人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでワーグナー「ラインの黄金」を観る~冴えわたる歌手陣,飯守泰次郎

2015年10月02日 07時01分17秒 | 日記

2日(金).わが家に来てから370日目を迎えたモコタロです

 

          

 

  閑話休題  

 

昨夕,初台の新国立劇場でワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の序夜「ラインの黄金」を観ました キャストは,ヴォータン:ユッカ・ラジライネン,ドンナ-:黒田博,フロー:片寄純也,ローゲ:ステファン・グールド,ファーゾルト:妻屋秀和,ファフナー:クリスティアン・ヒューブナー,アルべりヒ:トーマス・ガゼリ,ミーメ:アンドレアス・コンラッド,フリッカ:シモーネ・シュレーダー,フライア:安藤赴美子,エルダ:クリスタ・マイヤーほか.演奏は飯守泰次郎指揮東京フィルで、故ゲッツ・フリードリヒによる演出です

 

          

 

楽劇「ニーベルングの指環」は,ワーグナーが26年もかけて作曲した超大作です 「ラインの黄金」は全体のプロローグに当たる物語で,権力の象徴である指環を巡る闘争や,指環の呪い等が描かれています あらすじは次の通りです

「ライン河の底で3人の娘たちが黄金を守っている.黄金で作った指環の持ち主には無限の力が与えられるが,それが出来るのは愛を断念した者だけ ニーベルング族のアルべりヒが黄金を奪い,指環を作る.一方,主神ヴォータンは巨人兄弟に城を作らせ,報酬としてアルべりヒの黄金を強奪して与えることにする.絶望したアルべりヒは指環に呪いをかける 財宝と指環を手に入れた巨人兄弟は呪いがたたり,弟が兄を殺してしまう 神々はヴァルハル城へ入場するが,ローゲは神々の没落を予感する

 

          

 

まず,会場入り口に掲示されたこれをご覧いただきましょう

 

          

 

7時から9時45分まで165分間休憩なしですよ,奥さん はっきり言って,私はまだ風邪を引いている真っ最中で,しかも腰痛です 体力的には絶不調です.しかし,根性でワーグナーの165分を乗り切らなければなりません

席に着くと,聴衆が2階席を見上げて拍手を始めました こういう時は大抵,皇室のだれかが来場したことを意味します.3階右側のバルコニー席にはテレビカメラが林立し,そのVIPの着席を撮影していました こういうのがニュースになるのですから,何だかんだ言っても日本は平和だな,と思います 私はその人の顔を確認できなかったので,拍手はせず,いつも通りプログラムを読むことに集中しました

会場の照明が暗転し,指揮者の登場を待つところですが,無から有が生じる,あるいは混沌とした状態から形ある世界が出現する様子を表現するためか,すでに指揮者・飯守泰次郎は指揮台にスタンバイしており,おもむろに地の底から湧きあがるかのような音楽を開始します こういう音楽を聴くと,それまでの音楽とはまったく違った,別次元の音楽をワーグナーは作ったのだな,と思います

ゲッツ・フリードリヒの演出は極めてシンプルな舞台作りで,あくまでも歌を聴いて欲しいと言う意図が窺えます 煙幕と光を効果的に使って「ラインの黄金」の世界を幻想的に描きます

歌手陣は充実しています ヴォータンを歌ったラジライネンは過去に新国立オペラでヴォータンを歌っているバス・バリトンです.長丁場を物ともせず張りのある声で歌っていました ローゲを歌ったステファン・グールドも新国立の「指環」ではお馴染みのテノールですが,狂言回し的な役割を見事に演じ,歌っていました

アルべりヒを歌ったガゼリは指環に呪いをかける役柄を見事に演じ,歌いました フリッカを歌ったシュレーダーは過去にも新国立でワーグナーを歌っていますが,安定感のあるメゾ・ソプラノです.出番が少ないものの,存在感があったのはエルダを歌ったメゾ・ソプラノのマイヤーです この楽劇の登場人物を一人一人を紹介したいのですが,風邪で体調が思わしくないので,この辺で止めておきます

圧巻だったのはフィナーレの管弦楽です.飯守泰次郎指揮東京フィルは,神々がワルハル城に入場する時の音楽を,渾身の演奏で聴衆の期待に応えました こういう演奏を聴くと,ワグネリアンの気持ちも判らないではないな,と思ったりします

この公演は2時間45分休憩なしなので,遅刻したら会場に入れません しかし,歌のない管弦楽だけのシーンでは,後方の席に座る音が聞こえたので,数名の遅刻者を受け入れたのでしょう 私は,数年前の「指環」の公演で1時間近く会場外のモニター画面を観て幕間まで過ごした苦い経験があります.合言葉は「ワーグナーを聴く時は絶対遅刻はするな」です.

とにかく165分というもの,トイレにも行けず,風邪の咳を押さえ,風邪薬で眠いのを我慢し,お尻が痛くなるのに耐え,ほとんど拷問に近い状態で過ごしました しかし,演奏も歌手陣も舞台も素晴らしかったので救われた思いがします

 

          

コメント
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