19日(金)。わが家に来てから今日で2088日目を迎え、昨年9月に更迭されたボルトン前大統領補佐官がトランプ政権の内幕を暴露した回顧録の一部が17日 明らかになったが、その中で、トランプ大統領が昨年6月、中国の習近平国家主席との会談で、自身の大統領選再選に協力するように懇願したことが分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです
「ウクライナ疑惑」に次ぐ大統領選への介入疑惑だ 習近平も回顧録を出したら?
昨日、夕食に「牛タン塩焼き+ハラミ焼肉」と「生野菜サラダ」「卵スープ」を作りました たまには焼肉もね
西原稔・安生健共著「数字と科学から読む音楽」(ヤマハ)を読み終わりました 本書は「1冊でわかるポケット教養シリーズ」の1冊として刊行されました
西原稔氏は山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。桐朋学園大学音楽学部教授。18,19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。安生健氏は東京藝術大学音楽学部楽理科で、西洋音楽史学・楽曲構造解析理論を専攻
本書はタイトルの通り、数字と科学との関りから音楽を捉えた本です この本は次のような構成になっています
アインシュタインとヴァイオリン
第1部「音と数の秘密」
第1章「音楽と聖教」
第2章「順列・組み合わせと音楽」
第3章「黄金分割と音楽」
第2部「天体と音楽」
第1章「天体のハルモニア」
第2章「天体の音楽」
第3章「天王星の発見者」
第3部「平均律と純正律」
第1章「ピュタゴラス音律と純正律とはー神の2つの摂理」
第2章「バッハと平均律」
第3章「標準ピッチと絶対音感」
第4章「科学か音楽か」
この本を読んで一番興味深かったのは冒頭の「アインシュタインとヴァイオリン」です アインシュタインにはモーツアルト研究家のアインシュタインもいますが、ここで取り上げられているのは、相対性理論で有名なアルベルト・アインシュタイン(1879-1955)です
本書では、「数学を使う研究者のなかには音楽好きが少なくなく、アインシュタインも音楽と非常に密接に関わっていた
彼はヴァイオリンを愛奏し、とくにモーツアルトやバッハやシューベルトを好み、『音楽の演奏がない人生など想像に絶する』とまで言い切った」と書かれています
そして、次のようなエピソードを紹介しています
「アインシュタインがヴァイオリンを弾き、作曲も巧にこなした物理学者マックス・プランクがピアノを担当し、助っ人にプロのチェロ奏者を招き、ベルリンのプランク家でベートーヴェンのピアノ三重奏曲変ロ長調を演奏したことがある 時期は不明だが、ユダヤ系の女性物理学者リーゼ・マイトナーも客として呼ばれていた。彼女はこの演奏会について、『驚くほど楽しく聴かせていただいた
数カ所でアインシュタインが間違えたが、見るからに音楽する喜びに浸り切り、自分のひどい演奏技術にも無邪気に微笑んでいた
プランクは満足し切った表情でそっと立ち上がり、胸に手を当てて”あの第2楽章はすばらしかった”と言った』と伝えている
」
第1部第3章「黄金分割と音楽」も興味深いものがありました 黄金分割とは、美術の分野における「1:1.1618」の比率のことです
1,2,3,5,8,13,21,34・・・という具合に、前の数値との和を数列として、前の数字との比から求められます。数字が次第に大きくなっていくと、2つの数字の比は次第に特定の比(1:1.1618という比)へと収束していく
この数比を黄金比と読んでいます。有名なところでは、ミロのヴィーナス像の八頭身が例に挙げられます。頭からヘソまでとヘソから足までの比率は黄金分割になっており、さらに顔の縦と横の比率も黄金分割になっているとのことです
この比率が一番美しく見えるといいます
この比率は絵画や建築などにおいて取り入れられている考え方ですが、これを音楽に適用できないかという考え方があります
例えば100小節の作品があるとすると、大体62小節でひとつの区分を設ける。そうすると62:100=1:1.613という比を、時間の割合として表すことができるというものです
黄金分割を作曲に応用したらしいと考えられているのがバルトークだといいます ハンガリーの音楽学者レンドヴァイがバルト―クの「アレグロ・バルバロ」について研究し、この作品が8小節、5小節、3小節、13小節という不規則な形で作られていることを指摘し、3:5:8:13という数字がフィボナッチ数列(※)と符合すると述べています
(※)フィボナッチ数列:3+5=8、5+8=13・・・という数列。これも黄金比と同様、1:1.1618という比に収束していく。
レンドヴァイの理論は現在退けられているとのことですが、筆者は「バルトークが実際にこの理論に精通していて、その理論を作曲に応用したというよりも、彼が緻密に考え抜いて作曲した結果、それがおのずから黄金分割の比になっていた、というほうがもっとスリリングだ」と語っています
第3部第2章「バッハと平均律」を読んで初めて知ったことがあります バッハは「平均律クラヴィーア曲集」というチェンバロのための2巻の曲集を作曲しました
前奏曲とフーガが一対になって作曲されている曲集で、すべての長・短調を用いて作曲した作品です
ところが、解説によると、この作品の原題のどこにも「平均律」とは書かれていないというのです
原題は「ほどよく調整された調律法によるクラヴィーア曲集」という意味を持っているとのことです
ちっとも知りませんでした
さらに興味深いのは第3部第3章「標準ピッチと絶対音感」です 筆者は次のように書きます
「近代社会の合理化により統一されたのは、標準音楽だけではなく、音楽の速度も同様である 私たちは、暗黙のうちにメトロノーム記号の「♩=60」(1分間に60回打つ速さ)を基準に考えているが、ルネサンス以来、バロックや古典派の時代はそうではなかった
15世紀位から18世紀末まで、音楽の速度表記は人間の脈拍が目安になっていたとみられる
19世紀の産業化社会に入り、人々の生活において時計が不可欠の道具になるに従って、基準となるテンポは、脈拍の速度(1分間に約70~80程度)から時計の速度(1分間に60)に変化していったと思われる
また、場合によってその他の外的な事項によって左右される場合も出てくる
それはレコードやCDに作品の録音を収めなければならないといった状況が、作品の演奏テンポに影響を与えるということだ
」
これについては、CDの収録時間が最大74分42秒になったことにカラヤンの見解が生かされていることは有名な話です CDの直径・記録時間について決定する際、フィリップスは11.5センチ・60分を、ソニーは12センチ・75分(74分42秒)を主張していた。ソニーの大賀氏が、親交のあったヘルベルト・フォン・カラヤンに相談したところ、「ベートーヴェンの第九が1枚に収まった方がいい」という助言を得た。カラヤンの第九の演奏は平均66分であるため75分に収まるが、フィリップスの主張する60分では収まり切れない
また調査によると、①フルトヴェングラーの有名な「バイロイトの第九」が第九の中で最も演奏時間が長い約74分であること、②95%のクラシック音楽が75分以内に収まることが、12センチ・75分が最適である裏づけとなった
大賀氏は「巨匠カラヤンもそう望んでいる」とフィリップスを説得したというエピソードが残っています
以上、読んでみて自分で理解できる範囲の中から、ほんの一例をご紹介しましたが、タイトル通り「数字」と「科学」が絡んでいるので、350ページを読み切るのはそれほど簡単ではありませんでした ただ、感性だけで音楽を聴くよりも、科学的な知識を蓄えた上で聴く方が、音楽や演奏に対する理解が深まるのではないかと思います