日本人を自覚するときに読む本・・・それは、新渡戸稲造の「武士道」、「葉隠」、そして、「茶の本」です。
裏千家を多少親しむ身として、繰り返し読み続けている一冊です。
茶の本
岡倉覚三著 村岡博訳 岩波文庫 400円+税
岡倉覚三・・・岡倉天心(1862年~1913年)著作の「THE BOOK OF TEA」。
フェノロサとともに東京美術学校(東京芸大)を創設した思想家であり、作家。
福井藩の武士として、横浜で誕生・・・その後、明治時代という激動の時代を駆け抜けていきます。
その岡倉天心の残した代表作が「茶の本」。
英語で出された同書は、わずか100ページ。
日清戦争、日露戦争に勝利した日本が、西洋列強に追いつけ追い越せともがいていた1906年の出版です。まさに「坂の上の雲」を目指した時代です。
博覧強記の岡倉天心の文書は、その英語力もさることながら、西洋史、東洋史、哲学、日本文化などに精通。茶道を西洋に伝えるためのロジカルライティング力には驚かされます。
同時期の新渡戸稲造の「武士道」も英語で書かれており、当時の日本には、今以上のグローバル人材がいたことに改めて気づかされます。
「茶の本」と「武士道」は、日本人必読の書という人もいます。
◆「茶の本」目次
第1章 人情の碗
第2章 茶の諸流
第3章 道教と禅道
第4章 茶室
第5章 芸術鑑賞
第6章 花
第7章 茶の宗匠
岡倉天心は、芸術肌の人で、プライベートでも様々な事件を起こします。
フェノロサとともに開設した東京美術学校(東京芸大)の初代校長に就任・・・しかし8年後には辞職して在野の美術院を創立。
中でもすごいのが、上司の妻(しかも妊娠中)をうばい、結婚、離婚するという事件。
上司とは、男爵九鬼氏。
生まれてきた子どもが哲学者九鬼周造(「いきの構造」著者・京都帝大教授)と言われています。
九鬼周造は岡倉天心を父のように慕っていたようです。
明治人の気概とプライド・・・国際社会に飛び足していったグローバル人材のパワーとパッションを感じさせる一冊です。
見渡せば花ももみじもなかりけり
浦のとまやの秋の夕暮