16日(金)。昨夕の日経夕刊に「ピアノ老舗スタインウェイ身売り先変更」という小さな記事が載りました 記事を要約すると、
「高級ピアノメーカー『スタインウェイ・アンド・サンズ』を傘下に持つ総合楽器製造会社、米スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツは14日、米著名投資家ジョン・ポールソン氏のファンドに総額5億1200万ドル(約500億円)で会社を売却すると発表した スタインウェイは、1853年にドイツ移民の家具職人がニューヨークで創立した老舗ピアノ企業。ドイツのベヒシュタイン、ヤマハ傘下のオーストリアのベーゼンドルファ―と並ぶ世界の三大ブランドとされる スタインウェイは7月に別のファンドへの売却を決めていたが、ボールソン氏側の提案額が上回ったために売却先を変更した」
そうだったんですか、スタインウェイの身売り話が進んでいたのですね クラシックに限らずピアノのコンサートと言えば、必ずといって良いほどスタインウェイが舞台中央に構えています その歴史と伝統と権威のある老舗のスタインウェイが身売りとは驚きを禁じ得ません ボールソンがどこの誰かは知りませんが、だれに売却されるにしても”質”は落とさないでほしいと思います
閑話休題
今野浩著「工学部ヒラノ教授」(新潮文庫)を読み終わりました 今野浩さんは1940年生まれ。東京大学工学部応用物理学科卒業、スタンフォード大学大学院オペレーションズ・リサーチ学科博士課程修了。工学博士。筑波大学助教授、東京工業大学教授、中央大学教授等を経て、現在東京工業大学名誉教授です
今野さんは人生70年のうち3分の2を工学部という組織で過ごしてきたと言いますが、ヒラの教授から名誉教授に至るまで、大過なく勤め上げることができたのは「工学部の教え7カ条」に従って、自らを律してきたおかげだと書かれています 工学部7カ条は以下のとおりです。
第1条 決められた時間に遅れないこと(納期を守ること)
第2条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を勝ち取るべく努力すること
第3条 専門以外のことには、軽々に口出ししないこと
第4条 仲間から頼まれたことは、(特別な理由がない限り)断らないこと
第5条 他人の話は最後まで聞くこと
第6条 学生や仲間をけなさないこと
第7条 拙速を旨とすべきこと
大学スゴロクは助手に始まり、専任講師⇒助教授⇒教授⇒学部長⇒副学長⇒学長で上がりといいます そして、日本の大学では、国立が65歳停年(お役所言葉では定年ではなく停年という)、私立が65歳~70歳のどこかで定年というのが普通、定年を過ぎたスター教授には「特任教授」というポストが与えられているといいます
今野さんは、「学生から見れば60歳はシーラカンス、70歳はビーラカンス、80歳はエーラカンスだ。エーラカンスは転んで頭を打てば一貫の終わりだし、ビーラカンスは大腿骨骨折で寝たきりになる可能性もある 20代の若者がこのような”危なっかしい人”の研究指導を受けたいと思うだろうか」と言います
助手や助教授はもちろんのこと、教授もいかに雑用が多いかということも書かれています 雑用の際たるものは入学試験だと言います。文科省は「入試こそ大事な仕事だ」と主張するが、問題を作ったり採点したりするのは研究活動の時間を削られる雑用の最たるものだ、と言います
理系の教授にしては、かなり文章がこなれていて、分かり易い言葉使いで書かれています