ISO、リスクマネジメント、個人情報保護など、PDCAサイクルを回せ、回せと喧しい昨今。
Excelシートが配布され、現場はそれでなくても忙しいのに、
たいへんな作業を残業してまでこなすのが今の日本の会社です。
それって何か変?と思うのは小職だけでしょうか?
「手段の目的化」という言葉がありますが、シート作成、書類作成が目的となっており、
マネジメントの役には立っていないというのが実情ではないでしょうか?
管理ツールは管理ツール、マネジメントはマネジメント・・・バラバラな運用が現場をますます多忙化させるのです。
PDCAは、デミングサイクルと呼ばれています。
デミングさん(1900年~1993年)は、品質管理(QC)の大御所で知られていますが、もともとはアメリカの統計学者。
日本の「デミング賞」も、このデミングさんにちなんだ賞です。
日本が、米国進駐軍(GHQ)の統治下にあった1947年に初来日し、東京、大阪、名古屋といった主要都市で、統計的手法による品質管理を伝授、普及していきます。
戦勝国アメリカとしては左傾化を防ぐため、とりあえず産業復興のための手立てが必要と考えていたのでしょうし、逆に敗戦国日本としては、デミングさんを手厚くもてなし、デミングさんの発する一語一句を必死に吸収していったのだと思います。
この天使のサイクルが回りだし、日本のものづくり企業に、それこそ思想、哲学、管理技術としてのQCが定着化。
時間外までを使っての自主的なQCサークルや小集団活動が始まります。
7つ道具や新7つ道具までも登場・・・難解な統計学は、工場や職場での共通言語になっていったのです。
わたしの友人でメーカーに勤める同級生は、職場結婚。
家庭内でも7つ道具を使って子供の教育問題、貯金、小遣いなどの問題解決をしているとのこと(笑)。
ご飯が美味しくなさそうです・・・。ここまでQC手法が普及しているとは、デミングさんも想像はしていなかったものと思います。
今も書店では統計学は最強の学問といった本が平積みされていますし、週刊ダイヤモンドでも統計学の特集されています。
ただ、これらはビッグデータやweb検索といった素人には手の出せない世界が多々広がっているようにも思います。
中小企業診断士試験の時に苦労した多変量解析・・・。
パソコンを使って、楽々と解析していく友人を見ると、(若者風にいえば)神に見えます(笑)。
わたし自身も、デミングさんは米国でも有名な大学者だと思っていたのですが、実はまったくの無名だったとのこと。
アメリカで表舞台に立つのが、1980年代に入ってからなのです。
米国NBCのプロデューサーが、「米国で無名な統計学者が、日本で品質管理の神様として尊敬されている」というネタを発掘。
当時、世界最強のニッポンの製造業に米国企業がやられていた時期。
日本のモノづくり企業の強さを探ろうと日本の企業を訪れると必ず出くわす「PDCA」。
それを米国の統計学者が普及していったということを、1400万人の視聴者が見たということです。
日本に遅れること30年・・・やっと米国での品質管理に火が付きます。
既に80歳のデミングさんは、車椅子と酸素ボンベとともに全米を講演に回ります。
そして、米国でもSQCやシックスシグマといった品質管理システムの構築が進んでいくことになるのです。
デミングさんの最後の貢献とも言えるのが、PDCAサイクルを「PDSA」サイクルに進化させるというもの。
「PLAN-DO-CHECK-ACTION」を「PLAN-DO-STUDY-ACTION」に発展させようというものなのです。
チェックというと、管理的、官僚的な上から目線、強制的な感じを与えますが、
STUDYというと、まだ、研究、学習、自主性というニュアンスがあります。
少し日本的な情緒性があるようにも思えます。
管理、管理という流れは仕方のない流れかもしれませんが、
少なくともチェックを「スタディ」に変えることぐらいは出来るのではないでしょうか?