能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

「能率」の時代がやってきた・・・効率から能率へ・・・行きすぎた効率第一主義の見直しが必要かも?

2011年05月07日 | マネジメント

19世紀の末期、米国で誕生した科学的管理法。


F.W.テーラーに代表される生産のスペシャリストが、生産現場の生産性を最大化するために、時間研究、動作研究を行い様々な法則を産み出しました。


従来は、現場の親方を中心に労働者の経験・勘・度胸で進めていた中に、「標準」の概念を持ち込み、客観データや数値で管理をはじめたエポックメーキングな出来事だったのです。

当時の現場での親方、労働者の反発や抵抗はものスゴい状況だったと思われます。

 

しかしながら、この流れは他の工場、海を越えた日本や欧州の工場にも普及していくことになります。

当時は、「エフィシェンシー(=効率)」という用語が一般的でした。

このトレンドは、トヨタに代表されるジャストインタイム(JIT)やサプライチェーンマネジメント(SCM)などに発展進化していくことになります。

 

いっぽうの「能率」という用語は、科学的管理法のコアともいえる「効率」コンセプトに日本的テイストを加えたものという見方も出来ます。


デカルトからはじまる西洋合理主義の具現化した効率に、日本人のワビ・サビ、あるいは東洋思想を加味したものと言えるのです。

能率コンセプトでは、何が何でもコストダウン、どんな犠牲を払っても生産性向上といった考え方はとらないのです。

ムリ、ムダ、ムラをなくす、モチマエを活かす・・・といった主観を入れ込む余地も残されているのです。

 

日経ビジネス2011年5月9日号で、

加護野甲南大学客員教授は、「行きすぎた効率経営を見直せ」と提言されています。

今回の大震災で大きく切断されたサプライチェーン、その影響はGMの自動車工場にも及んでいます。

また、5重の安全システムがあると言われた福島原発の事故も、効率経営一辺倒という素地があるように思われます。

 

加護野教授の提言「行きすぎた効率経営を見直せ」


1.直視してこなかった問題を見据える契機に

2.選択と集中の行きすぎを是正する

3.復興には自立を促す冷めたリーダーが適任

(日経ビジネス2011.5.9 62ページ)

 

「行きすぎた効率」の針を振り戻すためには、一度「能率」コンセプトからの視点・視座で見直しを行っていくことが必要だと考えています。


効率経営は、現場から余裕や遊びを徹底的になくすとともに、今では内部統制、コンプライアンス経営が加わり、その組織の顧客よりも、書類を作ったり、稟議手続をしたりすることに追われています。

 

「効率」から「能率」へ、マネジメントコンセプトが変わる時期に来ているのかもしれません。


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大前研一著「日本復興計画」文芸春秋刊・・・これで原子力の時代は終わった

2011年05月05日 | 本と雑誌

日本を代表する経営コンサルタント大前研一氏。

その著「企業参謀」「続・企業参謀」からは多大なる影響を受けました。

米国流の合理性と理科系思考により難問奇問をバッサリと斬る、そのプロセスの爽快さは、そのへんの推理小説よりもエンターテイメント性に富んでいます。

その大前氏の新刊が、東日本大震災、福島原発事故に対する提言をまとめた物。

それが今回の一冊です。

表紙をはじめとする装丁デザインが「日の丸」。

コーヒーを入れるために同書を伏せた時、鮮やかな日の丸が浮きあがった時には、何とも言えない感動を覚えました。

(装丁担当の関口聖司さん、いい仕事です。ありがとうございました!)


大前さんは、もともと原子力工学が専門。

東工大修士、MITで博士号を取得後、日立製作所で原子力の技術者として活躍されています。

今回の新刊は、三章で構成されていますが、そのうちの二章は、福島原発を巡る専門家としての意見が明快に述べられています。

NHKや民放に登場するナントカ大学教授とは異なる独自の実務論が、リアルに主張されます。

しかも、この本の内容は、BBT大学で三月一三日から放送された、いわばリアルタイムの言質なのです。


第一章 これで原子力の時代は終わった

第二章 三分の二に縮小する生活

第三章 日本復興計画

 

最終章では、東北を今後どのように復興していくべきか、日本は今後どのような方向にかじ取りしていくべきなのかを、大前流にズバリと指摘されています。

現行の計画停電は無計画停電、単なる節電ではなくピーク時の電力消費をコントロールすべし、道州制により変人(!?)による地方公共団体主体の復興計画を推進すべし、日本人のメンタリティを変革すべし・・・といったところに思わず赤線を引いてしまいました。

 

同著の売上の12%は復興のためにつかわれる、大前氏は印税を放棄されているとのことでした。

大前氏の「世のため人のため」の理念が伝わってきます。

リーダー不在で恐怖の無責任体制の「この国」。

大前氏のようなリーダーが求められていると切に感じる今日この頃です。

コンテンツも面白く、一時間で読め、しかも復興のための多少の貢献もできる・・・。買って得する一冊です。


文芸春秋社 定価1,200円(税込)

 

ドラッカー博士の著作と大前研一博士の著作は全冊読破。

ドラッカー博士からは、哲学・思想としてのマネジメントの土台を、大前博士からは合理性追及の姿勢とプラグマティズムの土台を得ることができたと考えています(まだまだ発展途上ではありますが・・・)。


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犯人探しと恋人探し 能率とVEの類似性 IE(動作研究、時間研究)・QC(品質管理)・VE(価値工学)

2011年05月04日 | マネジメント

「管理技術」とは、あまり聞きなれない言葉です。


これは、企業や工場の持つ特殊技術、ノウハウといったものを総称する固有技術に対応する言葉で、科学的に管理するための道具群といった意味があります。

具体的には、IE(動作研究、時間研究など)、QC(品質管理)、VE(価値工学)の三つが有名です。

歴史的に見ても、IE・QC・VEの順番で普及、拡大していきました。

日本では、カイゼン、小集団活動などで知られるQCが最も知られているところです。


QCは、原因と結果の因果関係を徹底的に追及していくことが、そのコンセプトの中心です。

なぜを5回繰り返したり、七つ道具を駆使して問題を解決していきます。

VEが専門だったわたくしの師匠は、メジャーなQCへの対抗意識からか、「QCには、夢やロマンがない」といったニュアンスのことを語っていました。

そして、グラスを傾けるたびに「IEは犯人探し、QCは恋人探し」という口癖を繰り返していました。


VEとは、「value engineering」の略で「価値工学」と呼ばれる管理技術の一つです。

VA(バリュー・アナリシス)と言われることもあります。

これは、第二次世界大戦後、米国GE社で用いられた管理技術で、有名なアスベスト事件がその端緒と言われています。

戦後、高騰したアスベスト材(不燃材)に悩む同社が、同じ機能で低価格な別素材を用いることができることを見出し、これを法則化したものとも言えます。


VEは、「V=F/C」の方程式によって表現されます。

Vは価値、Fは機能(ファンクション)、Cはコスト。つまり、バリューを高めるためには、Fを高める、Cを下げる、あるいは同時にこれらを行うことによって価値の向上を目指します。

製品改善を志向する2nd-LookVE(セカンドルックVE)、開発設計に用いる1st-LookVE(ファーストルックVE)、新商品開発のための0-LookVE(ゼロルックVE)に分けられます。

また、VEは、ハードな製品だけではなく、建設VE、業務改善やサービス向上のソフトVE等が派生しています。


VEの基本的なコンセプトは、目的と手段の合理的な連鎖。機能(F)の追及のため、目的から手段への機能展開していくことなのです。


この目的-手段の機能展開は、「能率」でいう目的-手段の関係と同位といえます。


能率コンセプトでは、目的>手段のことをムダ、目的<手段のことをムリ、そしてムダとムリを合わせたものをムラと呼んでいます。

能率の追及のためには、目的と手段そのものを徹底追及していくことが求められるのです。

また、能率コンセプトでは、そのもののモチマエを活かすことが最重視されます。

モチマエとは、今の言葉でいうと「強み」「コアコンピタンス」「機能」ということになると思います。

このあたりもVE・VAに近似していると考えています。


能率のコンセプトが日本に広がり始めたのが100年前。

VEが米国で誕生して約70年。

日本の能率技師たちの先駆性、先進性が、輝いているように思えます。


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日経ビジネス 「にっぽんの底力」キャンペーンに賛同!!!

2011年05月01日 | 本と雑誌

日経ビジネス5月2日号34ページで同誌の発行人渋谷和宏さんが、「にっぽんの底力」と題し、日本経済全体へのエールを送っています。

過去、間接的な提言であった同誌が、ここまで表立って踏み込んで主張したことは初めてではないでしょうか?

20年以上、同誌に目を通していますが、直球で、しかも発行人の方が、ここまで言及することはすごいことだと思います。

 

「企業の活力こそ、未来を紡ぐ原動力だ」をキャッチフレーズにして、「(中略)それぞれの企業の活力が、一人ひとりのビジネスパーソンの思いがにっぽんの底力だ。」と結んでいます。

まさに、そのとおりだと思います。


アジア諸国の追い上げ、国内経済の停滞、国際的な地位の低下など、この国のポジショニングは大きく変わりつつあります。

この中で、一つの企業、一人のビジネスパーソンが今まで以上の成果を叩きだしていくこと、それこそが日本経済を立て直す唯一の道だと思います。


被災地域の復興、暴走する原子力の抑え込みと同時に、企業、それを構成するビジネスパーソンが全力で仕事にあたり、成果、業績をあげていかなければなりません。

これがなければ、日本のファンダメンタルズは元に戻らないのです。

同誌の特集の一つにサントリー社長の佐治氏と作家の伊集院静氏の対談が掲載されています。

その中でも「いつかは復活してやろうという意思を持ち続ける」「国民が2倍努力すれば日本はいい国になる」と語っています。


日本を代表する経済誌の一つは、今、行動を起こそうとしています。

一過性のものではなく、継続性のある一貫した主張をし続けていただくことを期待しています。


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