人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会」を聴く~漆原啓子&練木繁夫

2012年03月18日 09時16分10秒 | 日記

18日(日)。昨日、あいにくの雨でしたが、東京文化会館小ホールに行き、漆原啓子(ヴァイオリン)、練木繁夫(ピアノ)によるベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会」を聴きました1日で全10曲を演奏しようとする無謀な、もとい、精力的な試みです 2部構成で、第1部は午後2時から第1番~第5番「春」が、第2部は午後6時から第6番~第10番が演奏されます。2回通し券を買うと記念CDがもらえるというので9,000円を投資し通し券を入手しました

 

                

 

第1部の客の入りは9割程度でしょうか。会場のあちこちにヴァイオリンを背負った学生らしき姿がちらほら見えます 近くに東京芸大、東京音大があるからかもしれません。自席はL列33番。会場右サイドやや後方です。

「ヴァイオリン・ソナタ」は、モーツアルトの時代には「ヴァイオリンの助奏付きピアノ・ソナタ」で、あくまでもピアノが主役でした。ベートーヴェンの時代になって初めてヴァイオリンとピアノが対等の立場で音楽を作っていくようになりました

ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調、第2番イ長調、第3番変ホ長調の3曲は1797年から98年にかけて作曲され、あの「アマデウス」で有名なアントニオ・サリエリに捧げられました。ちなみにサリエリはモーツアルトを暗殺していません。あしからず この中で一番最初に作曲されたのは第2番だったようです。この曲は、何年か前に、すみだトりフォニーホールで豊嶋泰嗣のヴァイオリン、園田高弘のピアノで聴いてすっかりお気に入りの曲になっています

練木繁夫とともに漆原啓子が鮮やかなブルー(水色と青の中間)のドレスで登場です。番号順に第1番から演奏を始めます 演奏曲目は、アルチュール・グリュミオーのヴァイオリン、クララ・ハスキルのピアノによるCDで予習しておいたので、メロディーは頭に入っています 第1番は第1楽章から”ベートーヴェンらしさ”が溢れた魅力的なメロディーです 漆原のヴァイオリンは最初から冴えを見せます。それに練木のピアノがぴったりと寄り添います この人のピアノは安定感というか安心感があります。それは第2番でも第3番でも変わりありません

休憩時間にチケットを提示して記念CDをもらいました。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第1番と第2番が収録されています。2009年~2010年に集録された未発表録音とのことです。家で聴くのが楽しみです

 

                 

                    〔セット券用記念CD〕

 

休憩後に第4番イ短調と第5番ヘ長調”春”が演奏されました。第4番はヴァイオリン・ソナタで初めての短調の曲です。2人の演奏は短調特有の感情表現が見事です そして、第5番”スプリング・ソナタ”です。”春”の愛称は作曲者の死後につけられたものですが、この曲の性格をよく表していると思います。漆原はさわやかな春風が通り抜けていくような心地よい演奏を繰り広げます

鳴り止まない拍手にアンコールを演奏しました。ベートーヴェンの弦楽三重奏「セレナード」から「アレグロ」と「メヌエット」という曲です。これも楽しく聴くことができました 終演は4時20分だったので第1部は2時間20分かかったことになります

 

                             

     予習で聴いたCD(Vn:アルチュール・グリュミオー、P:クララ・ハスキル)

 

第2部まで時間があるので、上野の山を下りて、蕎麦で腹ごしらえをして、再び東京文化会館小ホールに向かいました。早めに並んで会場に入ることにしました。小ホールにはクロークがないのです その代わりコイン・ロッカー(あとで、入れた100円が戻る)があるので、コートや荷物はその中に置けるので、早く良い位置のロッカーを確保するためです。幸い、一番取り出し易い位置のロッカーを確保できたので、コートと折りたたみ傘を入れました 第2部の開演は午後6時です。

会場の入りは第1部よりも増えています。第1部だけ来た人よりも第2部だけ来た人の方が多かったことになります。ちなみに両隣の席の人は第1部と同じ人でした

漆原は衣裳を変えて、鮮やかなグリーンのドレスで登場しました。美人は何を着ても似合いますね さて、第6番は目立たない曲ですが、じっくりと耳を傾けるとすごく良い曲であることが分かります。漆原と練木のコンビはその魅力を十分引き出していきます 第7番はハ短調の曲です。第5交響曲”運命”やピアノ・ソナタ第8番”悲愴”と同じ調整です。彼の激しい気質がこの曲に現われているようです 第8番は一転、明るさに満ちた曲です。2人の演奏は、前の曲との弾き分けが見事です

休憩後は、いよいよこの日の白眉、第9番「クロイツェル・ソナタ」です。この曲はもともとは、イギリスのヴァイオリニスト、ジョージ・ブリッジタワーのために作曲されましたが、なぜか、別のヴァイオリニスト、ロドルフ・クロイツェルに献呈されています。しかし、クロイツェルはこの曲を1度も演奏しなかったと言われています どんな理由があったのでしょうか。漆原と練木のコンビは雄大なスケールの曲を堂々と歌い上げます

さて、いよいよ最後の演奏曲目第10番です。前作クロイツェルの作曲から9年後の1812年に作曲されました。彼の生徒であり、友人であり、パトロンであったルドルフ大公に献呈されています。穏やかな曲で、ヴァイオリンとピアノの対話で始まります。その掛け合いが絶妙です

全10曲を演奏し終わって、笑顔の二人は強い握手。漆原が「(全曲演奏会を)できるかどうか不安でしたが、何とかやり遂げることができました」とあいさつ。会場の拍手に応えてアンコールを演奏しましたが、第1部のアンコールと同じ「セレナード」から「アレグロ」「メヌエット」の2曲でした 第2部の終演は午後8時55分。2時間55分かかったわけです。

第1部と第2部の終わりには2人はCDを買った人へのサービスでサイン会を開いていましたが、こうしたことを含めて大変な1日だったのではないかと思います。私には何も出来ませんがせめてを贈りたいと思います。素晴らしい演奏をありがとうございました

ベートーヴェンの交響曲が”不滅の9曲”だとすれば、彼のヴァイオリン・ソナタも”不滅の10曲”と言えるでしょう この日の演奏会では、これまで親しんできた第5番「スプリング・ソナタ」、第7番ハ短調、第9番「クロイツェル・ソナタ」はもちろんのこと、普段あまり馴染みのない偶数番号の曲=2番、4番、6番、8番、10番の良さを再認識しました。これも漆原啓子と練木繁夫の旺盛なチャレンジ精神のおかげです。次はモーツアルトのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会をお願いしたいと思います

 

                 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする