人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

映画「25年目の弦楽四重奏」を観る~ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第14番作品131」がテーマ

2013年08月18日 07時03分17秒 | 日記

18日(日)。昨日、角川シネマ有楽町で「25年目の弦楽四重奏」を観ました 前から観たいと思っていたのになかなかチャンスがなかったのです たまたま17、18の土日はコンサートの予定が入っていないので、これ幸いに出かけました

 

          

 

物語は結成25周年を迎えた弦楽四重奏団のチェリストが難病を患い、引退宣言したことから、残されたメンバーの間に不協和音が生じていくというドラマです

フーガ弦楽四重奏団は、第1ヴァイオリンは冷徹なまでに完璧な演奏を追求するダニエル、第2ヴァイオリンはいつしか自分も第1ヴァイオリンを弾きたいと思っているロバート、ヴィオラはロバ―トの妻でカルテットに深みを与えるレイチェル、そしてチェロは学生たちにチェロを教える立場にあるベテランのピーターから成ります

ある日、チェリストのピーターは医師からパーキンソン病を告知されます。自らの運命を受け入れたピーターは後任のチェリストを指名し、メンバーに引退することを宣言します

残されたメンバーに動揺が生じます。今まで第1ヴァイオリンのダニエルの影に隠れて彼を支える立場に甘んじていた第2ヴァイオリンのロバートは、これを機会にダニエルと第1ヴァイオリンを交替で演奏したいと言い出します。しかし、ダニエルはもちろん、ロバートの妻であるヴィオラのレイチェルまでも、ロバートは第1ヴァイオリン奏者には向かないと主張し、不協和音が生じます

一方、第1ヴァイオリンのダニエルは、ヴァイオリンのレッスンを受けにきたロバートとレイチェルの娘・アレクサンドラといい仲になり、ロバートとレイチェル夫婦との間に不協和音が生じます

そうした中、チェロのピーターは薬の力で最後の演奏会に参加することを決意し、他の3人と共にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番嬰ハ長調作品131に挑みます 通常の弦楽四重奏曲は4楽章から成りますが、この曲は”アタッカ”(休みなく演奏し続ける)による7楽章から成ります

映画の随所にベートーヴェンのこの曲が流れますが、それぞれの楽章が効果的に使われています まず、フーガ弦楽四重奏団が演奏する第1楽章冒頭を弾くシーンです 「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・エスプレッシーヴォ」のこの楽章は、最初に第1ヴァイオリンが崇高なメロディーを奏で、次いで第2ヴァイオリンが同じメロディーを引き継ぎ、それはヴィオラに、そしてチェロに引き継がれます まるでフーガのようにヤーロン・ジルバーマン監督は、この弦楽四重奏曲に触発されてこの映画を作ったといいますが、このカルテットの名前「フーガ」は、この作品の第1楽章冒頭のメロディーから採ったのかも知れません

ベートーヴェンのこの曲は途中で誰かの楽器の音程が狂っても止めるわけにはいきません そういう意味では、彼らの人生も途中で止めるわけにはいかず、それぞれの人生を生きていかなければなりません 4人が演奏する中で修正していかなければならないのです。この映画ではチェロのピーターが最後の演奏会の途中で弾けなくなり、聴衆に向かって引退を宣言し、後任の新しいチェリストを迎え曲を最後まで続けます。そのことによって新しい弦楽四重奏団の誕生を知らしめます

さて、映画を観ている一般大衆のわれわれには、代わってくれるプレーヤーがいるのだろうか そんなことを考えさせられたひと時でした

 

          

 

この映画で一つだけ知りたいと思ったのは、4人に不協和音が生じたときに、チェロのピーターがLPレコードでメゾ・ソプラノの歌を聴くシーンがあるのですが、あの歌は誰の何という歌なのかということです。内容は「昔のように戻ってほしい」というような歌詞だったと思います。リヒャルト・シュトラウスの歌曲のような感じでした後でネットで調べていたら、ピーターの亡き妻ミリアム役でその歌を歌っていたのは、あのアンネ=ゾフィー・フォン・オッタ―であることが判りましたが、誰の歌かは判明しませんでした フォン・オッタ―はかつての面影がなくまったく判りませんでした なお、劇中で実際の演奏をしているのはブレンターノ弦楽四重奏団で、ピーターの代わりにチェロに加わったのはブレンターノ弦楽四重奏団のニナ・リーという女性で、実名での出演だということでした

この映画を観終わって、まっさきに思ったのはベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番作品131を全曲通して聴いてみたいということでした。家に帰って聴いたのはハーゲン弦楽四重奏団の演奏(1996年録音)です。聴きながら、あの場面、この場面を想い起しました

 

          

 

コメント (2)
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