最重視されます。
モチマエとは、今の言葉でいうと「強み」「コアコンピタンス」「機能」ということになると思います。
このあたりもVE・VAに近似していると考えています。
能率のコンセプトが日本に広がり始めたのが100年前。
VEが米国で誕生して約70年。
日本の能率技師たちの先駆性、先進性が、輝いているように思えます。