19日(月).わが家に来てから387日目を迎え,ご主人の膝の上でオヤツを食べようとするモコタロです
ご主人,今日もパソコン動いて良かったね~
閑話休題
昨日の日経に「モーツアルト手紙2600万円」という見出しの小さな記事が載りました 超訳すると
「モーツアルトが親友の植物学者に宛てた手紙がアメリカでオークションにかけられ,21万7000万ドル(約2600万円)で落札された 手紙は便せん1枚で,『この手紙を運んだ人を通じ,私に3つの楽曲を送り返してほしい』とドイツ語でしたためられている 『ピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478』などを名指ししており,曲の完成時期から推定し,1786年7~8月ごろに書かれたとみられる」
当時から230年も経った今頃こうしたことが話題になるのは,モーツアルトが多くの手紙を残していたからこそです 記事にあるのは「ドイツ語」の手紙となっていますが,彼の人生は旅に明け暮れていたので,旅先から家族に向けてドイツ語で,イタリア語で,フランス語で多くの手紙を書いていたのです 1786年と言えばモーツアルトが30歳の時です.前年には「ハイドン四重奏曲」を完成させ,この年には歌劇「フィガロの結婚」が各地で演奏されるなど,モーツアルトがノリに乗っていた時期です モーツアルトが今の時代に生きていたら,パソコン,スマホを駆使してメールを出しまくっていたかも知れません それにしても,1枚の紙切れがモーツアルトの手紙というだけで2600万円ですから,有名人になってみるものです.ムリだけど
も一度,閑話休題
パソコンが動くうちにコンサート会場で配られるチラシの中からチケット代が比較的安価なコンサートをご紹介します 最初は10月25日(日)午後2時からに第一生命ホールで開かれる「東京アカデミーオーケストラ第48回定期演奏会」です プログラムは①バッハ「シャコンヌ」,②モーツアルト「交響曲第36番”リンツ”」,③同「交響曲第41番”ジュピター”」です
残念ながら私はこのオケを聴いたことがないので,実態が良く分からないのですが,過去に47回も定期公演をやっていることをみると,それなりの演奏技術があるのではないかと思います チケット代は全席自由1,500円です
2枚目は10月31日(土)午後2時から日比谷公会堂で開かれる「近衛学友会オーケストラ第6回定期演奏会」です マーラーの「交響曲第1番」が演奏されます.このオケも聴いたことがありませんが,マーラーを生で聴くいいチャンスだと思います チケット代は全席自由で1,000円です
3枚目は,11月1日(日)午後3時からサントリーホールで開かれる「コバケンとその仲間たちオーケストラ 10周年記念コンサート」です プログラムは①ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」,②ヴェルディ「アイーダ」より「凱旋行進曲」,③サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」,④チャイコフスキー「序曲1812年」ほか 出演者は全員ボランティアで,チケット代は全席指定で3,000円です.これお薦めです
最後の,閑話休題
17日(土)午後3時から文京シビック”響きの森クラシック・シリーズ”公演を,午後6時から東京交響楽団の定期演奏会を聴きました 昨日”響きの森”について書いたので,今日はサントリーホールで開かれた東響の第634回定期演奏会について書きます
プログラムは①ブラームス「悲劇的序曲」,②モーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第5番K.219”トルコ風”」,③ストラヴィンスキー「バレエ組曲”火の鳥”」で,②のヴァイオリン独奏はステファン・ジャッキーヴ,指揮は首席客演指揮者のクシシュトフ・ウルバンスキです
土曜日, 文京シビックホールでのコンサートが終わったのが午後5時5分.地下鉄南北線で後楽園から六本木1丁目に移動,サントリーホールに着いたのは5時30分でした コーヒーを飲みながらプログラムを読む時間が十分取れました.セーフ自眠党です
オケはいつもの通り,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスというオーソドックスな編成です コンマスはグレヴ・ニキティン.1曲目のブラームス「悲劇的序曲」はオペラの序曲ではありません.同時に作曲された「大学祝典序曲」と同様,純粋な管弦楽作品です
長身でスマートなウルバンスキが登場,指揮台に上がり,劇的な序曲の演奏に入ります 彼の華麗な指揮ぶりを見ていると,ホンの1時間ほど前まで聴いていた小林研一郎の指揮を思い出し,いつしか比較してしまいました コバケンは演奏家とともに汗をかいて熱い演奏を展開するタイプなのに対し,ウルバンスキはあくまでも冷静で,演奏家を燃えさせるタイプの指揮者です
そして,コバケンがコンチェルトでは楽譜を見て演奏するのに対し,ウルバンスキはすべての演目を暗譜で指揮します 一番最初にウルバンスキが東京交響楽団に呼ばれてリハーサルをやった時に,最初から最後まで暗譜で指揮をして楽員の度肝を抜き,その演奏会をきっかけに首席客員指揮者として迎えられたというエピソードがあるくらいです 相当の記憶力の持ち主であると同時に深い芸術性を兼ね備えているのでしょう
オケが縮小してモーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第5番」の演奏に備えます モーツアルトは1773年(第1番)と1775年(第2~第5番)に集中して故郷ザルツブルクでヴァイオリン協奏曲を書いています そのため,1775年に作曲した第2番~第5番は「ザルツブルク協奏曲」と呼ばれて親しまれています 私はモーツアルト好きなのに,プログラムの解説を読むまで,ザルツブルクのコロレド伯爵がヴァイオリン愛好家で,オーケストラでも演奏したことがあったということを知りませんでした イタリア人贔屓なコロレド伯爵の関心を引き自分自身の実力を見せつけるためにモーツアルトは集中的にヴァイオリン協奏曲を書いたのかも知れません
1985年アメリカ・ボストン生まれのステファン・ジャッキーヴがウルバンスキとともに登場します 二人ともイケメンなので”役者がそろった”といったところです.ウルバンスキのタクトで第1楽章が軽快に始まります.聴いていて感じるのは,ジャッキーヴの特徴は弱音の美しさではないか,ということです 第1楽章のカデンツァは実に見事でした.彼がカデンツァを演奏している間,ウルバンスキは指揮台から降りて,ヴィオラ側のスペースで耳を傾けていました.終わる直前に指揮台に上がり,再びタクトをとりました 弱音の美しさは第2楽章で極まり,第3楽章では一転,テンポ感よく”トルコ風”メロディーを奏でていました
鳴り止まない拍手に,ジャッキーヴはバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」から「ラルゴ」をしみじみと演奏,大きな拍手を受けました
休憩後は古典的な曲から離れ,ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」です バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を率いるセルゲイ・ディアギレフがストラヴィンスキーに委嘱した3大バレエ組曲「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」の一つですが,「火の鳥」こそストラヴィンスキーの名前を世界に知らしめた曲だったのです
ウルバンスキの指揮ぶりを見ていると,時に指揮台の上でバレエを踊っているような仕草があり,この曲がバレエのために書かれたものであることを思い起こしました ストラヴィンスキーだろうが何だろうが,ウルバンスキは暗譜で指揮をしますが,その指示は的確です 楽譜はすべて頭に入っているという感じで,まったく迷いなく確信を持って指揮に当たります
それまで静かに推移していた音楽が,8曲目の「凶悪な踊り」に入り会場を揺るがす音が響くと,隣席の中年男性が身体をピクッと震わせました.あなた,寝てましたね! ストラヴィンスキーの音楽に油断は禁物です
リズム感に溢れ色彩感豊かな「火の鳥」はウルバンスキにピッタリだと思いました