人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

小林研一郎 ✕ 松田華音 ✕ 東京フィルでラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ドヴォルザーク「交響曲第9番」を聴く ~ 響きの森クラシック・シリーズ:カーテンコール時に拉致事件も

2024年01月21日 00時01分45秒 | 日記

21日(日)。わが家に来てから今日で3294日目を迎え、11月の米大統領選で共和党候補者指名獲得を目指すヘイリー元国連大使は19日、トランプ前大統領が党候補に決まった場合、副大統領候補になる考えはないと明言した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ヘイリーさんは トランプが大統領の時 どんな悪事を働いたか知ってるから 当然だ

 

         

 

昨日、文京シビックホールで「響きの森クラシック・シリーズ」第78回演奏会を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」、ドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 ”新世界より”」です 演奏は①のピアノ独奏=松田華音、指揮=コバケンこと小林研一郎です

 

     

 

看板通り会場は満席です コバケン ✕ カノンですから当然です

オケは12型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの東京フィルの並び。コンマスは近藤薫です ヴィオラのトップには須田祥子、ホルンのトップには高橋臣宣という日本のオケを代表するアーティストがスタンバイしています 考えてみれば、東京フィルは新国立オペラのオーケストラ・ピットに入るのは、東京交響楽団が入る1~3月を除くオペラ公演なので、この間は人的に比較的余裕があるのかもしれません

1曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1900年から01年にかけて作曲、1901年モスクワで初演され大成功を収めました よく知られているように、ラフマニノフは1890年代末期に「交響曲第1番」の初演が大失敗に終わるなど、作曲が出来ないほどのスランプに陥っていました 彼は1900年に精神科医ニコライ・ダーリ博士の暗示療法を受け、立ち直ったと言われています そのためこの曲はダーリ博士に献呈されています 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の松田華音は香川県高松市生まれ 2002年、6歳でモスクワに渡り、名門音楽学校のモスクワ市立グネーシン記念中等・高等音楽専門学校で学び、2013年2月に同校で外国人初の最優秀生徒賞を受賞 2014年に同校を首席で卒業し、同年9月モスクワ音楽院に日本人初のロシア政府特別奨学生として入学、2019年首席で卒業。2021年6月モスクワ音楽院大学院修了 これまで国内外のオーケストラと共演を重ねています

松田華音が鮮やかなローズレッドの勝負衣装で登場、ピアノに向かいます

松田のソロにより教会の鐘を模した和音が力強く奏でられ、コバケン ✕ 東京フィルの重厚感溢れる演奏が続きます テンポは一貫してゆったりしており、ロマンティシズムの極致を行く雄大な音楽が繰り広げられます 松田のピアノはどこまでもクリアです 第2楽章では、いっそう緩やかなテンポによる演奏が続き、甘美なメロディーが奏でられます フルート、クラリネットがソリストを盛り立てます 第3楽章に入ると一転、テンポが上がり、リズミカルで軽快な演奏が展開します ピアノ・ソロとオケが混然一体となって展開したフィナーレは圧巻でした

松田華音といえば、2015年4月7日に東京オペラシティコンサートホールで「CD発売記念ピアノ・リサイタル」を聴きました 当日のプログラムはほぼCDと同じ内容でしたが、この日に聴いたシューマン/リスト「献呈」にすっかり魅了され、CDで何度も繰り返し聴きました 当日の感想は翌日 8日付のブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください    下の写真は終演後のサイン会でサインをもらったCDです

 

     

     

 

コンサートの話に戻ります 満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されます アンコール(ラフマニノフ?)が演奏され、その後のカーテンコールの時、突然 センター右側の通路をステージに向かって走っていく男性の姿が見えました    いったい何があったのか?と思った次の瞬間、今度は右端の通路と左端の通路をアテンダントの女性が凄いスピードでステージに向かって走っていくのが目に入りました    すると、男性が指揮台の手前まで来たところで、右側の通路から走ってきた女性に腕を掴まれ、何やら説得され腕を取られて引き上げていきました どうやら、男性(30代位か?)は松田華音に何かプレゼントを渡そうとしたか(その割には花も手提げ袋も持っていなかったようだが)、握手を求めにいったか、どちらかだと思われます 私が驚いたのは、男性は足が速かったけれど、彼に勝るとも劣らないスピードで男性の所まで走り、彼を拉致した女性アテンダントの足の速さと素早い行動力です ハイヒールなんか履いていたらこんな俊敏な行動は取れません 彼女たちはわれわれが知らないところで、演奏者に危害を与える恐れがある人物を排除するため、あるいは、まだコロナ禍が終息していない中、許可なく演奏者に近づこうとする観客を排除するため、普段から訓練を受けているのかもしれない、と思った”逮捕劇”でした

拉致された男性は「道路交通法」の「コンサート会場においては 速いスピードで走ってはならない」という規定により「スピード違反」で東京地検に送検されました・・・嘘です

ちなみに、松田華音と握手をするためには、彼女のCDを10枚購入し「握手券」を手に入れて、長い行列に並ばなければなりません・・・これも嘘です

 

 

     

 

プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 ”新世界より”」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が米ニューヨークの私立ナショナル音楽院の院長として活躍していた1893年に作曲、同年ニューヨークで初演されました 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ・モルト」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

学生時代から続くクラシック音楽人生の中で、私はいったい何回この曲を聴いてきただろうか?? 「世界中のコンサートホールで最も多く演奏される作品は『新世界より』である」とどこかで読んだ記憶があるが、それだけに他の作品よりも多く聴いてきたのかもしれない・・・・と、しばし感慨に耽りました

コバケンの指揮で第1楽章に入ります 何より高橋臣宣のホルンが素晴らしい そして全体的な音楽の流れが自然です かつてコバケンの指揮する演奏を聴いた時、「あざとさ」を感じることがしばしばありましたが、最近はそれが全く感じられなくなりました 第2楽章はイングリッシュ・ホルン(コーラングレ)の独壇場です オーボエ、クラリネット、フルートが素晴らしい演奏を展開しますが、どんなに頑張っても、いいところはすべてイングリッシュ・ホルンの「家路」がかっさらっていきます この日の演奏も最高に素晴らしかったです 誰? またこの楽章の終盤における弦楽トップによる室内楽的な演奏が透明感に溢れ、しみじみと素晴らしい演奏でした 第3楽章では木管楽器群の演奏が冴え、固いマレットで打ち込まれるティンパニが小気味よく響きました 第4楽章冒頭は、”鉄道オタク”のドヴォルザークらしい音楽で、まさに蒸気機関車が発進する時の音楽そのものです 金管楽器が咆哮し、木管楽器が歌い、打楽器が炸裂し、弦楽器が渾身の演奏を展開します 終結部は管楽器の伸ばした音が弱まりながら消えていき余韻を残します

大きな拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されます いつものように、コバケンがマイクを持って挨拶します 「あけましておめでとうございます」から始まり、「アンコールを演奏しようと思ったのですが、やりません いえ、やるんですが、『新世界より』の後に 別の曲を演奏すると、ドヴォルザークをお忘れになってしまうのではないかと心配です そこで、第4楽章の終結部をもう一度演奏します」とアナウンスして、アンコールの演奏に入りました

コバケンの「(アンコールとして)別の曲を演奏すると、ドヴォルザークをお忘れになってしまうのではないかと心配です」という発言は、すごく重要な意味を含んでいます ピアニストのアファナシエフは「絶対アンコールはやらない」と宣言していますが、その理由は、「プログラムに掲げた作品を聴いてほしいというのが本来の目的であるから」であり、「アンコールを演奏すると、プログラムに掲げた演奏が忘れられるから」です 時々、「アンコールが一番良かった」という感想を耳にすることがありますが、それはコンサートが大失敗に終わったことを意味しています 「それでは、いったい本番で何を聴いたの?」という話です あるいはコバケンも、「アンコールのダニーボーイが良かった」とかいう無邪気な声を、あちこちで聞く機会が少なくなかったのかもしれません 「お客様は神様です」的なサービス精神はコバケンのトレードマークのようなものですが、あまりやり過ぎると逆効果になる、と気づかれたということでしょうか

 

     

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北朝鮮から決死の脱出を図る5人家族に密着したドキュメンタリー「ビヨンド・ユートピア 脱北」を観る ~ 中国、ベトナム、ラオス、タイ経由で韓国へ移動する1万2000キロの旅

2024年01月20日 00時31分36秒 | 日記

20日(土)。わが家に来てから今日で3293日目を迎え、自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受け、党内最大勢力の安倍派(清和政策研究会)は19日、派閥を解散することを決めた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     何年後かには再び派閥が復活するね  過去の歴史が証明してる  自民党解散しかない

     

         

 

昨日、夕食に隔週金曜のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回も外カリカリ内ジューシーに美味しく揚がりました

 

     

 

         

 

昨日、シネリーブル池袋でマドレーヌ・ギャビン監督による2023年製作アメリカ映画「ビヨンド・ユートピア 脱北」(115分)を観ました

これまで1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師は、幼児2人と80代の老婆を含む5人のロ一家の脱北を手助けすることになる キム牧師による指揮のもと、各地に身を潜める50人以上のブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す 移動距離1万2000キロメートルにもおよぶ決死の脱出劇をカメラが追い、家族へのインタビューによって北朝鮮の金正恩政権の欺瞞性を暴く

 

     

 

撮影は制作陣のほか、撮影隊が同行できない行程は地下ネットワークの人々のケータイで撮った動画などでつないでいます 氏名等の詳細は関係者の身の安全のため伏せられています なぜタイを経由して1万2000キロもの距離を移動しなければ韓国に入国できないのかと言えば、①南北間の国境の北側には無数の地雷が埋められていること、②中国、ベトナム、ラオスは本国送還される恐れがあるからです

脱北後、比較的安全な場所まで逃避してきた”隠れ家”で、「北朝鮮の現状や金正恩をどう思うか」について家族へのインタビューが行われますが、それぞれの年齢によって答えが微妙に異なるのが興味深いところです 80代の老婆は「金正恩将軍様は国を正しい方向に導いてくださる。『今は苦しい時だが我慢してほしい』とおっしゃっているが、私たちの努力が足りないのだろうか」と答えます。その後、娘に「本当のことを正直に話してもいいのよ」と説得されると、「私たちは学校で、金正恩将軍様が一番正しく、アメリカは悪だと教えられてきました」と事情を語りますが、密告を怖れてか 言葉を慎重に選んでいる様子が窺えます 娘夫婦は揃って「私たちは金正恩のために虫けらのように働かされてきました 自由のないこんな国では とても生きていけません」と怒りをあらわにします 一方、幼い娘は「金正恩将軍様は世界で一番偉大な人です」と学校で習った通りのことを無邪気に語ります これらの発言によってはっきりするのは、北朝鮮では、幼児から老人まで「金正恩が世界で一番優れた指導者であり、今は生活が苦しいが、我慢して働けばいずれ豊かな生活を送ることが出来る」と”洗脳”されている、ということです しかし、金正恩の目的は『金王朝の安定と存続』であり、国民の生活などは二の次、三の次であることは明らかです

映画は、ロ一家とほぼ同時にキム牧師に助けを求めてきた一人の女性にも密着取材しています ソヨンは息子と母親を北朝鮮に残して脱北し、息子だけでも脱北させようとキム牧師に頼み込みます。そしてブローカーを通じて息子の北朝鮮での様子をケータイで教えてもらいます それによると、17歳の息子が母に会いたくて中国へ越境したが、中国の仲介ブローカーに裏切られ、本国に送還されたという。北朝鮮のブローカーによると、彼は拷問を受け、強制収容所に送られることになったといいます 彼女はインタビューで「母と子が会うことさえ出来ない。何も悪いことはしていないのに。悪いのは国なのに。なぜ息子がひどい目に遭わなくてはならないのでしょうか」と訴えますが、息子は戻ってきません

テロップに「北朝鮮には政治犯の強制収容所が2カ所ある」と出ますが、ナレーションは「北朝鮮そのものが強制収容所のようなものです」と語ります

また、この映画では、2つの家族の物語の合間に、脱北して韓国で生活する若い女性が北朝鮮での生活実態を赤裸々に語っていますが、予想通りというか悲惨な実情が語られています

まず、「各家庭では金日成、金正日、金正恩らの写真を家の目立つところに掲示しなければならない 常に綺麗にしておかないと、抜き打ち検査が入り、白い手袋で写真を拭い埃が付いているかどうかチェックする」「学校では金正恩と北朝鮮が一番正しく、アメリカは悪だと教えられた」「毎日のようにマスゲームの練習をやらされた」「人糞は農業の重要な肥料として引き取られていき、少ないと罰が科せられるので、近所から買ったりした」ーと語っていました。自然に優しいリサイクルと言えば聞こえは良いですが、50年前の日本か と思いました こんな国に生まれたら、生まれた時点で人生が終わったようなものだと思います 自分と自分の家族だけが裕福に暮らし、一族が将来にわたって存続していくために、国民を洗脳してコマのように働かせ、ミサイル開発に大金を使う一方で、国民に貧しい生活で我慢することを強いる体制など受け入れられる訳がない

ところで、1月12日付 朝日新聞夕刊に、この映画を製作したマドレーヌ・ギャビン監督のインタビューが載っていました   彼女は次のように語っています

「どちらも先の予想が全くつかないまま撮影を始めた    一方は、次の瞬間に死が待っているかもしれない激動の旅。もう一方は、厚い壁の向こうから届く知らせを待つしかない静かな絶望。全く違うビジュアルで、こんなコントラストになるとは驚きでした   (ロ一家の脱北劇については)危険覚悟で同行しました 何十年も世界から無視されてきた北の人々の苦しみを伝えるには、そのくらいしなくては、との思いでした

映画を観終わって思うのは、「これまで、これほど北朝鮮家族の脱北の実態に迫ったドキュメンタリーはなかったのではないか 一人でも多くの人に観てほしい」ということです

都内では「シネリーブル池袋」のほか、「TOHOシネマズ シャンテ」でも上映されています

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ジョン・アダムズ ✕ エスメ弦楽四重奏団 ✕ 東京都交響楽団でアダムズ「アイ・スティル・ダンス」「アブソリュート・ジュスト」「ハルモニーレーレ」を聴く

2024年01月19日 00時50分29秒 | 日記

19日(金)。わが家に来てから今日で3292日目を迎え、時事通信が18日、大手メディアで唯一の個別面接方式で12~15日に実施した世論調査の結果を発表したが、自民党支持率が前月比3.7ポイント減の14.6%となり、1960年の調査開始以来で、野党だった期間を除くと最低になったと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     パー券を巡る裏金問題が影響しているようだが 自民党の体質だ 派閥解消しなきゃ

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」「生野菜とアボカドのサラダ」「白菜の味噌汁」を作りました 肉じゃがは前回作った時にちょっとしょっぱかったので、今回は醤油の割合を加減したら、ちょうどよく美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京都交響楽団「1月度Bシリーズ定期公演」を聴きました オール「ジョン・アダムズ」プログラムで、①アイ・スティル・ダンス、②アブソリュート・ジュスト、③ハルモニーレーレです 演奏は②の弦楽四重奏=エスメ弦楽四重奏団、指揮=ジョン・アダムズです

ジョン・アダムズ(1947~)はハーヴァード大学で作曲を学び、ボストン交響楽団などでクラリネット奏者を務めたのち、サンフランシスコに拠点を移して作曲活動を続けました オペラ「ニクソン・イン・チャイナ」はMETライブビューイングでも上映されました 指揮者としては、ベートーヴェン、モーツアルトからストラヴィンスキー、エリントンに至るまで広いレパートリーにより世界の主要オーケストラを指揮しています

 

     

 

オケは16型の大編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの都響の並び コンマスは元東響コンマスの水谷晃です 久しぶりに彼が定位置に座っているのを見ました。このまま都響に居ついちゃえばいいのに

1曲目はジョン・アダムズ「アイ・スティル・ダンス」の日本初演です この曲は2019年に作曲されました

アダムズの指揮で演奏に入りますが、本人が「プログラム・ノート」に書いているように、「特定のダンスというよりも、トッカータとの共通点が多い」曲想で、約8分のこの曲をひと言で表せば「疾風怒濤の音楽」です 通常、単一楽章の作品は急ー緩ー急という組み立てが多く見られますが、この曲は、いつ「緩」のテンポが現われるかと待ち受けていても高速テンポは止まりません それどころか、途中から より速くなっていきます    これには度肝を抜かれました  都響はアダムズの精力的な指揮によりエネルギッシュな演奏を繰り広げました

2曲目は「アブソリュート・ジュスト」です この曲は2011年に作曲されました   曲のタイトルは「徹底的な悪ふざけ」という意味で、アダムスに言わせれば「パロディ」です   編成は「弦楽四重奏+オーケストラ」という珍しいものです

オーケストラが幅広く扇型に拡がるなか、エスメ弦楽四重奏団の4人がその手前に立奏(チェロを除く)でスタンバイします    左から第1ヴァイオリン=ペ・ウォンヒ、第2ヴァイオリン=ハ・ユナ、ヴィオラ=ディミトリ・ムラト、チェロ=ホ・イエウンです   4人は揃って電子楽譜を使用します

アダムズの指揮で高速テンポの演奏に入りますが、しばらくすると、ベートーヴェンの「第九」の第2楽章「スケルツォ」のメロディーが表われたり、交響曲第8番のテーマが登場したり、極めつけはエスメ弦楽四重奏団によりベートーヴェン「弦楽四重奏曲第16番」の第2楽章「ヴィヴァーチェ」のスケルツォがパロディーとして現われたりして、楽しいことこの上ない音楽です 弦楽四重奏とオーケストラの共演というと、カルテットがオケに埋もれてしまうように思いがちですが、アダムズの作曲技法とエスメ・カルテットの技巧的でエキサイティングな演奏が相まって、見事に調和した音楽として迫ってきました その後もべート―ヴェンの「大フーガ」の断片などが現われては消え、最後はクライマックスを築くのではなく、脱力して静かに終わるのも”粋”で良かったです

大きな拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが5回(誤解?)繰り返され、エスメ弦楽四重奏団はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 作品130」から第2楽章「プレスト」を鮮やかに演奏、再び満場の拍手を浴びました

 

     

 

プログラム後半はジョン・アダムズ「ハルモニーレーレ」です この曲は1984年から85年にかけて作曲されました タイトルは「和声の書」「和声論」と訳せます ①第1楽章、②アンフォルタスの傷、③マイスター・エックハルトとクエッキーの3つの楽章から成ります

この作品の解説をジョン・アダムズ自身が書いていますが、現代音楽の原点とでも言うべきシェーンベルクについて、彼は次のように書いています

「シェーンベルクは私にとって、どこかねじれ歪んだ存在でもあった 私はシェーンベルクという人物を尊敬し、畏怖さえ感じていたけれど、12音音楽の響きを心底嫌っていたことを正直に認めよう (中略)。シェーンベルクとともに「現代音楽の苦悩」は誕生し、20世紀にクラシック音楽の聴衆は急速に減少したことは周知の通りである

この文章を読んで、私は彼に親近感を覚え、アダムズが大好きになりました

この曲は、記憶に間違いがなければすでに一度聴いています 指揮者が誰でオケがどこだったか全く覚えていませんが、聴いた覚えがあります しかし、今回は作曲者自身の指揮による演奏なので格別の感慨がありました 都響はこの曲でもアダムズの精力的な指揮に導かれ、管楽器も打楽器も弦楽器も集中力に満ちたアグレッシブな演奏を展開しました どの楽器の誰が良かったーというレヴェルではなく、オーケストラ総力でアダムズの音楽に対峙し、素晴らしい成果を残しました

昨年の3月度定期におけるコパチンスカヤによるリゲティにしても、今回のジョン・アダムズの一連の作品にしても、都響のチャレンジ精神は素晴らしいと思います 現代音楽の中にも、”ちゃんと聴ける”音楽があり、十分楽しむことが出来ることを証明しています こうした進取の精神は他のオーケストラも見習うべきだと思います

都響がこの公演に向けて打ち出したキャッチフレーズは「これは事件だ」でした 幸い本公演では”演奏事故”もなく、無事に”事件”を終えることが出来ました 「過去のクラシック音楽に限らず、同時代の作曲家の作品もより多く聴くべきだ」と言うとき、「ジョン・アダムズこそ最適な音楽だ」と思ったコンサートでした

 

     

     

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芸劇「名曲リサイタル・サロン」で辻本玲チェロ・リサイタルを聴く~フランク「チェロ・ソナタ」、ピアソラ「ル・グラン・タンゴ」他

2024年01月18日 00時01分02秒 | 日記

18日(木)。わが家に来てから今日で3291日目を迎え、イランで女性が着用を義務付けられている「ヒジャブ」のつけ方をめぐって逮捕され、その後急死したマフサ・アミ二さん(当時22)に贈られた「サハロフ賞」を代理で受け取った弁護士がイラン当局に逮捕され、副賞を没収された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

 

失礼しました 通信社の配信ミスで画像を間違えました 上の写真はウサギ型マドレーヌ「コウエンジノウサギ」でした お詫びのうえコメントとともに 正しい写真を下に掲載します

 

     

     アナクロニズムの極致を行く国は ロシア・北朝鮮だけじゃなかった それでも国家?

 

         

 

昨日、夕食に「タラのアクアパッツァ」「生野菜とアボカドのサラダ」「舞茸の味噌汁」(写ってない)を作り、鯨のベーコン(給食が懐かしい!)と一緒にいただきました ワインとビールを飲んだので米のご飯は食べませんでした

 

     

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで芸劇ブランチコンサート「第28回 名曲リサイタル・サロン 辻本玲」公演を聴きました プログラムは①J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」より「プレリュード」、②フランク「チェロ・ソナタ」、③ピアソラ「ル・グラン・タンゴ」です 演奏はチェロ=辻本玲、②③のピアノ=吉武優です

辻本玲はN響首席チェロ奏者。7歳よりチェロを始め11歳まで米国フィラデルフィアで過ごす 東京藝大を首席で卒業後、ロームミュージックファンデーションから奨学金を得て、フィンランドのシベリウス・アカデミー、スイスのベルン芸術大学に留学 第72回日本音楽コンクール第2位、2009年ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞

ピアノの吉武優は東京藝大大学院修了。ベルリン芸術大学で学び、国家演奏家資格過程を修了 第69回ジュネーヴ国際音楽コンクール・セミファイナリスト

 

     

 

この日も1階席を中心に多くの聴衆が集まりました

1曲目はJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV.1007」より「プレリュード」です この曲はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)が1720年頃に作曲した6つの無伴奏チェロ組曲のうち最初の曲です

辻本が登場し、電子楽譜を前に演奏に入ります 辻本のチェロは極めて明るい音色で、ふくよかなチェロの響きが会場に響き渡りました

曲間のトークで、ナビゲーターの八塩圭子さんからN響の現況について訊かれた辻本は、「N響は最近、弦楽セクションを中心に平均年齢が若返っており、チェロだけでも10人以上いるうちの半数位がここ3年位で入れ替わっています 『在京オケで平均年齢が一番若いのはN響だ』と誰かが言っていたのを聞いたことがあります」と答えていましたが、これは意外でした 一番若いかどうかは別として、確かにN響のプログラム冊子「PHILHARMONY」のメンバーリストを見ると、知らない名前の人が増えているように思います また、今回のピアニスト・吉武優とは今回が初共演とのことで、昨年、辻本が日本音楽コンクールの審査員を務めた時、吉武がコンテスタントの伴奏ピアニストを務めており「滅茶苦茶巧いと思って声をかけた」と語っていました

 

     

 

2曲目はフランク「チェロ・ソナタ」です この曲は元々、セザール・フランク(1822-1890)が同じベルギー出身のヴァイオリニスト、イザイの結婚祝いに1886年に作曲した「ヴァイオリン・ソナタ」です 最近ではチェロで演奏される機会が増えました この曲は第1楽章で出てきたテーマが他の楽章にも出現する”循環形式”が特徴です 第1楽章「アレグレット・ベン・モデラート」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「ベン・モデラート」、第4楽章「アレグレット・ポコ・モッソ」の4楽章から成ります

吉武のピアノにより夢想的な音楽が奏でられ、辻本のチェロが入ってきます ヴァイオリンで聴くのも良いけれど、チェロもなかなか味わいがあると思いました 特に第3楽章はゆったりしたテンポで朗々と奏でられ、チェロの方が合っているように思いました 白眉は第4楽章でした。吉武の確かな技巧に裏付けられたピアノに乗せて、辻本のチェロがダイナミックに演奏されます 初共演とは思えない息がピッタリの演奏でした

 

     

 

最後の曲はピアソラ「ル・グラン・タンゴ」です この曲はアストル・ピアソラ(1921-1992)がロストロポーヴィチの委嘱により1982年に作曲しましたが、彼はなぜか演奏せず、1990年にようやくニューオリンズで初演されました

私はこの曲を始めて聴きましたが、もっと賑やかな曲だと思っていました 比較的落ち着いた曲想で、歌心溢れるところあり、しずかに佇むようなところあり、ダイナミックなタンゴのリズムありの、クラシカルな作品でした 華やかなフィナーレはピアソラらしいと思いました

今回の公演は、辻本の実力を再認識するとともに、吉武の実力を”発見”したコンサートでした

カーテンコール中に席を立ちロビーに出たら、アンコール曲のラフマニノフ「ヴォカリーズ」が流れてきました 終演後に辻本氏のサイン会があるとのことで、そのためのサービスかな、と思いました

帰りがけにホール入口近くの臨時チケット売場で、5月以降の「名曲リサイタル・サロン」のチケットが販売されていたので、5月、7月、9月の3回セット券を取りました 9月には超多忙の組長が出演します 会場を出るのが早かった分、通路側のかなり良い席が取れました

 

     

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セバスティアン・ヴァイグレ ✕ ダニエル・ロザコヴィッチ ✕ 読売日響でベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」、R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語り」他を聴く

2024年01月17日 00時12分01秒 | 日記

17日(水)。わが家に来てから今日で3290日目を迎え、米大統領選の共和党指名候補争いは15日夜、初戦となるアイオワ州の党員集会が行われ、ドナルド・トランプ前大統領(77)が勝利を確実にした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     共和党員には良心の持ち主はいないのか! 犯罪容疑者を再び大統領にするつもりか

 

         

 

昨日、夕食に「鶏肉の山賊焼き」と「モヤシの味噌汁」を作りました 山賊焼きはちょっと焦げてしまい、いかにも山賊のようになってしまいましたが、とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで読売日響「第634回定期演奏会」を聴きました プログラムは①ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲、②ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61」、③R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語り 作品30」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=ダニエル・ロザコヴィッチ、指揮=セバスティアン・ヴァイグレです

 

     

 

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び コンマスは林悠介、隣は元神奈川フィル・コンマスの﨑谷直人が客演しています

1曲目はワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲です このオペラはリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1838年から40年にかけて作曲、1842年10月20日にドレスデンで初演された全5幕から成る歌劇です 物語は「ローマ教皇の公証人であったリエンツィは、一度は民衆の支持を得て貴族派を押さえて護民官の地位に就くが、やがて貴族の策謀と民衆の裏切りによって滅びる」という内容です

ヴァイグレの指揮で演奏に入ります 冒頭のトランペットをはじめホルン、トロンボーンといった金管楽器が大活躍し、オペラ指揮者ヴァイグレの本領発揮といったドラマティックな演奏を繰り広げました 全体的に重心の低いドイツ的な演奏だったと思います

2曲目はベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1806年に作曲、同年12月23日にアン・デア・ウィーン劇場で初演されました 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏のダニエル・ロザコヴィッチは2001年ストックホルム生まれの弱冠23歳 8歳で協奏曲デビューを飾り、15歳で名門ドイツ・グラモフォンと専属契約を結び脚光を浴びました 著名な指揮者と共に世界各国のオーケストラと共演を重ねています

ティンパニの4連打で第1楽章が開始されますが、この曲はオーケストラによる序奏部が長く、独奏ヴァイオリンはなかなか登場しません 極めて古典的です。その序奏部では、オーボエの金子亜未が素晴らしい演奏を展開しました ロザコヴィッチの独奏ヴァイオリンがおもむろに入ってきますが、彼は終始、弱音重視とでもいうべき演奏を繰り広げます 果たして2階席最後方まで音が届いているのか、と心配になるほどナーヴァスな音です そして遅いテンポで丁寧に音を紡ぎ出していきます 終結部の手前では演奏が止まるかと思うほどテンポが落ちました 第2楽章に入ってからも、ロザコヴィッチはゆったりしたテンポで一音一音を慈しむように演奏し、弱音による研ぎ澄まされた美音が会場を満たしました 第3楽章に入ると一転、美音はそのままで軽快な演奏が展開し、終盤のカデンツァでは”繊細さ”とは対極にある”情熱的な”演奏を繰り広げました

満場の拍手とブラボーにロザコヴィッチはアンコールに、J.Sバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調」の第1楽章「アダージョ」を重音技法を駆使して”弱音”によりしみじみと演奏、聴衆を黙らせました 彼のポリシーは一貫しているようです

 

     

 

プログラム後半はR.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語り 作品30」です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)がフリードリヒ・ニーチェの思想書「ツァラトゥストラはかく語りき」に啓発され、1895年から96年にかけて同名のタイトルにより作曲、1896年11月27日にフランクフルト・アム・マインで初演されました 第1部「導入」、第2部「世界の背後を説く人々について」、第3部「大いなる憧れについて」、第4部「喜びと情熱について」、第5部「墓場の歌」、第6部「学問について」、第7部「病の癒えつつある者」、第8部「舞踏の歌」、第9部「夜をさすらう者の歌」の9部から構成されています 第2部から第8部まではニーチェの著作から採った言葉をタイトルとして付しています

弦は16型に拡大し、フルオーケストラ態勢を敷きます ステージ下手にはハープが2台、2階正面のパイプオルガンにも奏者がスタンバイします

ヴァイグレの指揮で第1部が、パイプオルガンの低音に乗せて、トランペットがドソドの音型を演奏して開始されます 私はこの冒頭を聴くと、スタンリー・キューブリック監督による不朽の名作「2001年宇宙の旅」(1968年)を思い出します あの映画では、人工知能「ハル」と人間との争いが出てきますが、現在まさにそういう時代を迎えています

こういう大管弦楽を駆使したスケールの大きな作品は、読響のゴージャスなサウンドが最適です 何よりもトランペット、ホルン、トロンボーン、テューバといった金管楽器の演奏が素晴らしい そして木管楽器がよく歌い、打楽器群がここぞというところで活躍し、弦楽器が渾身の演奏を展開します 林コンマスのヴァイオリン独奏、ソロ・チェロ遠藤真理の独奏も冴えていました 全体的に重厚感のある宇宙的な広がりを感じさせる堂々たる演奏でした

 

     

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「さよならマエストロ ~ 父と私のアパッシオナート」始まる / 沖澤のどか講演会に申し込む ~ 「フィガロの結婚」におけるテンポ設定 / 久坂部羊著「人はどう死ぬのか」を読む

2024年01月16日 06時05分26秒 | 日記

16日(火)。14日(日)からTBS系列で連続ドラマ「さよならマエストロ ~ 父と私のアパッシオナート」(日曜夜9時)が始まりました 残念ながら娘にチャンネル権を奪われて観られませんでしたが、面白そうですね 15日の朝日朝刊のラテ欄のコラム「フォーカスオン」によると、「天才指揮者の夏目俊平(西島秀俊)が、ある事件をきっかけに別れた娘・響(芦田愛菜)と親子の絆を取り戻していくヒューマンドラマ」とのことです 第1話では、「俊平は財政上の問題で存続の危機に瀕した地方オケから指揮者就任を頼まれる 日本のオケは都市部に集中しており、財政面では行政や民間からの支援を得て運営しているところが多い 地方の文化的な資源であり自治体の助成がなければ厳しい状況に置かれる地方オケに、今作は光を当てる」としています。「苦労したのはやはり、演奏シーン 出演者たちは、早い人で昨年の7月ごろから楽器のレッスンを受け始め、撮影と並行しながら熱心に練習を重ねているという 撮影は基本、音源を流して演奏している振りをする『当て振り』だが、フルート奏者役の新木優子は、手元がクローズアップされるため、『ある程度(楽器のキーを正しい指使いで)押さえていないといけないので、ごまかせない』と苦労を語る」「毎話ごとにテーマとなる楽曲が登場する 第1話はベートーヴェンの交響曲第5番『運命』。東仲プロデューサーは『物語にリンクした素敵な名曲をたくさん使っているので、楽しんで聴いてもらえたら』と期待している

芦田愛菜さんが出演するので第2回目は是非観たいです

ところで、サブタイトルになっている「アパッシオナート(appassionato)」とは、イタリア語で「熱情的に、激情的に」という意味で、「熱心な人」を表すこともあります ちなみに有名なメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品35」(いわゆる「メンコン」)の第1楽章は「アレグロ・モルト・アパッショナート(Allegro  molto  appassionato)」です ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 作品57」は「アパッショナータ(Appassionata)」と呼ばれ、日本では「熱情」と訳されています

また、タイトルにある「マエストロ」は「(主として芸術の分野で)卓越した才能や技能を持ち、多くの人から尊敬されている存在。巨匠。〔狭義では指揮者を指す〕」(「新明解国語辞典」より)という意味です 私が「マエストロ」と聞いてすぐに思い浮かべるのはロヴロ・フォン・マタチッチやカルロス・クライバーやセルジュ・チェリビダッケです ひと言でいえば「誰もが認める巨匠指揮者」です ところが 最近では、コンサートのチラシやSNSなどで、人生経験も音楽家としての経験も浅く、実力が伴わない若手の指揮者を「マエストロ」と呼ぶケースをしばしば見かけるようになりました   この傾向について私は「マエストロの安売りはやめてほしい」と思っています 「マエストロ」という言葉があまりにも軽く扱われています 言われている本人も「恥ずかしいからマエストロと呼ばないでほしい」と思っているに違いないと確信します 音楽関係者に限らず、言葉は大切に扱ってほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3289日目を迎え、ロシアの詩人で、ウラジーミル・プーチン大統領に批判的なレフ・ルビンシテイン氏(76)が今月、モスクワで交通事故に遭い、死亡していたことが明らかになった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     誰も交通事故死だったとは思っていないだろう プーチン政権は何でもやるからね

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダとアボカドのサラダ」を作りました ビーフは今回バラ肉を使いました。「月曜日はカレー」というローテが確立しつつあります 料理をしない人には分からないでしょうが、料理で一番面倒くさいのは「夕食の献立をどうしよう」ということです 献立さえ決まれば、あとはレシピ通りに作れば良いだけなので迷いはありません その点、「月曜日はカレー」とか「隔週金曜日は鶏の唐揚げ」とか決めてしまえば、それ以外の曜日の献立を考えれば良いので それだけ気分が楽になります 同じ「カレー」でもメインの具材を牛肉、豚肉、鶏肉、野菜と換えれば飽きないので、合理的だと思います

 

     

 

         

 

日本モーツアルト協会主催「沖澤のどか講演会 ~ 『フィガロの結婚』におけるテンポ設定」に参加申し込みしました 2月8日(木)14時から16時までで、会場は東池袋の「あうるすぽっと3階 会議室B」です モーツアルトのオペラが大好きなので、テンポ設定に興味があります 先着70名とのことで、13日にメールで申し込んだところ、昨日 受付完了メールが届きました 今から楽しみです

 

     

 

         

 

久坂部羊著「人はどう死ぬのか」(講談社現代新書)を読み終わりました 久坂部羊(くさかべ よう)は1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院の外科および麻酔科で研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科医として勤務。「廃用身」(幻冬舎)で2003年に作家デビュー 著書多数。2014年「悪医」(朝日新聞出版)で第3回日本医療小説大賞を受賞

 

     

 

本書は次の9章から構成されています

「はじめに」

第1章「死の実際を見る、心にゆとりを持って」

第2章「さまざまな死のパターン」

第3章「海外の”死”見聞録」

第4章「死の恐怖とは何か」

第5章「死に目に会うことの意味」

第6章「不愉快な事実は伝えないメディア」

第7章「がんに関する世間の誤解」

第8章「安楽死と尊厳死の是々非々」

第9章「”上手な最期”を迎えるには」

「おわりに」

著者は医師としての経験から、「望ましい最期を迎える人と、好ましくない亡くなり方をする人を数多く見てきたが、問題は、死が一発勝負で、練習もやり直しもできないということだ」と書いています    その上で、「練習できないのなら、せめてほかの人の例を参考にすべきだ ところが、医療が進歩し、死が病院の中に隠されるようになって、死はどんどん世間の目から遠ざけられてしまった それに輪をかけたのが、生の無条件肯定と、死の絶対否定だ しかし、いくら否定しても死は必ず訪れる。であれば、あらかじめしっかりと準備しておいた方がいい」と述べています

第1章では、「死の判定」について「人の死を判定するときには、医者は『死の3徴候』と呼ばれるものを確認する 『呼吸停止』『心停止』『瞳孔の拡大』である。この3つが揃うと、人は死んだと判定される」と説明します

著者が本書の中で繰り返して主張していることは第9章「”上手な最期”を迎えるには」に集約されています 超略すると次の通りです

「死は生物としての生命の終わりなので、ある程度は苦しいのは当たり前だ。痛みや苦しみは、忌避すればするほど強く感じられる だから、死ぬときはある程度は苦しいものだと、今から覚悟を決めておく方が、落ち着いて最期を迎えられるだろう」「たくさんのチューブやカテーテルを差し込まれ、意識もないまま、あちこちから出血し、浮腫や黄疸で生きたまま肉体が腐っていくような状態になりながら、機械によって生かされる最期は好ましくない これは命を延ばすための医療を受けたときに起こる状態だ。この例からも分かるように、最期を迎えるに当たっては、病院で高度な医療は受けない方がいい 何度も繰り返すが、医療は死に対して無力と言われる所以だ」「高度な医療をしない在宅医療での看取り、あるいは、家族さえ納得していれば施設での看取りも望ましい」「経験から言うと、死ぬときにいろいろと求める人ほど、苦しむような気がする 上手な最期を迎えた人は、あらかじめ自分の死に注文などつけず、虚心坦懐にあるがままを受け入れる心構えができていたように思う すなわち、『求めない力』の強い人たちだ

私は本書を読んで、将来 人生の最期に際しては 延命治療はしないよう家族に伝えようと思いました 著者自らが書いているように「死に関する新しい教科書」としてお勧めします

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トゥガン・ソヒエフ ✕ NHK交響楽団でラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」他を聴く / 大学入学共通テスト「国語」にモーツアルト「レイクエイム」に関する文章が!

2024年01月15日 00時01分15秒 | 日記

15日(月)。13日に実施された「大学入学共通テスト」第1日目には全国の49万1914人の志願者が受験したそうです 昨日の新聞各紙に問題と解答が掲載されていましたが、「国語」の第1問を見て「おやっ?」と二度見しました 「第1問 次の文章を読んで、後の問い(問1~6)に答えよ」とあり、本文の冒頭は次のように書かれています

「モーツアルトの没後200年の年となった1991年の、まさにモーツアルトの命日に当たる12月5日に、ウィーンの聖シュテファン大聖堂でモーツアルトの『レクイエム』の演奏が行われた(直後にLDが発売されている)。ゲオルグ・ショルティの指揮するウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場の合唱団などが出演し、ウィーンの音楽界の総力をあげた演奏であるのだが、ここで重要なのは、これがモーツアルトの没後200年を記念する追悼ミサという『宗教行事』であったということである。それゆえ、随所に聖書の朗読や祈りの言葉等、『音楽』ではない台詞の部分や聖体拝領などの様々な儀式的所作が割り込む形になる。まさに『音楽』であり『宗教行事』であるという典型的な例である」

本文はまだ長々と続きますが、「レクイエム」「LD」「ゲオルグ・ショルティ」「ウィーン・フィル」には注釈が付されています それはそうでしょう。ウィーン・フィルはともかく、LD(レーザーディスク)に至っては今や死語ですから 第1問の最後には(渡辺裕「サウンドとメディアの文化資源学ー境界線上の音楽」による)と出典が明示されています

設問は①漢字の能力を問うもの(4択)5問と ②文章中の線を引いた部分の解釈を問うもの(5択・4択)5問から構成されています このうち②は1度読んだだけでは回答が困難な問題です この難問に取り組んだ49万人以上の受験生に敬意を表します

ところで、大学入学共通テストの問題に音楽評論が取り上げられるのは極めて珍しいのではないか、と思います この設問の問題作成者(どこかの大学の教授か?)は、クラシック音楽に少なくとも興味はあるのではないかと思います

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3288日目を迎え、アイヌ民族や在日コリアンに対する差別発言で、法務当局から人権侵犯認定を受けた自民党の杉田水脈衆院議員に抗議する集会が13日に札幌市で開かれ 約180人が参加したが、実行委員会の木村二三夫共同代表は「杉田議員や追従する者たちによる誹謗中傷に多くのマイノリティーが傷つけられている。政府与党は危険な言動を野放しにしており、私たちの有権者の責任も重い」と指摘、人権侵犯の被害を申し立てた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「野放し」は岸田首相の得意技だ パー券を巡る裏金作り問題もしかり やる気なし

 

         

 

昨日、NHKホールでNHK交響楽団1月度Aプロ2日目公演を聴きました プログラムは①ビゼー(シチェドリン編):バレエ音楽「カルメン組曲」、②ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」、③同:バレエ音楽「ラ・ヴァルス」です 指揮はトゥガン・ソヒエフです

トゥガン・ソヒエフは1977年北オセチア共和国(ロシア)のウラジカフカスに生まれ、サンクトペテルブルク音楽院で指揮をイリヤ・ムーシンとユーリ・テミルカーノフに学ぶ。2022年に母国ロシアがウクライナに侵攻したことに心を痛め、ボリショイ劇場音楽監督とトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団音楽監督を辞任しました。しかし、実力者ソヒエフはその後も世界中から引く手あまたで、N響はじめ世界各国のオーケストラに客演しています

 

     

 

1曲目はビゼー(シチェドリン編):バレエ音楽「カルメン組曲」です この曲はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が1873年から74年にかけて作曲したオペラ「カルメン」をもとに、シチェドリン(1932~)がバレエ用に編曲した弦楽と打楽器による作品です 第1曲「導入」、第2曲「踊り」、第3曲「第1間奏曲」、第4曲「衛兵の交代」、第5曲「カルメンの登場とハバネラ」、第6曲「情景」、第7曲「第2間奏曲」、第8曲「ボレロ」、第9曲「闘牛士」、第10曲「闘牛士とカルメン」、第11曲「アダージョ」、第12曲「占い」、第13曲「終曲」の全13曲から成ります

弦楽器は16型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつものN響の並びですが、この曲は管楽器が入らない代わりに打楽器が5名加わり、弦楽器の後方に各自が距離を取ってスタンバイします コンマスは伊藤亮太郎です

ソヒエフの指揮で演奏に入りますが、全体的に弦楽器の洗練された美しい演奏と、打楽器の多彩な音色を醸し出した演奏が印象的でした

弦楽器で特に印象に残ったのは第7曲「第2間奏曲」です この曲はもともとフルート独奏のための名曲ですが、チェロとコントラバスのピッツィカートに乗せてヴィオラが美しいアンサンブルを奏でました ヴィオラの演奏では第3曲「第1間奏曲」における「運命の動機」の渾身の演奏も、ヴィオラの音色の美しさを改めて認識させる素晴らしい演奏でした また、第11曲「アダージョ」と第12曲「占い」における弦楽アンサンブルの美しさは特筆に値します

最高に楽しかったのは第8曲「ボレロ」です この曲はビゼーの劇音楽「アルルの女」の「ファランドール」の編曲です 打楽器が大活躍しリズム中心の軽快な演奏を展開しました また第10曲「闘牛士とカルメン」ではヴィブラフォンの包容力のある音色が美しく響きました

 

     

 

プログラム後半の1曲目はラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」です この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が友人のゴデブスキ夫妻の2人の子どものために1908年から10年にかけて作曲したピアノ連弾曲です ラヴェルは1911年にこの作品を管弦版に編曲しました 第1曲「眠りの森の美女のパヴァーヌ」、第2曲「一寸法師」、第3曲「パゴダの女王レドロネット」、第4曲「美女と野獣の対話」、第5曲「妖精の園」の5曲から成ります

この曲から管楽器が加わり、ハープが2台、打楽器も6人態勢となります

ソヒエフの指揮で演奏に入りますが、彼はタクトを使用せず、両手で音を紡ぎ出すように指揮をします 全体的に木管楽器群が繊細にして美しい演奏を繰り広げました 第1曲ではフルートの神田寛明、梶川真歩、クラリネットの伊藤圭の演奏が冴えていました 第2曲ではオーボエの吉村結実、コーラングレの池田昭子の演奏が素晴らしかった また、弦楽アンサンブルが美しく響きました 第3曲ではフルートが、第4曲ではクラリネットが素晴らしい演奏を展開しました 第5曲は「平和で平穏な状態」を音にしたらこういう音楽になるのではないかと思うような静かで慈愛に満ちた音楽です この曲を聴くと、同じような曲想のエルガー「エニグマ変奏曲」の「ニムロッド」を想起します 弦楽セクションも、管楽器群も、打楽器群も、ソヒエフ・マジックにかかったかのように豊かで愛に満ちた演奏を繰り広げました

最後の曲はラヴェル:バレエ音楽「ラ・ヴァルス」です この曲はロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフの委嘱により1919年12月から20年4月にかけて作曲、1920年12月12日にパリで初演されました ラヴェルが想定したのは「1855年頃のウィーンの皇帝の宮殿」です

ここで、金管楽器はホルンに加えてトランペット、トロンボーン、テューバが入ります

ソヒエフの指揮により低弦の重心の低い演奏から曲が開始されます この曲では木管群の個人芸に金管楽器の華やかな演奏が加わり、弦楽器の見事なアンサンブルと相まってスケールの大きな演奏が繰り広げられます シンコペーションのリズムによるワルツが耳から離れません ソヒエフはN響の持てる力を全て引き出し、色彩感溢れる圧倒的なフィナーレを飾りました

満場の拍手の中、カーテンコールが繰り返され、ブラボーが飛び交いました つくづくソヒエフはいい指揮者だと思います

 

     

     

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沖澤のどか ✕ 黒木雪音 ✕ 東京シティ・フィルでシューマン「ピアノ協奏曲」、ラヴェル「ダフニスとクロエ」第1、第2組曲他を聴く / N響2024-2025シーズン定期公演プログラム決まる

2024年01月14日 00時01分12秒 | 日記

14日(日)。N響の公式サイトに「N響2024-2025シーズン定期公演プログラム」(2024年9月~2025年6月)が発表されました

Aプログラム(土・日:NHKホール・全9回)では、ファビオ・ルイージ指揮によるブルックナー「交響曲第8番」(9月)、トゥガン・ソヒエフ指揮によるショスタコーヴィチ「交響曲第7番」(1月)、ルイージ指揮によるマーラー「交響曲第3番」といった大曲をはじめ、6月にはフェドセーエフの指揮で、ショパン国際コンクール優勝者ユリアンナ・アヴデーエワがラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏するのも楽しみです

Bプログラム(木・金:サントリーホール・全9回)は各回で協奏曲が組まれていますが、ルイージ指揮、エレーヌ・グリモーのピアノによるシューマン「ピアノ協奏曲」他(9月)、ルイージ指揮、ネルソン・ゲルナーのピアノによるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」他(12月)、ソヒエフ指揮、郷古廉のヴァイオリンによるバルトーク「ヴァイオリン協奏曲第2番」他(1月)、フアン・メナ指揮、ハインツ・シュルツにフルートによるイベール「フルート協奏曲」他(6月)などが魅力的です

Cプログラム(金・土:NHKホール・全8回)では、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮によるシューベルト「交響曲第7番&第8番」(10月)、ルイージ指揮によるリスト「ファウスト交響曲」他(12月)、ソヒエフの指揮によるストラヴィンスキー「プルチネッラ」、ブラームス「交響曲第1番」などが期待大です なお、Cプロ4月公演はN響ヨーロッパ公演のため休止となるため全8回となっています

現在、私はAプロとBプロの定期会員ですが、両プロとも継続する方針です できればBプロが後ろ過ぎるのでもっと前の席に移りたいと思います

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3287日目を迎え、自民党派閥の政治資金パーティー事件を受けて党が設置した「政治刷新本部」(本部長:岸田文雄首相)をめぐり、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派、98人)からメンバー入りした10議員のうち9人がパーティー収入の一部を裏金にしていた疑いがあることが関係者への取材で分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     岸田首相が得意の”適材適所”の人選だとさ  本気で政治刷新をやる気がない証拠だね

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京シティ・フィル「366回定期演奏会」を聴きました プログラムは①シューマン(ラヴェル編曲)「謝肉祭」より「前口上」「ドイツ風ワルツ」「パガニーニ」「ペリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進曲」、②同「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」、③ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲です

指揮を執る沖澤のどかは1987年青森県生まれ。東京藝大で指揮を高関健、尾高忠明に師事 2019年「ブザンソン国際指揮者コンクール」で優勝、併せてオーケストラ賞及び聴衆賞を受賞 2020年から2022年まで、ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミー奨学生、キリル・ペトレンコのアシスタントを務めた 2023年から京都市交響楽団常任指揮者

     

     

 

オケは16型で左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつものシティ・フィルの並び。コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はシューマン(ラヴェル編曲)「謝肉祭~4つの音符に基づく愛らしい情景」より「前口上」「ドイツ風ワルツ」「パガニーニ」「ペリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進曲」です   この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が1833年から35年にかけて作曲したピアノ作品で、後にモーリス・ラヴェルが1914年に管弦楽用に編曲しました

沖澤の指揮で演奏に入ります 特に印象的だったのは、優雅で軽快な「ドイツ風ワルツ」が奏でられた後、速いテンポによる「パガニーニ」が演奏され、再び「ドイツ風ワルツ」が戻ってくる緩急の切り替えの見事さです また、「ペリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進曲」では溌溂とした演奏が光りました

2曲目はシューマン「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」です   この曲は1841年(第1楽章)、45年(第2、3楽章)に作曲、1846年1月にライプツィヒで初演されました 第1楽章「アレグロ・アッフェットゥーソ」、第2楽章「インテルメッツォ:アンダンティーノ・グラツィオーソ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の黒木雪音は1998年千葉県生まれ。昭和音楽大学大学院修了。2022年5月、ダブリン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝したほか、内外のピアノコンクールに入賞しています

コンチェルトのためオケは12型に縮小します 青緑色のステージ衣装に身を包まれた黒木雪音が登場します 数年前にコンサートで遠目に見た時の印象と比べて、思ったより大柄で意外に感じました 指揮者の沖澤のどかが小柄なので余計そう感じたのかもしれません

この曲は大好きなので、理屈抜きに楽しませてもらいましたが、特に素晴らしかったのは第3楽章です 沖澤 ✕ シティ・フィルとの丁々発止のやり取りによる軽快な演奏に、思わず足で拍子を取っていました

カーテンコールが繰り返され、黒木はアンコールにカプースチン「8つの演奏会用エチュード」から第1曲「プレリュード」をノリノリでジャジーに演奏し、再び満場の拍手を浴びました

 

     

 

プログラム後半は、ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲です    この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)がロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフの依頼により1909年から12年にかけて作曲したバレエ曲から組曲を編んだものです 第1組曲は1911年にバレエの第1部より「夜想曲」「間奏曲」「戦いの踊り」を、第2組曲は1913年に第3部より「夜明け」「パントマイム」「全員の踊り」を編んでいます

「ダフニスとクロエ」は「古代ギリシアのレスボス島で、羊飼いに育てられた貴族の捨て子ダフニスとクロエは、互いに愛し合うが、クロエは海賊に誘拐される。しかしパンの神に救われ、無事再会を果たす」という物語です

弦楽器は再び14型に拡大します 管・打楽器も大幅に増員され、ステージ下手にはハープが2台スタンバイし、フルオーケストラ態勢を敷きます

沖澤の指揮で第1組曲の演奏に入ります 全体を通じて特筆すべきは管楽器群の演奏です 特にフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットといった木管楽器が素晴らしい演奏を展開します また、「間奏曲」ではステージの表と裏の両方で活躍した松木亜希のトランペットが素晴らしかった 第2組曲では、第1曲「夜明け」における管楽器と弦楽器のコラボレーションによる幻想的なまでの色彩感溢れる演奏が素晴らしく、海面に太陽が昇る様子が目に浮かぶようでした これだけとっても沖澤マジックと言えます 第2曲「無言劇」はフルートの独壇場でした。本当に素晴らしい演奏でした 第3曲「全員の踊り」では、沖澤のメリハリのある指揮により緩急自在・色彩豊かな音楽が繰り広げられました

沖澤のどかと東京シティ・フィルはかなり相性が良いと思ったコンサートでした

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「井上道義ファイナル・コンサート」はこれだ! / 中山七里著「銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2」を読む / 「女性ならではの感性とは?」 ~ 朝日新聞の記事から

2024年01月13日 06時49分06秒 | 日記

13日(土)。サントリーホールの公式サイトに「2024~25 サントリーホール主催公演」が発表されました それによると、12月30日(月)に「第54回サントリー音楽賞受賞記念コンサート」が開かれ、2022年度の受賞者・井上道義が指揮を執ります プログラムや出演オーケストラなどの詳細は不明ですが、チケットは8月発売となっています 井上道義は今年12月末日をもって指揮者を引退すると表明していることから、この公演が実質的な「ファイナル・コンサート」になると思われます 今後の情報公開が待たれます

話は変わりますが、昨日の日経夕刊 文化面にクラシックのコンサート評が載っていました 取り上げられているのは昨年12月17日に開かれたファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団によるマーラー「交響曲第8番”一千人の交響曲”」です 音楽評論家のE氏の執筆によるものですが、内容はともかく、実際に聴いた私からみれば「何を今さら」という感じです コンサート評は毎日掲載されているわけではなく1週間に1回程度であることは承知していますが、新聞は週刊誌や月刊誌ではないのですから、公演から26日も経って掲載することに何の意味があるのか、あまりにも遅すぎるのではないか、と疑問に思います 当ブログでも書きましたが、日経は昨年12月9日に「音楽回顧 2023」を、同28日に「今年の収穫 音楽」を掲載して、それぞれ1年間のクラシック・コンサートを振り返っています それだけに、新年を迎え12日も経った今「何を今さら」という感を強くします X や Facebook で個人が情報発信できる時代に、タイミングを逸した音楽評論家の書く新聞のコンサート評にどれほどの意味があるのだろうか

ということで、わが家に来てから今日で3286日目を迎え、ウクライナのコスチン検事総長は11日、ロシアが今月2日に北東部ハリコフ中心部への攻撃で北朝鮮製ミサイルを使った「最初の証拠」を受け取ったと現地メディアに語った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     北朝鮮に頼るロシアが大国だって? 笑わせてくれる 虚栄心の塊 プーチン・ロシア

   

         

 

昨日の夕食は「博多豚骨鍋」にしました 材料は、豚バラ肉、白菜、ニラ、モヤシ、シメジ、長ネギ、豆腐です 鍋と言えば日本酒の熱燗です 熱燗を飲むと眠くなって本が読めなくなるって数日前に書きましたね

 

      

      

      

 

         

 

昨日の朝日朝刊「オピニオン&フォーラム」のページは、「女性ならではの感性?」というテーマを取り上げていました リード記事は「『女性ならではの感性を発揮していただく』。昨秋、岸田文雄首相が女性閣僚起用に際して語った言葉に、批判が集まった いったいどんな感性? そこから透けて見えるものとは」と謳っています 武蔵野市議会議員の西園寺みきこさん、お茶の水女子大学特任教授の佐々木成江さん、作家の松田青子さんの3人がインタビューに答え、それぞれの持論を展開しています    このうち、松田青子さんは、「女が死ぬ」「おばちゃんたちのいるところ」を読んだこのがあるので親近感を覚えました

彼女は本紙インタビューの中で、「『女が死ぬ』の中の『男性ならではの感性』というエッセイを書いたのは、女性が言われがちな言説をすべて男性に言い換えてみたら、そのおかしさが伝わるのでは。そう思って書いた作品でした」と語っています 「岸田首相が使った『女性ならではの感性』は、『女性も個人であり、それぞれ違う』という単純な事実すら、理解せずに使っているのではないかと思いました」と述べ、「『感性』とは本来、『炭鉱のカナリア』のように、見過ごされている問題や違和感に光を当てることができる力です。感じとる力や繊細さは、もっと大切にされるべきではないでしょうか」と語っています

まったく同感です。最近、政治の分野に限らず、言葉が軽くなってきていると思います

松田青子さんの「女が死ぬ」(53篇から成る短編集)については、読後感想を2022年3月21日付ブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください

 

     

     

    

         

 

中山七里著「銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2」(文春文庫)を読み終わりました    中山七里は1961年岐阜県生まれ。会社員の傍ら、2009年「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌年デビュー     その後「中山七里は七人いる」と言われるほど次々とベストセラー・ミステリーを発表し、話題を呼んでいる

toraブログでは、文庫化された中山七里の作品はすべてご紹介しています

 

     

 

本書は「銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵」の続編に当たる5編の連作短編集です

日本で20番目の女性裁判官で東京高裁の元判事・高遠寺静(80歳)は法科大学に招かれ名古屋に滞在するが、そこでトンデモナイ地元の有名人と知り合います それが不動産会社の社長にして商工会議所の会頭、町内会の会長などの要職を兼任する経済界の重鎮、”要介護探偵”の異名を持つ香月玄太郎(70歳)でした 静は、車椅子生活を送りながらも頑固で横柄な玄太郎に振り回されることになります

第1話「もの言えぬ証人」は、静が健康診断のため練馬の病院を訪ねると、大腸がんの疑いのため名医を頼って名古屋からこの病院に来たという玄太郎と再会します その病院で2人が、大腸がんの名医による医療過誤疑惑騒動に巻き込まれるというストーリーです

第2話「僕は忘れない」は、手術を無事に終了した玄太郎のもとに、見舞いに訪れた日建連会長が、建物の構造計算書偽造問題について相談を持ち掛けるところからストーリーが展開します 建設会社の社長か一級建築士のどちらかが嘘をついていることが疑われますが、一級建築士が歩道橋から転落死する事故(事件)が発生します 果たして真犯人は誰か・・・静と玄太郎の推理により意外な真犯人が浮かび上がります

第3話「鉄の柩」は、高齢者の自動車暴走事故が取り上げられています 運転していたのは元警察官だっただけにストーリーは複雑に展開します

第4話「葬儀を終えて」は、同僚判事の葬儀に参列した静が、祖父の死を嘆く少女の訴えに疑問を抱き、火葬を延期させて司法解剖に持っていき、真実の追及をするというストーリーです

第5話「復讐の女神」は、静は娘夫婦が交通事故で亡くなったため、孫娘と暮らすため司法研修所を退職しますが、かつての同僚が宿舎の近くで殺されるという事件が起こります 静は冷徹な推理によって犯人を割り出します

中山七里のミステリーの特徴は、時事問題をテーマに据えていることです 第1話では「医療過誤問題」、第2話では「建築偽造問題」、第3話では「高齢者による自動車暴走事故」、第4話・第5話では「詐欺」が取り上げられています

ところで、第3話「鉄の柩」では他の中山七里作品で主役を張る岬洋介が登場します ここでは静が司法修習生として「特筆すべき存在」として目をかけている人物として登場しています 彼は結局、司法の道を止めて音楽の道を歩むことになります この第3話では静が岬に次のように語るシーンがあります

「歳をとるというのは、あなたが考えている以上に惨めで恐ろしいものなのよ 昨日できたことが今日できなくなる。今日できたことが明日にはできなくなるかもしれない 大袈裟な言い方だけど、絶望と恐怖がじわじわと日常生活の中に忍び寄ってくる。まだ若いあなたには分からないでしょうね

これは著者の独白であるとともに、多くの読者を代弁した言葉であるように思います

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ヴィム・ヴェンダース監督・役所広司主演「PERFECT DAYS」を観る ~ 渋谷の公共トイレを清掃する寡黙な男の日常生活を淡々と描いた作品

2024年01月12日 00時54分42秒 | 日記

12日(金)。わが家に来てから今日で3285日目を迎え、米大統領選の野党・共和党指名争いでリードするトランプ前大統領は10日、副大統領に誰を指名するか決めていると明らかにし、党内の他の候補者から選ぶことに前向きな姿勢をうかがわせた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプの条件は「絶対服従」だから 誰が引き受けるかな ヘイリーさんどうする?

 

         

 

昨日、夕食に「サーロインステーキ」を焼きました ステーキソースは、息子が帰省中に作りおいてくれたものを使いました ステーキは柔らかくてとても美味しかったです

 

     

 

          

 

昨日、TOHOシネマズ新宿でヴィム・ヴェンダース監督による2023年製作映画「PERFECT  DAYS」(124分)を観ました

平山正木(役所広司)は東京・渋谷でトイレの清掃員として働いている 淡々とした同じ毎日を繰り返しているように見えるが、彼にとっての毎日は常に新鮮な小さな喜びに満ちている 昔からカセットテープで聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように同じ木々の写真を撮っていた そんなある日、思いがけない妹と姪との再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく

 

     

 

この映画は、東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的なクリエイターが改修する「THE  TOKYO  TOILET  プロジェクト」に賛同したヴェンダースが、東京・渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた作品です

平山は東京スカイツリーが近くに見える下町の古いアパートに独りで住んでいます 毎日、近所の老婆が道を掃除する竹箒の音で目を覚まし、布団をたたみ、歯磨きをして髭を剃ります いくつもの植木鉢の植物にスプレーで水を噴射し、仕事着に着替え、車の鍵、ガラケー、小型フィルムカメラ、小銭などを持ってアパートを出て自動販売機でいつもの缶コーヒーを買い、清掃道具を積んだワゴン車に乗り込み、お気に入りのカセットテープをかけ、公共トイレに向かいます 数カ所の清掃を済ませ、途中、神社の境内でサンドイッチの昼食を取り、カメラでいつもの木々を撮影します 仕事を終えて帰ってくると、近所の銭湯で身体を洗い、自転車で浅草駅地下の古い飲み屋街にある行きつけの店に行き、座ると出てくるいつものサワーとつまみを取りながら、テレビで放映されているプロ野球や大相撲を観て、自転車で家に帰ってきます そして、大好きな文庫本を読みながら就寝します・・・平山の日常生活はこんな単純なルーティーンの繰り返しで、ほとんど人と話すことはなく寡黙な日々を送っています カメラはそんな普段の平山の行動を追っていきます

ちょっとした動きといえば、彼の姪っ子ニコ(中野有紗)が突然訪ねてきて、アパートに泊まることになりますが、彼女は家出をしてきたと言います 翌日、仕事に同行したいというニコと共にトイレ掃除に向かいます。平山はニコに内緒で、自分の妹でありニコの母親でもあるケイコ(麻生祐未)に電話して事情を説明すると、その夜、ケイコが運転手付き高級車でニコを迎えにきます そして、「兄さん、こんなところに住んでいるんだ 本当にトイレ掃除をやっているの?  父さん、昔と違っているから、いつでも戻ってきて」と言います ここで、平山は裕福な家の出であり、父親との関係が悪くて家を出て今の仕事に携わっていることが分かります

また、仕事がいい加減な同僚の若いタカシ(柄本時生)が登場しますが、彼はガールズバーで働くアヤ(アオイヤマダ)に夢中です いつも金欠なタカシは平山が持っているカセットテープが高値で売れることを知り、それを売ってアヤとのデートのために金を貸してくれと頼みますが、平山は拒否し現金を渡します ここに「昔から馴染んできた大切なものは簡単には手放さない」という平山の価値観が表われています

さて、音楽の話です 最初に平山がワゴン車に乗ってかけたカセットテープは、アメリカ民謡でアニマルズの歌でヒットした「朝日の当たる家」です ヴェンダース監督はこの歌が好きなようで、後に平山が訪ねるスナックのママ(石川さゆり)にギター伴奏で歌わせています(歌詞は浅川マキ・バージョンらしい)。平山のお気に入りは、カセットテープ全盛時代に流行った曲のようですが、私にはほとんど分かりませんでした

エンドロールの直前、「日本では、森林などの木立から太陽の日差しが漏れる光景のことを”木漏れ日”という」という映像が映し出されます 本編の中でも、平山が神社の境内で空を見上げてカメラで木々を撮る時に”木漏れ日”が見えていました ベンダース監督は小津安二郎監督を尊敬しており、映画製作上も影響を受けているようですが、私は黒澤明の「羅生門」におけるモノクロ映像による”木漏れ日”を思い浮かべました

本作では平山が読む本として3冊の文庫本が登場します 幸田文「木」、ウィリアム・フォークナー「野生の棕櫚(しゅろ)」、パトリシア・ハイスミス「11の物語」です 今度、書店に行く時のリストに加えておこうと思います

この作品は2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所広司が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞しました 台詞が限りなく少なく、顔の表情や体の動作によって寡黙な平山という一人の男を演じることがいかに難しいか それを考えると当然の受賞だと思います

この映画は、毎日同じようなことが繰り返される日常生活の中にも、小さな喜びを見出し、何よりも健康で真面目に生きていくことがどれほど大切なことかが伝わってきます

 

     

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