能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

能率と日本語 能率技師上野陽一のカナモジ論・・・国語国字改良運動と「モジとコトバの能率」

2013年06月01日 | 学問

英語は、いいよなあ。

わずか26字のアルファベットで表現できて・・・。

小学校入学と同時に習い始める漢字、中高に進んでも、さらには大学、社会人になっても漢字を学び続けなければなりません。

それは、膨大な量です。

この勉強量を、専門性やスキル開発、第2外国語などの習得に向ければというアイデアは、過去様々な形で試されてきました。


大正時代から昭和初期、カナモジの普及が試みられたことがありました。


戦前のため、習得すべき漢字は、今の当用漢字を、はるかに超える量・・・。

おそらく生涯かけてもマスターできないのではないかといった分量です。

当時の外交官や学者たちは、ニッポンの未来、行く末を見据えながら、日本語の在り方について模索していました。

国語国字改良運動」と言われるものです。


1920年には、外交官山下芳太郎らにより「カナモジ会」が設立。

会員二万人。東京と大阪に事務所が設けられました。

国際社会の中で渡り合っていくためには、国字を平易にして教育の効果を高め、国民の教育レベルを上げ、国際競争力を高めてということだったようです。


そこに賛同したのが、当時興隆期にあった能率技師(経営コンサルタント)。

ムリ・ムダ・ムラをなくし、産業界で能率的な近代化を図ろうという志を持った人たちでした。

その中心的な人物が、テーラーの科学的管理法を日本に普及した能率技師の一人上野陽一(1883年~1957年)。

欧米のタイプライターならぬカナモジタイプライターのコンセプト開発にも携わったようです。

ワープロもパソコンもない当時、画期的なコンセプトだったと思います。


教育者でもあった上野は、その著「モジとコトバの能率」の中で漢字のデメリットをあげています。

(「モジとコトバの能率」能率教養文庫5・産業能率短期大学) 

1.字数が多すぎる 

2.読み替えが多い →例:「生」の読み替えが93種もある 

3.字画が複雑 

4.似た字が多い 

5.取り違いやすい 

6.非科学的な字形 

7.読み違いが起こりやすい 

8.読み方も意味も一定しない 

9.眼の衛生に悪い 

 

また、漢字から起こるムダ、日本語に及ぼした漢字のワザワイとして、次の5つをあげています。 


1.同じ字、同じ意味でいろいろの読み方がある 

2.造語がみだりに行われる 

3.同音異義語がふえる 

4.コトバの標準が乱れる

5.漢字は支那語に適す・日本語には漢字は適しない 

 

能率技師でもあり、教育者でもある上野は、日本語の在り方について語ります。


47歳の時、著書「教育能率ノ根本問題」(1930年)で主張。

上野は、著作を漢字、カタカナ交じり文で表記し、日本語カンモジ運動を推進していったのです。


「ひとりの大学者が出ることは国家の名誉であろう。

しかし、スベテの国民を教養あるものに仕上げることは、それよりもさらに重要なことがある。

この目的を達するためには、教育の根本問題から解決してかからねばならぬ。」

 

「われわれだけが、この国語・国字を使うのならば、いまのままでいっこうに差し支えない。

しかし、国語・国字は将来の日本人すべてが平等に教育を受けるには、国語・国字の改良がその第一歩である。

教育はすべからく科学的・能率的なものでなければならぬ。」

 

「能率化するということは、人間を馬車馬のように取り扱ってやたらに疲れさせることであると考えている人がある。

大変な誤りである。

能率の正しい目的はそれとは全く反対に、ムダな労力を省くことにある。

したがって、同じ労力を用いればより多くの能率をますことになる。

これは工場あるいは事務の上の能率についても学校のシゴトたる教育の上についても同じことである。」

 

さらに能率技師らしいのが、米国製高速度フィルム撮影機を導入し、「タイプライチング作業ノ微動作研究/日本産業能率研究所・1932年」「改行に要する時間の研究」を行っているのです。

 

豊かな国語は、文学や芸術、文化を開花させます。

世界で最初の物語文学と言われる紫式部の「源氏物語」。

10世紀、アングロサクソンが、まだまだ狩猟文化にあった中、東洋の小さな島では芸術文化が産まれていたのです。


そういう意味では、国語文化の多様性を目指すのか、あるいは簡素化して国語マスターの時間を短縮して、ほかの教育のための余裕を産みだすのか・・・。

なかなか悩ましいところです。

 

上野陽一のカナモジ論。

表記としては、こんな感じになります。

 

能率五道

 

1. 正坐・・・ワレラ ワ 誓ッテ 正シキ 姿勢ヲ タモタン

 正シキ 内容ニワ 正シキ 形式ヲ 必要トス

 

 2. 正食・・・ワレラ ワ 誓ッテ 正シキ 食物 ヲ トラン
 
肉体ヲ ツクリ 精神ニ 培ウ 原料ナレバ ナリ

 

 3. 正学・・・ワレラ ワ 誓ッテ 正シキ 学問ヲ 究メン
 
学ワ 須ラク 東西ニ 通ジテ 偏ス ベカラズ

 

 4. 正信・・・ワレラ ワ 誓ッテ 正シキ 信仰ニ 生キン
 
正シキ 信仰ワ 正坐 正食 正学ヨリ 生ズ

 

 5. 正語・・・ワレラ ワ 誓ッテ 正シキ コトバ ヲ 用イン
 
正シキ 道ワ 正シキ コトバ ニ ヨッテ 伝ワル


国語の問題・・・考えても、答えがなかなか出ない難問です。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日産本社ショールームに行っ... | トップ | 感動のコピー 思わず立ち止... »
最新の画像もっと見る