人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

寺岡清高+新交響楽団でフランツ・シュミット「交響曲第1番」他を聴く

2015年10月13日 07時02分26秒 | 日記

13日(火)。わが家に来てから381日目を迎え,大きな赤い手の上でくつろぐモコタロです

 

          

           久しぶりに赤い手と遭遇したよ 赤ちゃんの手じゃないよね

 

  閑話休題   

 

昨日、池袋の東京芸術劇場で新交響楽団の第231回演奏会を聴きました プログラムは①ニコライ「歌劇”ウィンザーの陽気な女房たち”序曲」、②ベートーヴェン「交響曲第1番ハ長調」、③フランツ・シュミット「交響曲第4番ハ長調」で、指揮は寺岡清高です

新交響楽団は1956年創立のアマチュア・オーケストラの草分け的存在です 故・芥川也寸志が,創立以来音楽監督を務め,旧ソ連への演奏旅行,ストラヴィンスキーの3大バレエ曲一挙上演など,画期的な演奏活動を展開してきました プログラムに記載されたメンバー表を見ると,会社員,教員,学生など様々な職業の音楽好きが集まって練習を重ねています 東京を拠点に年4回の演奏会を自主運営で行っているとのことです

一方,指揮者の寺岡清高は福岡生まれの東京育ちで,早稲田大学を卒業後,桐朋学園大学を経て,1992年にウィーン国立音楽大学指揮科に入学した変わり種です 2000年にミトロプーロス国際指揮者コンクールで優勝しています 現在は大阪交響楽団の常任指揮者を務めています この日のプログラムはウィーン在住の寺岡のこだわりで,ウィーンに因んだ作曲家の作品が演奏されます

 

          

 

自席は2階M列22番,センターブロック左通路側席です.会場は8割方埋まっている感じでしょうか アマチュア・オケでこれだけの動員をかけられるのは新交響楽団ならではでしょう

オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスというオーソドックスな態勢をとります.コンサート・ミストレスは青山学院高等部教諭の堀内真美さんです 私がコンサートのたびに密かに応援しているのは首席チェロ奏者の隣に座っている唯一ノースリーブのステージ衣装を身にまとった女性奏者です.残念ながら名前が分かりません メンバー表によると,女性チェロ奏者は首席の柳部容子さんの他に4人いらっしゃいますが,このうちのどなたかなのでしょう.いつも応援しています

さて,丁寧なチューニングが行われ,指揮者の寺岡清高がタクトを持って登場します

1曲目のオットー・ニコライの歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲は,シェークスピアの同名の戯曲を題材にしたオペラの序曲です

寺岡のタクトで,静かな導入部が始まり,徐々にテンポアップしてウィーンのオペレッタを思わせる賑やかで楽しい音楽を展開します まずは小手調べといったところですが,オケは絶好調です 管楽器も弦楽器も寺岡のタクトのもと,ウィーン情緒豊かに楽しい序曲を演奏していました

 

          

 

2曲目はベートーヴェンの交響曲第1番ハ長調です.管楽器が入れ替わり,規模が縮小します.この曲は「ピアノ協奏曲第1番」と「七重奏曲」とともに初演されましたが,「七重奏曲」は聴衆に歓迎ムードで受け入れられたものの,「交響曲第1番」の方は,当時の聴衆にとっては冒頭の和音が斬新でちょっと違和感があったようです

寺岡の合図で第1楽章「アダージョ・モルトーアレグロ・コン・ブリオ」に入ります.厚みのある弦楽器,歌うような管楽器を聴いていると,初期のベートーヴェンはいいなあ,と思います 第2楽章は「アンダンテ・カンタービレ・コン・モト」ですが,曲想はほとんどモーツアルトのようです.第3楽章は「メヌエット」ですが,これはハッキリ言って「スケルツォ」でしょう 躍動感溢れる音楽です.第4楽章は第1楽章と同様,アダージョの序奏があって,次に主部がくる,というスタイルをとっています 本当に楽しい楽章で,若き日のベートーヴェンの息吹を感じさせます.この曲でも管楽器,弦楽器,そして打楽器も絶好調だったと言えます

 

          

 

さて,休憩後は指揮者・寺岡清高のこだわりの曲,フランツ・シュミットの「交響曲第4番ハ長調」です フランツ・シュミットは当時オーストリアだったプレスブルクで,シェーンベルクと同じ1874年に生まれました 幼少の頃から音楽の才能があったようで,音楽アカデミーを卒業後は宮廷歌劇場管弦楽団のチェロ奏者として採用されました.その頃,グスタフ・マーラーが宮廷歌劇場の指揮者だったので,彼の指揮の下,首席チェリストとして活躍したとのことです

シェーンベルクが十二音音楽で19世紀末音楽をリードしていったさなか,シュミットはその流れには乗りませんでした 伝統を破壊するのではなく,伝統の上に新たな音楽様式を打ち建てようとしたようです

この交響曲第4番は単一楽章で書かれているのが大きな特徴です 1932年から33年にかけて作曲されましたが,ちょうどその頃は,最初の妻カロリーネが精神に変調をきたし精神病院に収容され,32年には娘のエンマが,出産の直後に死去するなど,悲惨な出来事が続いた時期です したがって,この曲にはそれらの暗い影が落とされています

冒頭はトランペットにより悲しげなメロディーが静かに奏でられますが,このメロディーはシュミットが黄泉の世界にいる娘エンマに発した呼びかけという位置づけにあります 本人によれば「人を永劫へと導く最後の音楽」です.このメロディーが全曲を通して,色々な楽器で再現されることになります.全体的には深い悲しみを湛えた憂いのある曲ですが,時に大きく感情を爆発させるようなところもあったりします しかし,それは一時的なもので,すぐに悲しみの世界に呼び戻されます

寺岡清高は前の2曲ではタクトを持って指揮をしていましたが,このシュミットでは両手のみで指揮をしました まるで両手でシュミットの音楽を手繰り寄せ,それを聴衆に届けるような姿勢を感じました

アダージョの部分では,独奏チェロが憂いに満ちた旋律を奏でますが,首席チェロの柳部容子さん(JTB)の演奏は素晴らしいものがありました

この日のコンサートは,3曲とも素晴らしい演奏で,これが本当にアマチュア・オケだろうか?と思うほど完成度が高く見事なアンサンブルでした 終演後の会場一杯の拍手とブラボーが何よりそのことを物語っていました

さて,次回の第232回演奏会は来年1月24日(日)午後2時から東京芸術劇場で開かれます 残念ながら私は例によってその日,ピンポイントでオペラを観る予定があり聴きに行けません プログラムは新交響楽団の創設者・芥川也寸志の「交響曲第1番」とエルガーの「交響曲第2番」です.入場料はS席:3,000円,A席:2,500円,B席:1,500円です.超お薦め公演です

 

          

 

誕生日の今日は,サントリーホールに下野竜也+読売日響による定期演奏会を聴きに行きます

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする