「金づちを持つと、すべてのものが釘に見える」・・・
ビジネススクールや大学院などで、よく言われるフレーズです。
中小企業診断士の実務実習などでも、自分の知っているフレームワークをすべてぶち込んで提案書を作るという若手が存在しています。
3C、5F、7SからSTP+4P、PESTやSWOTといったアルファベットまで、ご丁寧に表のタイトルに入れていたりします(笑)。
それを読んだ中小企業の社長さんは、だいたい目が点になり、提案書を閉じてしまいます。
ビジネス・フレームワークの落とし穴
山田英夫著 光文社新書 780円+税
著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授。
社外監査役などを務めている実務家です。
目次
1.経営戦略・・・PEST分析、SWOT分析、3C、5F、PPM、7S・・・
2.マーケティング・・・STP+4P、AIDMA・・・
3.組織・人事・・・7S、コアコンピタンス、VRIO、PM・・・
4.財務、M&A・・・NPV、PMI・・・
今回の一冊は、ビジネス・フレームワークの落とし穴を面白可笑しく指摘するフレームワークの「悪魔の辞典」のような構成になっています。
著者の鋭い切り口に脱帽です。
PEST分析・・・企画書の冒頭を飾る、誰も読まない4つの箱
今更言われたくない、枕詞というか、お決まりの一般論で本当に退屈なパートですね。
SWOT分析・・・やりたい人の主観を、客観的に見せるためのフレームワーク
「それって本当に強みなの?」・・・強みと弱みが混合・・・さらに機会と脅威が逆になっているSWOTをよく見かけます
クロスSWOT分析・・・戦略が自動的に作れる魔法のマトリックス・・・笑
3C分析・・・カンパニー偏重の会社は、外部の変兆にうとい
5F・・・何を既存業界ととらえるかが難問・・・そのとおりだと思います
シナジー・・・M&A前に頻出し、M&A後に聞かれなくなるもの・・・大爆笑 M&Aの成功確率は10%と言われています
ブルーオーシャン・・・事後説明用のフレームワークから脱却模索中 スーパードライの大ヒットだって後付けなんですかねえ
対数グラフ・・・文科系社員を丸太にするグラフ・・・胸が痛いです
PPM・・・作成者の意図がふんだんに織り込まれたマトリックス
問題児、金の生る木・・・それらしく見えます
ビジネスモデルキャンバス・・・ポストイットの販促用キット
座布団3枚!
AIDMA・・・インターネットがなかった時代の牧歌的購入ステップ
今では、サーチが入ってきます
7S・・・すべて覚えている人は、記憶力が抜群か、無駄に覚えている人
ハードとソフトの境界線がよく分かりません
コアコンピタンス・・・自分では分からない自社の強み
コンプライアンス・・・内容や効果よりも、実施したことが重要なコンプライアンス研修
コンプラやハラスメント防止、個人情報保護・・・アリバイ作りが大切です。
NPV・・・NPVわずかにマイナスの企画書は何故ないか?・・・賢い人は、無理やり数字を作り出します。
ビッグデータ・・・無駄な解析をしても、費用がかからなくなったということ
ウィンウィン・・・自社の方が得をしている時に相手を誘う枕詞
ウイスキーのグラスを傾けながら、チビリチビリやると、至福のひと時を味わえることうけあいです。
パワポや横文字を駆使してスライドショーで食べている英語のしゃべれない怪しいコンサルタントや若き診断士に読んでいただきたい一冊です。