中国、南シナ海に弾道ミサイル4発発射 「空母キラー」で米けん制

2020年08月27日 11時54分53秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

【ワシントン、北京時事】米国防当局者は26日、中国軍が中国本土から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射したと明らかにした。

 中国は25日に米軍偵察機が軍事演習区域を飛行したと非難したばかり。今回の発射には中国の南シナ海領有権主張を否定し、経済・軍事両面で対中圧力を強めるトランプ米政権をけん制する意図があるとみられる。  

当局者によると、弾道ミサイルは南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾した。「ミサイルの種類については現在分析中」という。

 これに先立ち、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は中国軍が対艦ミサイル2発を発射したと報じていた。それによると、中国軍は26日午前、内陸部の青海省から「東風26」(推定射程4000キロ)、沿岸部の浙江省から「東風21D」(同1500キロ)を1発ずつ発射。中国軍筋は「米軍が頻繁に軍用機や艦艇を南シナ海に派遣し、潜在的危機を高めていることに対する中国の返答だ」と警告した。

 東風26は米領グアムを射程に収めることから「グアムキラー」と呼ばれ、対艦攻撃も可能とされる。また「海上の大型艦艇を正確に攻撃できる」(中国国防省)といい、東風21Dと並んで「空母キラー」の別名もある。 

 

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中国、南シナ海に弾道ミサイル4発発射 「空母キラー」で米けん制

2020年08月27日 11時49分23秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

【ワシントン、北京時事】米国防当局者は26日、中国軍が中国本土から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射したと明らかにした。

 中国は25日に米軍偵察機が軍事演習区域を飛行したと非難したばかり。今回の発射には中国の南シナ海領有権主張を否定し、経済・軍事両面で対中圧力を強めるトランプ米政権をけん制する意図があるとみられる。  

当局者によると、弾道ミサイルは南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾した。「ミサイルの種類については現在分析中」という。

 これに先立ち、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は中国軍が対艦ミサイル2発を発射したと報じていた。それによると、中国軍は26日午前、内陸部の青海省から「東風26」(推定射程4000キロ)、沿岸部の浙江省から「東風21D」(同1500キロ)を1発ずつ発射。中国軍筋は「米軍が頻繁に軍用機や艦艇を南シナ海に派遣し、潜在的危機を高めていることに対する中国の返答だ」と警告した。

 東風26は米領グアムを射程に収めることから「グアムキラー」と呼ばれ、対艦攻撃も可能とされる。また「海上の大型艦艇を正確に攻撃できる」(中国国防省)といい、東風21Dと並んで「空母キラー」の別名もある。 

 

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パトリックと本を読む:絶望から立ち上がるための読書会

2020年08月27日 10時54分29秒 | 社会・文化・政治・経済

ミシェル・クオ (著), 神田 由布子 (翻訳)


読書によって「人は予測を超えた存在になれる」

人生と社会のどん底から抜け出すための読書会

罪を犯したかつての教え子を救うために何ができるか。

読書の喜びを通して、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添った法律家の記録。

ハーバード大学を卒業した著者は、ロースクールへ進む前に、アメリカ南部の最貧地域の町で2年間、ボランティアの教師となることを決める。だが、劣悪な環境で育った黒人の生徒たちに読書を通じて学ぶ楽しさを教え、誇りを持たせたいという著者の理想は、最初からつまずく。読書以前に、生徒たちの読み書き能力は年齢よりはるかに劣っていたのだ。自治体に予算がなく人々に職のない小さな町で、生徒は将来を思い描けず、学校は生徒を罰することしか考えていない。それでも著者の奮闘の甲斐あって生徒たちは本に親しみはじめるが、当局の方針によって学校が廃校になってしまう。
ロースクールへ進んだ著者はある日、もっとも才能のあった教え子、パトリックが人を殺したという知らせを受ける。数年ぶりの彼は読み書きもおぼつかず、自分が犯した過ちに比べて重すぎる罪に問われていることが理解できていなかった。かつての聡明さを失った姿に衝撃を受けた著者は、拘置所を訪ねてともに本を読むことで、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添おうとする。同時にそれは、ひとりの教師・法学生の自己発見と他者理解をめぐる、感動的な記録ともなった。

[目次]
序章

第一部
第1章 ア・レーズン・イン・ザ・サン
第2章 自由に書いてみる
第3章 次は火だ

第二部
第4章 イワン・イリイチの死

第三部
第5章 罪と罰
第6章 ライオンと魔女と衣装だんす
第7章 天の衣を求める
第8章 フレデリック・ダグラス自叙伝

第9章 有罪を申し立てる
第10章 晩春のポーラに

第四部
第11章 イースターの朝

参考文献
謝辞
訳者あとがき

内容(「BOOK」データベースより)

拘置所の中で、人としての尊厳を取り戻す。
もっとも才能のあった教え子の、かつての輝きを失った姿に衝撃を受けたミシェルは、ともに本を読むことで、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添おうとする。
ひとりの教師・法学生の自己発見と他者理解をめぐる、感動の記録。
 
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
クオ,ミシェル
ミシガン州生まれの台湾系アメリカ人。ハーバード大学卒業後、アーカンソー・デルタのオルタナティブ・スクールで二年間、英語を教える。ポール・アンド・デイジー・ソロス研究奨励金授与財団フェローとしてハーバード・ロースクールに進学、カリフォルニア州オークランドのNPOで移民のために法的支援の仕事につく。第九巡回区連邦控訴裁判所での法修習生の経験をへて、現在はアメリカン・ユニバーシティ・オブ・パリスで人種・移民問題や法律を教えている。
『パトリックと本を読む―絶望から立ち上がるための読書会』が初の著作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
 
"『私が本を読むのが好きな理由、わかる?それはね、本がかっこつけてないから』生徒たちが耳を傾けている。これは効いている。『本を読むと、人の心の声が聞こえてきます』私は続ける。『とんでもないことをしたりする人でも、その人がどう感じているのかわかる。その人の心の中で起きていることが理解できるようになる』2020年発刊の本書は【読書を通じた対話や学び】が魅力的に描かれた一冊。

個人的には読書会の主宰もしていることから『絶望から立ち上がるための読書会』というサブタイトルにひかれて本書を手にとりました。(結果として複数で輪になって感想を述べあう。いわゆる【私がイメージした読書会】は本書にはでてきませんが)

さて、そんな本書は台湾系アメリカ人女性である著者がハーバード大学を卒業後、理想に燃えてミシシッピ川畔のさびれた町ヘレナ、貧困地域の黒人ばかりの底辺校で【読書を通して文学や歴史を教えよう】と奮闘、工夫を重ねて生徒たちと信頼関係を築くのに成功するも、著者がさらなるキャリアアップを求めてハーバード・ロースクールに行くために学校を離れた途端にバラバラになってしまい、中でも、もっともお気に入りで優秀な生徒であったパトリックは犯罪を起こして収監されてしまうわけですが。

最初に印象に残ったのは、いわゆる【社会問題や人権問題に意識の高いエリート】である著者のしかし飾らず、また挫折や失敗にめげずに生徒たちに教師の時はもちろん、元教師になっても【対等に向き合おうとする姿】でしょうか。そして向き合い【立場が違っても共有できるものとして】著者は常に『読書』を選択していくわけですが。その結果おきる教え子たちの劇的な変化の様子は映像的な美しさすらあって感動的です。

また、著者自身は移民二世としてアメリカ人として
の自覚をもっているものの、そんな事には関係なく無遠慮に自分に向けられるアジア人差別、またアメリカの歴史には白人と黒人の話ばかりで【アジア人が存在しない】とマイノリティさを感じたことから、かっての黒人人権運動の指導者達、キング牧師やマルコムXといった人物に心境を重ねていくのが、想像するしかできなくも新鮮に感じました。

読書を通した『何かしらの学び』に関わっている誰か。あるいはアメリカ人エリート学生のキャリア選択に対する考え方に興味ある方にもオススメ。
 
 
 
台湾系アメリカ人の著者は、ハーバード大学卒業後、同ロースクールに進学するまでの2年間、(アメリカで最も南部的な地域と言われる)ミシシッピ・デルタの教育困難校で教鞭を執る。パトリックはその時の教え子の中でも際だって成長を遂げた生徒だったが、著者が学校を去った後、ドロップアウトし、人を刺して死なせてしまう。著者は、いわば自分への宿題をやり遂げるために、就職を7か月先送りにして、南部に戻り、拘置所にいるパトリックと本を読みはじめる…。
 読書の物語であり、学ぶことの物語であり、自らのアイデンティティへの自問の物語でもあり、米深南部の黒人の物語でもある。
 本が人を育てることには私も確信を持っているけれど、それでも本書に描かれるパトリックの成長の速さは驚異的だ。逆に言えば、そのように優れた資質をもつ生徒ですら、貧困と差別は押し潰し、覆い隠してしまうということなのだろう。
 情熱や愛情に裏付けられた著者の行動も驚くべきものだが、それでも(いや、それゆえにか)パトリックのように深く関われたのは彼1人だったのだなと思う。他にも「クラック漬けのホームレス」になった元生徒のように、彼女の支援があれば、もしかしたら違う人生を歩めたかもしれない人はいたのに。1人の人間が「変える」ことのできる人数には限りがある(MLKやフレデリック=ダグラスのような偉人を除けば)。
 だからこそ、個人の努力や支援とは比べものにならないくらい強く、多くの人びとの人生/生活を規定してしまう、不平等で正義を欠く社会構造や不正義に、著者の怒りは向かうのだろう。
 
 
読書は何のためにするのか。読書は役に立つのか。こういった問いかけは少なくない。
本書は、著者が読書を通じて、多くの教え子たちに意欲を持たせたこと、その中で最も才能を示していたパトリックが、犯罪を犯したことで一度は失った聡明さを取り戻す過程を描いている。
著者は台湾系アメリカ人。両親の期待を背負いハーバード大学に進学したものの、ロースクールに進学するのを保留し、貧困地域であるヘレナの底辺校で2年間の教職に就く。

全体は3部に分かれており、第1部が底辺校での日々とそこを去るまで、第2部はロースクールで卒業が近づいたころにパトリックが殺人を犯したことを知り、再びヘレナに戻る決心をするまで、第3部はパトリックとの面会の日々、そのなかで本を通じての交流などである。
「訳者あとがき」に書かれているが、映画のようなシーンがいくつもあるし、全体としても映画やドラマのように感じられるが、著者の実体験だ。教え子たちのやる気を引き出したこと、読書を通じてパトリックを立ち直らせたこと、どちらも感動的である。なかでも、ロースクール卒業後、危機的状況にある多くの人びとのために働くことを決意したものの、それを先延ばしにして、パトリックのためにヘレナに戻ることを選択したのは、卒業までいると言ったのに両親の反発に負けてロースクールに進学してしまった後ろめたさがあったのかもしれないが、それでも胸を打つ。

パトリックのように才能ある人を蝕む貧困と無知による悪循環には怒りを覚えるが、それでも著者のような人がいることに救いを覚える。他人の人生を変えることは難しいし、できたとしても怖い部分もある。しかし、そこに勇気をもって踏み出した著者、それに応えたパトリックが見出したものは、とても尊いものではないだろう。
 
 
 
まず本の厚さに圧倒された。でも読み始めたらぐいぐいと引き込まれていって最後の方ではもっと続けばいいのにと思っていた。

まったく知らなかったアメリカの奴隷制度の歴史、日系アメリカ人の話、思いがけず出てきた俳句、外国の詩…情報量が多くて読み終えた今もまだボーっとしている。

パトリックが読書によって成長していく様子も感動的だが著者が小さなことも見落とさず自分もまた違った角度からさまざまなことに気づいていき、読者の私たちにも問題定義をしてくれているところが素晴らしいと思う。

パトリックの状況は過酷だが、二人が段階をおって読書による学びと対話を深めていく場面は新鮮で、こちらまでワクワクした。画一的な学校の授業ではなくマンツーマンでレクチャーを受ける効果について考えさせられた。出会いということについても。

実際に貧困地区のデルタへ行き教職についたことはもちろんだが、きれいごとだけではなく現実をしっかり見つめてここまで書くということは著者にとってもなかなかたいへんな作業だったと思う。真摯で行動力があり、なおかつあたたかい著者の人柄はあとがきにある交遊関係の記述からもうかがえる。

ご両親の描写にも親子の葛藤はあるものの優しさが感じられ、重いストーリーの中でお二人が登場するとほっとした。
著者の誕生日にイチゴのショートケーキを作ってくれるお兄さんもキュート。うらやましい。

近いうちにもう一度読み直したい。
イェーツの詩も読んでみたいと思った。
 
 
 
 
 

 


閲覧注意…『進撃の巨人』の元ネタになったとも言われる衝撃事件

2020年08月27日 10時43分45秒 | 事件・事故

本当にあった封印事件②
長江 俊和映像作家
小説家

我々人間は、「禁じられたもの」に魅力を感じてしまう習性がある。あまりにも残虐なため封印された事件があると聞くと、どうしても気になってしまう。禁じられているのだが、「見たい」「知りたい」という欲求が生じるのが、人間の性(さが)なのだ。

だから人々は物語を生み出したのだと思う。神話や小説、映画などのフィクションのなかに、本当にあった禁忌を潜めて、渇望を満たしたのである。次に紹介する事件もその事例の一つだ。あの『進撃の巨人』(諌山創「少年マガジン」掲載、講談社)の元ネタになったとも言われている。


ソニー・ビーン事件

15世紀はじめのスコットランドの荒野で、旅人たちの行方が、次々と途絶えてしまという事件が起きた。失踪事件は20年間も続き、消えた旅人は1000人以上にも上ったという。この事態を深刻視した国王は、手当たり次第に疑わしい者を捕らえては処刑を繰り返した。しかし、一向に失踪者の数は減ることはなかった。

ある日、街に馬に乗った一人の男が現れる。男は命からがら、逃げ延びてきたという。そして彼の証言により、謎に満ちた大量失踪事件の真相が明らかとなった。

男は妻と二人、一頭の馬にまたがり、村祭りから帰る途中だったという。海に近い岩場の道を走っている時、物陰から何者かが現れた。次々と姿を現す異形の者たち。彼らは普通の人間とは違っていた。体の大きさもまちまちの、野蛮人のような風体だったという。男は剣を抜いて応戦するが、妻が捕まり、馬から引きずり下ろされた。

彼らは一斉に、妻の身体に群がってゆく。彼女の喉元を刃物で切り裂き、一人が鮮血をすすり始めた。腹を裂いて、内臓を取り出している者もいる。男は必死に抵抗するが、やがて力尽きてしまった。覚悟を決めたその時である。祭り帰りの集団が、こっちに向かって歩いてきた。彼らは慌てて、妻の死体を引きずりながら、その場から逃げ去っていったという。

男の証言をもとに、国王が軍隊を率いて一帯を捜索する。そして、彼らの住処とおぼしき、海岸沿いの洞窟を発見したのである。

すさまじい臭気が漂う洞窟内。天井には、人間の腕や足、胴体が吊されている。樽に詰められ塩漬けされた人肉もあった。獣のようなうなり声がして、奇怪な集団が襲いかかってくる。だが武装した捜索隊の敵ではなかった。彼らはたちまちのうちに制圧されたのである。

次々と旅人たちと襲い、その人肉を食糧にしていた奇怪な集団。洞窟に住み着いていた異形の者は48人。驚くべきことに、その集団は全員、血のつながった家族であることが分かった。彼らの父親の名はソニー・ビーンという。

生垣作りや溝掘りの一家に生まれたソニー・ビーン。だがある日、あくせく働くことに嫌気がさして、家を飛び出してしまう。そして、一人の女と知り合い、洞窟で暮らすようになった。町や村へは出向かず、洞窟の中だけで生活し、女と性を貪り合う日々。二人は一向に働こうとはせず、常に飢えに苛まれていた。

そこでビーンは、ある方法を思いついた。道行く旅人を襲い、金品を奪い去るのだ。その金で食糧を買えばいい。こうして、殺戮を繰り返すことになった二人。

襲った相手の命は必ず奪い、遺体は必ず洞窟まで持ち帰った。自分たちの犯行が、絶対にばれないようするためである。最初は強奪した金品で食糧を買っていたのだが、やがてそれもすぐに底を尽きてしまった。

そこで二人は、襲撃した旅人の人肉を食べることにしたのだ。一度に食べきれない分は干物にしたり、海水につけて貯蔵した。

近親相姦繰

そんな生活が、25年も続けられたのだ。性欲が旺盛だったという二人は、8人の息子と6人の娘を儲けた。さらに子供たちが近親相姦を繰り返し、孫息子が18人、孫娘が14人と、ビーンの一家の数は25年の間に、計48人の家族となっていた。

家族の人数が増加するにつれ、人殺しの回数も増えてゆく。空腹の子供たちの、腹を満たしてやらなければならないからだ。一家が25年間で殺害した被害者の数は、1500人以上にも及んだという。

捕らわれたビーンら一家は、全員に死刑が宣告された。殺された旅人たちの報復のため、彼らは残虐な方法で刑に処されることになった。女たちはこれを見るよう強制され、その後、生きたまま火に炙られ、焼き殺された。ソニー・ビーンとその家族たちは、命果てるまで、呪いの言葉を吐き続けたという。

ソニー・ビーン事件は、当時の公文書などに記録が残されていない。歴史家の中には、この事件は現実に起こった出来事ではないと考える者もいる。だが記録が残っていないのは、あまりにも残虐な事件だったため、当時のスコットランド王朝が全ての記録を削除し、封印したという説もある。

バニシェフスキー事件

この事件も、ソニー・ビーン事件に負けず劣らず、胸くその悪くなる事件である。アメリカの作家ジャック・ケッチャムが、この事件をもとに、『隣の家の少女』という恐怖小説を上梓している。

1965年9月、アメリカ・インディアナ州で暮らすバニシェフスキーは、シルヴィア(当時16歳)とジェニー(当時15歳)の姉妹を預かることになった。バニシェフスキーは7人の子供を育てる、35歳のシングルマザーである。

当初姉妹は、バニシェフスキーらと友好的な関係を築いていたのだが、ある日その状況は一変する。姉妹の養育費の支払いが、期日までに振り込まれなかったのだ。「性根をたたき直してやる」。そう言うと、バニシェフスキーは姉妹を殴打した。

二人の養育費は1日遅れて振り込まれたのだが、姉妹への虐待は終わることはなかった。彼女は自分の7人の子供たちにも、二人に制裁を与えるよう指示する。子供らは母に従い、姉妹の身体をコンクリートの壁に打ち付けたり、階段から突き落とすなどの行為を加えるようになった。

ある日、シルヴィアにボーイフレンドがいると知ると、バニシェフスキーは烈火の如く怒り出した。妊娠していると決めつけ、性器を何度も蹴りつけた。淫売と罵り、何時間も説教が続いたという。そのうち、近所の子供も面白がって、シルヴィアの虐待に参加するようになった。さらに、妹のジェニーにまで姉の虐待に参加するように強要した。

バニシェスフスキーの虐待は、さらにエスカレートしてゆく。シルヴィアの服と下着を脱がせ、ストリップを踊らせた。全裸の身体に煙草の火を何度も押しつけたこともあった。彼女の身体は傷だらけで、目も当てられないような姿となる。

バニシェフスキーは、彼女を地下室に閉じ込めることにした。入浴と称して、熱湯をかけて、火傷した箇所に塩を塗り込んだ。食事をほとんど与えず、排泄物を食べるように命令したこともあったという。 

妹のジェニーは、バニシェフスキーの目を盗んで、もう一人の姉のダイアナに助けを請う手紙を書いた。手紙を読んだダイアナは、バニシェフスキーの家を訪れる。だが、家中探しても、シルヴィアの姿が見当たらない。不審に思いバニシェフスキーに聞くと、「シルヴィアは悪い子だった。叱ったら家を飛び出して、どこかへ行ってしまったんだ」と言う。

ダイアナは、ソーシャルワーカーに相談することにした。依頼を受けたソーシャルワーカーは、バニシェフスキーの家を訪問する。ジェニーに姉の行方を尋ねるが、彼女は「バニシュエフスキーの言うとおりだ。姉は叱られて、家を出て行った」と言う。

もちろんジェニーの証言は真実ではなかった。「本当のことを言うと、姉のようになる」と、バニシェフスキーから脅迫されていたのだ。だが、ソーシャルワーカーはそのことが見抜けず、調査を終了させて帰ってしまった。

「私は淫売です」

私をここから連れ出して

姉妹が下宿を初めて、3ヵ月以上が経過。バニシェフスキーは、シルヴィアがベッドで失禁したことに激怒する。腹に真っ赤に熱した針を押し当て、『私は淫売です。そのことを誇りに思っている』との文字を焼き付けた。

さらに両親に宛てた手紙を書かせた。手紙の内容は、「セックスや盗みを繰り返す、自分の悪行を懺悔する……。悪い少年たちに連れ去られ、幾度も殴られ、顔や身体に字が残り、腹部に焼き文字も入れられた」。もちろん、その内容はでたらめである。

 

数日後、シルヴィアは息を引き取った。すぐにバニシェフスキーは通報し、警官が駆けつけた。シルヴィアの書かせた手紙を、これ見よがしに差し出して言う。「この子は淫売なんだよ。悪い男に連れ回され、ひどい目にあって帰ってきた。こうなることは自業自得だったんだ」。

だがその時、ジェニーが勇気を振り絞って、警官に告白した。「私をここから連れ出して。何でも話すから」。

ガートルード・バニシェフスキーは殺人容疑で逮捕された。その後裁判が開かれ、無期懲役の判決が下される。それから5年後、バニシェフスキーは控訴し、減刑が認められ、1985年に出所。事件から25年後の1990年に肺ガンにより死亡した。

彼女の訃報を新聞記事で知ったジェニーは、満面の笑みを浮かべて言ったという。「いいニュースだ。忌々しいバニシェフスキーの婆さんが死んだ。私は満足だよ」

※参考文献 
『小作人とアザラシ女――スコットランドのいいつたえ』ジュディ・ハミルトン 先川暢郎・橋本修一訳(春風社)
『殺人百科(新装版)』コリン・ウイルソン パトリッシア・ピットマン 大庭忠男訳(彌生書房)

71人の女性を殺害した男…ゲイリー・リッジウェイの歪んだ素顔

2020年08月27日 10時28分35秒 | 事件・事故

「エゴ」や「敵意」の克服


8/27(木) 6:01配信

現代ビジネス
71人の女性を殺害した男

 「1982年から1998年にかけて、少なくとも71人の女性を殺害した」

 「正直、本当に殺した数は多すぎて覚えていない」

写真:現代ビジネス

『進撃の巨人』の元ネタと言われる衝撃事件…

 これは、数多くの罪なき女性を殺害したゲイリー・リッジウェイの証言だ。最初の被害者数名の遺体がワシントン州のグリーン川で発見されたため、彼は「グリーン・リバー・キラー」というニックネームで呼ばれている。2001年に逮捕されるまで、数多くの女性が犠牲になった。

 驚くべきことに、彼は自分が殺した被害者の遺体と「性交」したとも話した。連続殺人犯の中には、「セックス」への執着心が異常に高かったり、「対人恐怖症」を抱えていたりする者も多くいる。彼らにとって、「死体との性行為」はさほど珍しい行為ではないのだ。

 逮捕後、ゲイリー・リッジウェイ本人はその理由について、「死体とのセックス自体から新たな喜びは得られないが、生きている別の売春婦を見つけて殺すよりもリスクが低く、安全だった」と語ったという。

 前述の通り彼は2001年に逮捕され、被害者は48人まで特定された。しかしリッジウェイのように数多くの犠牲者を出した連続殺人犯には、余罪がある可能性が非常に高い。最終的に彼が殺したとされる女性は「49人」に上り(※)、被害者数が明らかなアメリカのシリアルキラーの中でもトップクラスだ。

 そのうえ本人が自白した被害者の数は、冒頭の発言の通り「71人」である。ここまで悲惨な事件を起こした「グリーン・リバー・キラー」は、どのようにして生まれたのだろうか。

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(※):49人目の被害者については、リッジウェイ本人が犯行を認めているものの、遺体の一部しか発見されておらず身元特定には至っていない。
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抑圧的だったゲイリーの母親

被害者の遺体の捜索に同行したゲイリー・リッジウェイ[Photo by gettyimages]

 1949年、ユタ州ソルトレイクシティにて、ゲイリー・リッジウェイは3人兄弟の次男として生まれた。彼の家は「閉鎖的な家庭」で隣近所との付き合いはほぼなかった。こうした外部とのつながりが薄い家庭は、子供にとって「密室」だと言える。そのような環境では、親の行為が子どもの人格に大きな影響を与えることは否定できない。

 ゲイリーの母親は気性が荒く、バスドライバーの父親との間に言い争いが絶えず、夫の頭に皿を叩きつけることもあったという。彼女は息子に対しても支配的で、その高圧的なプレッシャーからかゲイリーは夜尿症が止まらず、その度に母親に直接陰部を洗われた。彼がおねしょで濡らした布団を、わざと同級生から見えるよう外に干していたともいわれている。

 また、彼女は、ボディーラインがよく見えるドレスを着て、派手なメイクでよく外出していた。幼いゲイリーにとっては、その姿は「売春婦」のように映っていたのかもしれない。逮捕後、彼は心理鑑定士に対して、母親の「性的な魅力」と、おねしょの度に母に陰部を直接洗われる「侮辱」への「怒り」から、彼女に「殺意」を覚えたと漏らしている。

 彼が初めて人を殺そうとしたのは16歳の時だった。襲いやすい6歳の男の子を森の中に連れ込み、怒りを発散するためにナイフで刺したのだ。傷はあばら骨を貫通し肝臓にまで届くほど深いものだったが、少年は奇跡的に一命を取り留めた。犯人を特定できなかった警察は、面倒に思ってこの事件を公の記録にすら残さなかったのではないか、と言われている。

 彼はワシントン州の高校を卒業した後に最初の妻と結婚し、20歳で海軍に入隊。1969年にベトナム戦争へと派遣されたが、帰国後には離婚している。1973年には2人目の妻と結婚し、75年に一人息子のマシューをもうけた。しかし彼女に1日に複数回セックスを求め、行為中に首を絞めたり紐で縛り挙げたりすることが原因で、1981年には2度目の離婚が成立した。その後、彼の凶行が始まったのだ。

逮捕されるまでの20年間

グリーン川下流の様子[Photo by gettyimages]

 ゲイリーの犯行のピークは、1982年から84年に集中していた。多い時は1ヵ月に3~4回のペースで殺害し、1983年には24人もの女性が殺されている。彼は20歳に満たない若い女性を狙い、いつも決まったルーティーンで犯行に及んだ。

 まず売春で生計を立てる女性が多い地区で、相手を物色する。ターゲットを決めると、時には自分の息子の写真を見せるなどして相手を安心させ、車に乗せる。車内で性行為を始めて数分後、後ろから両手かひもで「絞め殺す」のが定番だった。時にはターゲットを自宅に呼んで殺すこともあれば、人目につかない場所まで運転してから殺害することもあったという。

 大概はグリーン川周辺や国際空港であるシアトル・タコマ空港近隣のうっそうとした林に死体を遺棄したが、場合によっては、南キング郡の森の中の「お気に入りの場所」に隠すこともあった。前述の通り、彼は殺害後も隠し場所に戻っては、被害者の死体との性行為を繰り返していた。

 事件を担当したワシントン州キング郡の当局は、「グリーン・リバー・キラー」専従の捜査タスクフォースを結成し、早々からリッジウェイを容疑者だとマークしていた。しかし彼は警察によるポリグラフテスト(嘘発見器)に合格し逃げおおせている。

 行き詰った捜査本部は、こともあろうにテッド・バンディーにアドバイスを求めている。テッド・バンディーとはアメリカ史上もっとも有名な連続殺人犯で、やはり被害者の遺体と性行為を繰り返したことで知られており、時には遺体が腐敗するまで性交することもあったという。

 しかし「犯人は必ず自分が殺した死体と性交するために、遺棄現場へ戻って来るはずだ」というバンディーのアドバイスも空しく、犯人は捕まらなかった。1987年には、ゲイリーの唾液と髪の毛のサンプルを採取するところまで至ったものの決定打にはならず、捜査は八方塞がり状態だった。

 殺人のピークが過ぎた1988年、ゲイリーは3番目の妻と結婚している。彼女はあまりニュースを見なかったため「グリーン・リバー・キラー」のことはよく知らなかったらしい。2人の婚姻関係は、逮捕後まで続いた。

 ある女性作家が、逮捕された後のゲイリーに面会したところ、「僕は3番目の妻を僕は本当に愛していたんだ。だから彼女と一緒になってからは3人しか殺してない」と、歪んだ愛情を吐露したという。

 2001年、警察は採取したサンプルのDNA鑑定結果に基づき、トラック工場で勤務中のゲイリーを逮捕した。容疑は「1982年~83年に行われた4件の殺人」で、被害者の体内に残された精子のDNAが、彼のものと一致したからだ。また彼が働く工場で使われていた特殊なスプレーの成分が決め手となって、さらに3件の殺人で逮捕された。

 しかし警察は、この7人以外の殺人事件について決定的な証拠をつかめなかった。そこで「49件の殺人を認める代わりに、死刑ではなく終身刑にする」という司法取引が結ばれ、彼は起訴されたのだ。

 「71人を殺害した」と話しているにもかかわらず、ゲイリー・リッジウェイは余罪を追及されることなく、全米でトップクラスのセキュリティレベルを誇る「フローレンス・ハイセキュリティ刑務所」にて今もノウノウと生活している。

なぜ女性ばかりを殺害したのか?

被害者の遺体を捜索する捜査員たち[Photo by gettyimages]

 ゲイリー・リッジウェイは、なぜ「性を職業とする女性」を71人も殺害したのだろうか? 私は長年「置かれた環境がどういった行動を引き起こすか」という、「環境と行動パターンの関係」を研究してきた。彼のような攻撃的人格は、「遺伝」と「環境」の両方が複雑に絡み合って形成される。そして何か現実の出来事が引き金(ストレッサ―)となって、連続殺人のような「具体的な暴力行為」が始まるケースが多い。

 ゲイリー・リッジウェイが「連続殺人を起こした主因」が「抑えきれない性的渇望(Lust Murder)」であることは間違いない。産まれたばかりのヒヨコが最初に目にした動くモノを親と思い込むのと同じように、臨界期(0~4歳、特に脳とそのシナプスが形成される0.5~1.5歳)に性的要素を「刷り込まれる」と、「性への執着」は生涯その人格の一部に組み込まれることもある。

 ゲイリーの場合、「肉親である母親への性的興奮」や「母の手による自分の陰部への直接的な接触」といった性的な刺激だけでなく、「母親による父親への暴力行為」、「母親の抑圧的・支配的言動」という暴力性も日常的に目にしていた。

 もし仮に「幼少期からの性的刷り込み」と「攻撃性・暴力性」が融合してしまうと、性的欲望が芽生える度に暴力性と結びつく。こうした強い暴力性を帯びた性欲は、たとえ相手が死んでしまった後であっても、「その一線を越えて性交したい」という「歪んだ性欲」へ発展してしまう可能性がある。

 ゲイリーにとって殺害した「売春婦」たちは、自分に怒りを植え付けた「母親」のイメージと同化していた。極言すれば、殺害された71名は、ゲイリーが直接立ち向かえなかった母親の身代わりだったのだろう。

 またドライバーだった父親も、運転するバスに乗ってくる彼女たちを忌み嫌っていたという。その結果、ゲイリーの心の中では、「売春婦は社会にいないほうがよい」という「社会的正当化」が成立してしまった可能性が考えられる。幼少期の家庭環境が原因となって、母親による「暴力性」と「性的欲望」が融合し、「社会的正当化」を経て、「性的殺人」という形で現実に何度も何度も繰り返されたと言えるだろう。

凶行へと至った彼の心理
 ゲイリー・リッジウェイの証言から見えてくるのは、彼が「何の後悔も不快感もなく71名を殺害した」という事実だ。多くの人間はそもそも他者を殺せないし、仮に殺したとしても後悔の念は非常に大きい。彼はなぜあのような凶行が可能だったのか? その答えは、彼自身の心が、すでに幼少期の段階で「壊れていた」からである。

 前述の通り、幼少期の彼は暴力的な母親から抑圧されて育った。元妻が語ったところでは、母親は生活の他の面でも、ゲイリーに何一つ満足していなかったという。幼少期に愛情の源泉であるはずの母親から「自分がこの世に生きていること」自体を否定され、「自分の生」を肯定的に受け入れることができない人格が形成されていたのだ。

 そうなった人間の中には、自身を「醜い」と思い込んでしまう者もいる。かわいらしい子犬や楽しそうに笑う同級生たちが、自分の対極にいる「破壊願望の対象」だと見えることもあるだろう。

 母親から「自己の存在」そのものを否定され続けたゲイリー・リッジウェイは、他者を71回も否定(殺害)し続けなければ、生きていけなかったのではないか。そして、その暴力性は性的欲望と結びつき、また、母親を思い起こさせる女性と出くわす度に燃え上がったのだろう。これが「グリーン・リバー・キラー」誕生の真相である。

 このような惨劇を二度と引き起こしてはいけない。そのためにも、特に0歳から4歳までの「臨界期」の子供たちが「虐待」や「ネグレクト」されないように、社会全体でしっかりとしたセーフティネットを確立しなければならない。誰もが一度きりの人生を全うできるように。

阿部 憲仁(桐蔭横浜大学教授)

 

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群馬の女性遺体、強殺容疑で再逮捕へ 橋から落としたか

2020年08月27日 10時25分58秒 | 事件・事故

配信

国道353号の摩耶大橋。遺体は橋から約30メートル下の日向見川で見つかった=2020年8月7日午後9時56分、群馬県中之条町四万、柳沼広幸撮影

 群馬県中之条町で今月上旬に女性の遺体が見つかった事件で、群馬県警は、死体遺棄容疑で逮捕した男女が女性を殺害した疑いが強まったとして、27日にも強盗殺人容疑で再逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材でわかった。

【写真】遺体が見つかった日向見川に架かる摩耶大橋=2020年8月7日午後9時59分、群馬県中之条町四万、柳沼広幸撮影  

男女は、住所不定の会社員小船治(34)と埼玉県久喜市の無職山本結子(30)の両容疑者。

 捜査関係者によると、両容疑者は共謀して8月1日未明ごろ、中之条町四万(しま)の日向見(ひなたみ)川に架かる摩耶大橋近くの駐車場で、川崎市多摩区の清野(きよの)いつきさん(48)に暴行を加えて所持品を奪い、橋の上から投げ落として殺害した疑いがある。死因は外傷性ショックで、心臓破裂と肺挫傷が確認された。橋から生きたまま投げ落とされたとみられるという。  

県警は、SNSで知り合った両容疑者と清野さんが7月31日に同県高崎市のJR高崎駅で初めて会い、そのままレンタカーで現場へ移動したとみている。

朝日新聞社

 

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「歴史好き」がいずれ来るコロナ後の時代を語る

2020年08月27日 10時01分03秒 | 社会・文化・政治・経済

出口治明・権丈善一「今は重要な準備期間だ」

野村 明弘 : 東洋経済 解説部コラムニスト 

2020/08/20 5:10

コロナ禍でさまざまな社会経済の変化が起きているが、歴史的な視点で俯瞰してみることも重要だ


内閣府が17日に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP、速報値)は前期比7.8%減、年率換算で27.8%減と戦後最大の落ち込みを記録した。パンデミック(感染症の世界的流行)によって全世界同時で起こる生活様式と経済の激変には圧倒されるばかりだ。そんな今だからこそ考えてみるべきなのは、何が本質的な変化であり、われわれは何に注目したらよいか、だろう。
「人類と歴史」の視点で情報発信を続ける立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏と、年金、医療・介護など社会保障論の第一人者で歴史通でもある慶應義塾大学の権丈善一教授がオンラインで意見を交わした全2回の対談。初回はリモート化や米中対立など経済全般について語り合った(所得再分配政策と財政問題を扱った後編は8月下旬の公開を予定しています)。
まず時間軸を分けて考えてみよう

――コロナ禍でいろんなことが起こり、不安やストレスを溜める人が多いですね。心を整理する意味でも、コロナ禍とどのように向き合ったらいいですか。

出口 治明(以下、出口) 何十億年も地球に住んでいるウイルスは、20万年前に生まれたホモサピエンスの大先輩。一定の確率で動物を介して人間と出会い、時にパンデミック(世界的流行)が起きることもある。ただ、みんなが感染して免疫ができたり、ワクチンや治療薬が開発されたりして、いつかは必ず終わる。それまでの間は、ウイズコロナの時代として付き合っていくしかない。

手洗い、マスク着用、ソーシャルディスタンシングというニューノーマル(新常態)の3点セット、さらに感染が拡大すれば、ステイホームも仕方がない。ステイホームを基本にしながら、下火になったら少しずつ町に出て行くことしかウイズコロナの時代にはできないと割り切ったほうがいい。

世界中のリーダーにとっては、ステイホームやニューノーマルをどうやって市民に説得するかが腕の見せ所だ。一方でステイホームは、極論すれば仕事をしないことであるため、パート労働者やアルバイトに象徴される経済的弱者にしわ寄せが行ってしまう。したがって、緊急的な所得再分配政策をいかに迅速に行うかが重要になる。

さらに、ステイホームは、医療・介護従事者やスーパーマーケットの従業員などエッセンシャルワーカーの犠牲のうえに成り立っている。それを考えると、そういう人たちへの感謝の気持ちや行動をいかに社会政策の中で設計するかも大切なポイントだ。

ワクチンや治療薬が開発されたアフターコロナの時代になったら、僕の友人の言葉を借りれば、ハグし放題に戻る。人間の意識が「ウイズ」から「アフター」へすぐ戻るかという議論はあるが、コロナを考えるうえでは、ウイズとアフターでは戦略も考え方も異なるので、時間軸を分けて考える必要がある。

権丈 善一(以下、権丈) コロナ禍によって、エッセンシャルワーカーとリモートワーカーとに仕事を分ける考え方が表にできた。相対的にエッセンシャルワーカーのリスクが高まっているわけだが、賃金に対して経済学では、一般に限界生産力仮説、効率賃金仮説に加えて、アダム・スミスが論じた補償賃金仮説というものがある。


権丈善一(けんじょう・よしかず)/慶應義塾大学商学部教授。1962年生まれ。2002年から現職。社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障  V3』など著書多数(写真:尾形文繁)
エッセンシャルワーカーのリスクを賃金でどう補償するかを考えると、市場における自動調整もあるだろうが、医療・介護など公的部門での対応も大きな比率を占めてくる。そのため、将来的には財政との関わりも出てくると考えている。

もう1つ、「リモートワークになると生産性(物的労働生産性)が高まる」と、政府の未来投資会議でも盛んに議論されているが、経済政策との関係でみる場合には、「付加価値労働生産性」で考える必要がある。リモートが増えれば交通費などさまざまなコストが節約され、その節約分はGDPのシュリンクを意味する。これがどう埋められていくのかという話も今後、重要になってくるだろう。シュリンクした経済が相似形で元に戻るとは考えられない。

「必要条件」と「十分条件」で現状を整理する

――リモートワークの拡大は、今後の経済にとってプラス面とマイナス面があるということですね。

出口 今回のステイホームでは、みんながITを活用するなどリモートワークに習熟したことによって、将来の労働生産性が高まるための必要条件が整った。ただし、改革を行う十分条件が必要だ。コロナ禍が終わったら、会社の上司が「みんな早く会社に戻ってこい」と言ったら、結局のところ労働生産性は上がらない。

日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)化は世界に10周遅れで、今回のリモートワーク拡大でもせいぜい5周遅れになる程度だという指摘もある。いずれにせよ、労働生産性の向上は中長期的な可能性としては十分期待できる。

一方で、今年4~6月期のアメリカのGDP成長率はマイナス32.9%と発表されたが、マクロで見たらステイホームは仕事をしないことと同じだから、経済のパイが縮むのは当然だ。今年の世界のGDPがガタガタになることと、今後リモートワークで生産性が上がることは別次元の問題として考えたほうがよい。

権丈 そのとおりだ。そしてさらに将来、GDPが縮小から元に戻っていく過程において、交通関連やオフィスなどへの需要が縮小することによって、その方面ではGDPのパイは完全には戻らないだろう。その縮小分を埋め合わせするような新たな需要が生まれ、そこに生産要素がシフトしていくには、ある程度の時間が必要になるのではないかと思う。シフトを加速する政策を期待したい。

出口 アフターコロナの時代になると、便利だからインタビューは全部リモートになるかといえば、やはり実際に会いたいとか、実際にその場所に行ってみたいといった形で、意外にリアルは強いと思っている。ただし、リモートとのハイブリッド型になるのは間違いない。権丈さんがおっしゃるように、無駄を省いた分が経済全体のシュリンクにつながるが、それで浮いた時間をどう新しいところに振り向けて全体のパイ拡大につなげていくかが重要になる。

――日本銀行のリポートは、オンライン授業導入に伴うコスト低下によって、5月の学習塾業界の授業料が低下したことを指摘しています。大学もリモート化の最前線ですが、教育の世界ではリモート化による経済のシュリンクがすでに起き始めているのでしょうか。

出口 オンライン授業にはそれなりのメリットがあり、みんなが賛成する。だが一方で、それは大学が通信制大学や放送大学になることを意味する。おそらく放送大学の授業料は一般の大学と比べれば、5分の1くらいだろう。つまり、先生方の給与も5分の1になるということだ。放送大学化の行く手には、はたして5分の1のお金で大学の研究教育の場を維持できるかどうかという問題が出てくるだろう。


出口治明(でぐち・はるあき)/立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。2008年にライフネット生命を開業。2018年1月から現職。『生命保険入門 新版』、『人類5000年史 Ⅰ~Ⅲ』、『還暦からの底力』など著書多数(写真:梅谷秀司)
さらに、オンライン授業では講義の巧拙がすぐにわかるので、たとえばある学問ではみんながこの先生の講義をコピーして聴けばいいということになってしまう。その先生の年収は予備校のカリスマ講師並みに上がるだろうが、それ以外の先生は全部職を失うことになりかねない。大事なのは、本当にこういったことをみんなが望んでいるかどうかということだ。

僕は、大学は場所のビジネスであって、お互いに冗談などを言いながら励まし合い、学び合う場所にお金を払っているので、アフターコロナの時代もみんながキャンパスに集まってくることを前提に考えるべきだと思っている。知識を与える一部の教育にはオンラインを使ってもいい。でも、オンラインで浮いたお金や時間を使って、たとえばゼミナールや論文指導などを徹底する。そのように持って行かないと、豊かな大学生活は送れないと思う。

われわれは何から「気づき」を得ているか

権丈 今日は私も、出口さんからこれからの大学がどうなるのかを個人的に聞きたかった(笑)。世の中の普通の人たちが「生産性」という言葉を日常用語にするほど、社会を挙げて業務効率化に邁進している。だが、コミュニケーションなども重要だとなれば、確かにオンラインでは代替しにくい。

出口 次のような話がある。国際的な学会に出席すると、キーノートスピーカーは最先端の研究者だ。しかし、学会に出た人にとって何が「気づき」になったかといえば、実はキーノートスピーカーの話ではなく、昔の同僚とのおしゃべりやランチ、ディナーでの馬鹿話だったりする。そうした体験から、実はわれわれはものすごく大きな気づきを得ている。

つまり、オンライン授業はキーノートスピーカーの発表のようなものだ。本当の気づきや刺激というのは、むしろ同僚とのチャットや会話の中にある。講義そのものはある程度オンライン授業で代替できるが、人間が肉体を持つ3次元空間の存在である以上、講師や学友とふれあうことの刺激のほうがはるかに大きい。これは、人間が学ぶことの基本構造だと思う。ビジネスだったらオンラインでもいいが、教育や学問、研究の分野ではむしろ無駄がものすごく重要になってくる。

――日本銀行のリポートは、オンライン授業導入に伴うコスト低下によって、5月の学習塾業界の授業料が低下したことを指摘しています。大学もリモート化の最前線ですが、教育の世界ではリモート化による経済のシュリンクがすでに起き始めているのでしょうか。

出口 オンライン授業にはそれなりのメリットがあり、みんなが賛成する。だが一方で、それは大学が通信制大学や放送大学になることを意味する。おそらく放送大学の授業料は一般の大学と比べれば、5分の1くらいだろう。つまり、先生方の給与も5分の1になるということだ。放送大学化の行く手には、はたして5分の1のお金で大学の研究教育の場を維持できるかどうかという問題が出てくるだろう。


出口治明(でぐち・はるあき)/立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。2008年にライフネット生命を開業。2018年1月から現職。『生命保険入門 新版』、『人類5000年史 Ⅰ~Ⅲ』、『還暦からの底力』など著書多数(写真:梅谷秀司)
さらに、オンライン授業では講義の巧拙がすぐにわかるので、たとえばある学問ではみんながこの先生の講義をコピーして聴けばいいということになってしまう。その先生の年収は予備校のカリスマ講師並みに上がるだろうが、それ以外の先生は全部職を失うことになりかねない。大事なのは、本当にこういったことをみんなが望んでいるかどうかということだ。

僕は、大学は場所のビジネスであって、お互いに冗談などを言いながら励まし合い、学び合う場所にお金を払っているので、アフターコロナの時代もみんながキャンパスに集まってくることを前提に考えるべきだと思っている。知識を与える一部の教育にはオンラインを使ってもいい。でも、オンラインで浮いたお金や時間を使って、たとえばゼミナールや論文指導などを徹底する。そのように持って行かないと、豊かな大学生活は送れないと思う。

われわれは何から「気づき」を得ているか

権丈 今日は私も、出口さんからこれからの大学がどうなるのかを個人的に聞きたかった(笑)。世の中の普通の人たちが「生産性」という言葉を日常用語にするほど、社会を挙げて業務効率化に邁進している。だが、コミュニケーションなども重要だとなれば、確かにオンラインでは代替しにくい。

出口 次のような話がある。国際的な学会に出席すると、キーノートスピーカーは最先端の研究者だ。しかし、学会に出た人にとって何が「気づき」になったかといえば、実はキーノートスピーカーの話ではなく、昔の同僚とのおしゃべりやランチ、ディナーでの馬鹿話だったりする。そうした体験から、実はわれわれはものすごく大きな気づきを得ている。

つまり、オンライン授業はキーノートスピーカーの発表のようなものだ。本当の気づきや刺激というのは、むしろ同僚とのチャットや会話の中にある。講義そのものはある程度オンライン授業で代替できるが、人間が肉体を持つ3次元空間の存在である以上、講師や学友とふれあうことの刺激のほうがはるかに大きい。これは、人間が学ぶことの基本構造だと思う。ビジネスだったらオンラインでもいいが、教育や学問、研究の分野ではむしろ無駄がものすごく重要になってくる。

――コロナ禍の対応で大学も大変ですが、要はこうした変化をチャンスに変えていけるかですね。

出口 その意味で今回のコロナ騒ぎの中で、最も反省すべき点は秋入学の見送りだと思っている。素直に考えたら、今一番不安に思っているのは高校3年生だろう。僕が政府なら来年から秋入学をやると宣言する。交付金を減らすといえば、大学は全部秋入学に対応するだろう。そして高3には、「春入学、秋入学とチャンスは2回あるから、安心して勉強してや、心配せんでええで」と言えば済む。

小学校から高校までは5年くらいかけて調整すればいい。時間軸を分けて考えればいいのに、メディアを含めて秋入学といえば、小学校から高校まですぐに一律にすべて移行しないといけないといった議論になってしまった。先ほど話したリモートワークと同じで、コロナ禍によって秋入学の機運が生まれて必要条件が整った。

しかし、政府やメディアが大きな方向性(十分条件)を示さなかったため、そうした好機は生かされなかった。やはりリーダーやメディアが改革の未来図を描かないと、十分条件は成り立たない。秋入学は、それを示す証左だ。

なぜ今が重要な準備期間なのか

権丈 出口さんも私も歴史好きだから、われわれにとって今のような新型コロナへの社会様式の調整は歴史の一過程に見えてくる。いずれ来る次の世界に頭を巡らせている。そのときの準備をどう進めるのか。出口さんのリーダーシップやビジョンの話は全部こことつながっている。

出口 歴史を見ると、滅んだ王朝は山ほどあるが、それらは新しい時代に対する準備をしていなかったとか、危機感がなかったわけではまったくない。それなりにみんな改革しようとしていた。ところが、多くはそのスピードが遅かったり、将来に対するビジョンが曖昧だったりしたため、世界の流れに取り残されて滅んでしまった。

極論すれば、日本に陽はまた昇るのか、あるいはこのままズルズルと衰退していくのかは、そのときのリーダーやメディア、市民の動きなど偶然の寄せ集めがどう作用するかで決まってくる。つまり今は、ものすごく大切な時期だと強調したい。

――外に目を向けると、米中対立の深刻化もアフターコロナの大きな変数になってきています。

出口 米中対立や分断化というのは、確かに活字になりやすい。この10年間くらいを見ても、トランプ現象やブレグジットなどがあり、みんな世界は悪化していると錯覚していた。しかし、『ファクトフルネス』という本が世界で約300万部のベストセラーになったのは、「世界は分断などしていない」「結構みんなが協調してうまくやっているよ」という話だったのだ。世界は複雑で、ジグザグに歴史は進んでいくので、分断の方向に振り子が振れたら、協調の方向にも振り子は振れる。歴史は決して、一方向的に進んでいるわけではない。

象徴的なのは、アメリカのEV(電気自動車)メーカーのテスラだ。この4~6月期のアメリカのGDPは約33%減だったのに、同社の利益は順調で4四半期連続の黒字になった。その主因は中国・上海工場の本格稼働だ。米中対立は、かつての米ソ対立とはまったく違う。米ソの対立は、ベルリンの壁に象徴されるようにヒトやモノの交流がなかった。ところが米中では、ヒトもモノもお互いに行きあっている。


ときに誤解も拡散されるオンラインニュースの時代。解説部コラムニスト7人がそれぞれの専門性を武器に事実やデータを掘り下げてわかりやすく解説する、東洋経済のブリーフィングサイト。画像をクリックするとサイトにジャンプします
いま使っているZOOMを作ったのは誰か。エリック・ヤンという1997年にアメリカに出稼ぎに行った中国人の青年だ。米中の関係は、世界のNo.1とNo.2のケンカ、軍事やAI(人工知能)の覇権争いという面はもちろんあるが、「下半身」(経済)ではお互いに結び合っている。そこにさらにトランプ大統領という特殊な個性の要素も入ってきているので、本当の関係を知るには、この3つの方程式を解かなければならない。米ソのようにきれいに上から下までケンカというのではない。読み解くのは結構難しい。

欧州は歴史的な「十分条件」を示した

――コロナによって世界は単純に分断へ進むのではないということですね。

出口 協調の例は、欧州連合(EU)で合意された95兆円の復興基金だ。今までEUのアキレス腱だった財政統合への大きな一歩となるだろう。合意したときは50時間のマラソン会議になったらしいが、コロナ禍という必要条件を、リーダーたちが将来に向けてプラスに転化した十分条件の好例だ。日本の秋入学見送りという悪い例とは対照的だ。

 


脳にとって一番の敵は?

2020年08月27日 09時42分48秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力
▽「受け止め方」
それをどう考えるかという捉え方のこと
見え方 ・ 考え方 ・ 把握の仕方 ・ ものの見方 ・ 受け取り方 ・ 受け止め方 ・ 感じ方 ・ 認識の仕方
▽「大変」とは、「大きく変わる」とも読める。
コロナ禍、大変な時代だからこそ、大きな使命を果たせる。
▽「他の誰かと比べる」のではなくて、昨日の自分よりも今日の自分が一歩成長できているかどうかが大切だと思う。
▽脳にとって一番の敵は?
それは、「ダメだ!」とあきらめること。
脳に「ブレーキ」が、かかるのだ。
脳はもともと「学ぶことが」が好き。
それなのに、「ダメだ」という気持ちによって、自分で自分の脳が動かないように、縛りつけてしまっているのだ。

ホテルで女子高生にみだらな行為、元医師に罰金50万円

2020年08月27日 09時30分55秒 | 事件・事故

配信

横浜区検は、児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で、小田原市立病院の元医師の男性(42)=伊勢原市=を略式起訴した。横浜簡裁は罰金50万円の略式命令を出した。
略式起訴、略式命令はいずれも25日付。  
起訴状などによると、男性は1月12日、静岡県沼津市内のホテルで、高校2年の女子生徒(17)に現金6万円を渡す約束をしてみだらな行為をしたとされる。

神奈川新聞社

 

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深夜0時…女性にわいせつ、駅前の喫煙所で 抵抗され逃走した男、容疑で逮捕「美しくて抑えられず」/県警

2020年08月27日 09時29分11秒 | 事件・事故

配信

埼玉県の岩槻署は26日、強制わいせつの疑いで、さいたま市岩槻区西原、ベトナム国籍の建設作業員の男(21)を逮捕した。

 逮捕容疑は6月29日午前0時5分ごろ、岩槻駅西口の喫煙所内で、市内に住む20代女性の体を触るなどわいせつな行為をした疑い。「女性が色白で美しかったので感情を抑えられず触ってしまった」と容疑を認めているという。

 同署によると、男は喫煙所内で1人だった女性の後方から近づいて体を触り、女性が抵抗したため逃げたという。女性にけがはなかった。

 

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差異を讃え合う

2020年08月27日 06時17分54秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽「積極的な挑戦」
 果敢なチャレンジ ・ 大きな挑戦 ・ 勇猛果敢な挑戦 ・ 思い切ったチャレンジ ・ 大胆なチャレンジ 
▽「今から」「今いる場所から」「自分から」新たな社会を創造していく挑戦を開始する。
▽「真に幸福な人々は平和をつくる人である」
「いくら歳をとっていても、逆にどんなに若くても。私たちはみな、世の中に役に立つはずだ」ケネディ大統領の言葉
▽「失敗は一生の充実を勝ち誇る勝利の証拠である」ヘレン・ケラーの言葉
何ごとにも断じて絶望することなく、たくましく道を切り開く、朗らかな楽観主義。
▽「差異を認めだけでなく、差異を讃え合う」
結局、人間を結ぶのは人間。
「平和の文化は、放っておいては実現しません。自分がつくらなければ。一緒にやるのです」
「私たちた今いる場所からスタートするのです」
「私たちは<今>から逃げることはできません」エリース・ボールディングの言葉
▽「自分自身を信じることだ」
「私たちの内部には、みずからそれを知らない、いいものが沢山ひそんでいる」エマソンの言葉

エリース・ボールディング(Elise Boulding、1920年7月6日 - 2010年6月24日)は、ノルウェーオスロ生まれの平和学者、社会学者

アメリカ・ニュージャージー州在住であった。経済学者ケネス・E・ボールディングと結婚後、5人の子どもを育てながら、平和研究に取り組む。

1969年ミシガン大学で社会学の博士号を取得。ダートマス大学名誉教授。国際平和研究学会(IPRA)の事務局長、国際連合大学の理事などを務めた。

20世紀後半における最も重要な平和運動家の一人とも言われる

2010年6月24日、マサチューセッツ州ニーダムの特別養護老人ホームにおいて、アルツハイマー病の合併症のため89歳で死去


《座間9人殺害から2年》有料面会で「人間は臭い」と言い放った被告の “脳内”

2020年08月27日 04時41分48秒 | 事件・事故

事件殺人事件容疑者

渋井哲也

平成29年(2017年)10月、神奈川県座間市のアパートの一室で、若い男女9人の遺体が見つかった。逮捕された男は白石隆浩、逮捕当時27歳。ツイッターで自殺願望者に言葉巧みに近づき、自室に連れ込む手口だった。
レイプと所持金を奪う狙いがあったと、のちに供述している。
世間を恐怖に陥れたこの事件は、猟奇的殺人として海外メディアも報じた。そんな事件から、まもなく丸2年を迎える。
本稿は、容疑者・白石隆浩と面会をした、ジャーナリスト・渋井哲也によるものだ。

電車とバスを乗り継いで、東京・立川拘置所に行くと待合室でずいぶんと待たされた。面会室に行く前に、ペンとノート以外の荷物をロッカーにしまう。20分ほど待っただろうか、私の順番がきた。金属探知機を通り、「9番」の面会室のドアを開ける。数分ほどすると、白石隆浩被告が目の前に現れた。

「こんにちはーぁ」

 白石被告は黒のジャージを着て、無精髭(ひげ)をはやしていた。神奈川県座間市のアパートの一室で、ツイッターで知り合った男女9人(うち7人は自殺願望があった)を殺害し、その遺体を遺棄した事件の被告人だ。逮捕時、報道で流された顔写真よりもややふっくらしている。その挨拶の仕方から、おどけたような振る舞いに見えた。

「ナンパ」という言葉に笑顔

 私は自己紹介をし、持参した大学ノートに名前を書き、透明のアクリル板に押しつけた。面会希望のとき、名前を書いているので、初めて見る名前ではないはずだが、一度、手紙を出していることを伝えると、男は考え込んだ。

「うーん、手紙が多すぎてあまり覚えていない。あの、ネットナンパについて書いていた? あ、思い出しました」

 私は当初、白石は“ネットナンパ師”ではないかと思っていた。ネット・コミュニケーションの経験と、事件取材などを経て、死にたい感情を持っている女性をナンパするのは比較的、たやすいのではないかと感じていた。自殺やメンタルヘルスをテーマにしたコミュニティーでは、ユーザー同士は心理的距離が近くなる。こうした特性を利用するナンパ師もいると聞く。

 白石は、ナンパというワードが出たせいか笑顔になった。その表情は、9人を殺害し、死体を損壊した犯人と、同一人物であるとは思えない。それだけに、ただただ、事件のことを聞きたいという衝動に駆られる。

 しかし事件のことを聞きたければ、お金を要求してくる、という報道がされている。そんな人間が、ストレートに話を聞いても答えるはずもない。私は、事件そのものを聞けない制約を持ちながら、いかに事件の周辺部を聞き出すかを考えていた。

 男がどのようにインターネットを使ってきたのかを聞き、事件について考えようと思った。拙著『ルポ 平成ネット事件』(ちくま新書)を書くことを前提とした取材のためだ。

ネットナンパは17歳から

 白石がケータイを持ち始めたのは中学2年生のころだったという。このときからインターネットを始めた。今の時代、特に早いほうではない。


白石容疑者、中学の卒業アルバムより
すべての写真を見る
「自分で欲しいと言ったわけではないです。塾へ行くときに、親から持たされたんです」

 その後、親から与えられたケータイで、さまざまなネットサービス、電子掲示板やチャットを使っていく。そしてツイッターとの出会う。白石が事件で利用していたのは、主にツイッターだった。いつから使うようになったのか。

「風俗の斡旋をしていたときに、これは使えるなと思った。相性というよりも集まりがいい。仕事を求める人からの反応がいい。DM(ダイレクトメッセージ)でも“仕事がしたい”とくる。これは犯罪に使えるなと思ったんですよ」

 では、いつからネットナンパを始めたのだろうか。

「17歳からですよ」

「コツはあるの?」

「叩き上げですね。数打つことですよ。お互いに写真を見せ合ったりしていたんです。もう慣れていましたね」

 ナンパをするとき、何かゴールを設定していたのだろうか。

「そのときどきで目標を持っていましたね。エッチしたいだけか、それとも、(風俗店など斡旋〈あっせん〉をする)仕事なのか……。あ、仕事とナンパだけか」

 彼の表情、そこになんの後悔も感じられない。むしろ、懐かしんでるような話し方だ。


スカウトマン時代、白石容疑者を危険視するツイート
 ネットからの出会いが恋愛に発展することはよくある。かつて『ウェブ恋愛』(ちくま新書)でも書いたが、特に共通の趣味や話題があれば、壁は低くなる。しかし白石は、ネットでの出会いで恋愛に発展したことはないと話す。逮捕されたとき、「付き合っていた」という女性がいたことには、「嘘だ」と言いきった。

「元カノとかって嘘ですよ。だって6年間、付き合っている人がいないですから。テレビで証言をしていた女は、あれはやり捨てただけ。一緒にいていい女はいないです」

有料面会「なんでも聞いてください」

 その後、「ネットで出会った人数」や「アカウントはいくつなのか」、「『首吊り士』というアカウントは、なんと読むのか(くびつり・ざむらい、と呼ぶ人もいたために、確認したかった)などの質問には、「それは有料です」と答えるだけだ。

 ここまできて“無料で聞ける質問”は、ほとんどなくなってきた。意図的に、白石が少しだけ答えて、その後の回答は有料としているのではないかとも思っていた。だとすれば、私は、白石に誘導されているようなものだ。しかし、事件への興味から「まだ話したい」「まだ知りたいことがある」とも思ったのも事実だった。

 面会時間の終了が近づき、拘置所職員が合図をした。そして、白石を面会室から連れ出そうとする。そのとき白石が言った。

「これ以上、話を聞きたければ、有料です。もし、希望するなら時間をとります。手紙よりも電報のほうが早いので、スケジュールを書いておいてください。そうすれば、その日は空けておきますので」

 さすがナンパ師。人の心を動かす戦術を知っているのだろう。そのため、私は「もっと話を聞きたい」という感情に、強く支配された。

 拘置所から出るときに、私はお金を払うべきか悩んだ。すでに出版社の中には、有料でインタビューしている雑誌もあったが、まだまだ聞きたいことはたくさんある。

 裁判が始まり白石が“証言”をしたとしても、本当のことを話すかはわからない。それ以前に、傍聴希望者が多いことが想像でき、抽選に当たるかどうかもわからない。ならば、一度だけでも事件の詳細を聞きたい。

 葛藤の末、私は事件の話を聞くことし、拘置所の近くにあるコンビニで現金を引き落とし、再び、拘置所へ戻って白石から提示された額を差し入れした。そして帰宅後、次の面会日を書いた電報を送ることにした。


座間9人殺害事件 現場アパート前の警察車両は増え、捜査員は慌ただしく動き回った

それから約2週間が経過し、私は再び、立川拘置所へと向かった。

 このときは面会室「3番」に通された。ほどなくして白石が現れ、彼は開口一番、「なんでも聞いてください」と言った。

 事件の本題に関する詳しいやりとりは、拙著『ルポ 平成ネット犯罪』に記しているが、いちばん印象に残っているのは、白石はアカウントを5つ持っていたというが、もっとも女性の反応がよかったのが「@死にたい」だったということだ。自殺を考えている人は、話を聞いてほしいという心理があるからだろう。

 いくつものアカウントを使って、自殺をしたい人とつながった白石だが、本人は、少なくとも事件を起こす前、自殺願望はなかったという。被害者に「一緒に死のう」などと言ったのは、あくまでも誘い出す手口だった、ということだ。

「自殺は考えたことはないですね。あるとすれば逮捕後。厳しい時期があったので頭をよぎったんです。でも、立川(拘置所)に移って環境が改善されたんです。ごはんも美味しいので、今は大丈夫です」

 警察の取り調べの中で、「厳しい」と感じるときがあり、自殺を考えたということか。事件で逮捕され、勾留されていれば、心情的にネガティブになることはあるだろう。しかし、自殺が頭をよぎるほどの圧迫を感じることはめったにないはずだが、起こした事件の大きさを考えるとしかたない。
有料面会「なんでも聞いてください」

 その後、「ネットで出会った人数」や「アカウントはいくつなのか」、「『首吊り士』というアカウントは、なんと読むのか(くびつり・ざむらい、と呼ぶ人もいたために、確認したかった)などの質問には、「それは有料です」と答えるだけだ。

 ここまできて“無料で聞ける質問”は、ほとんどなくなってきた。意図的に、白石が少しだけ答えて、その後の回答は有料としているのではないかとも思っていた。だとすれば、私は、白石に誘導されているようなものだ。しかし、事件への興味から「まだ話したい」「まだ知りたいことがある」とも思ったのも事実だった。

 面会時間の終了が近づき、拘置所職員が合図をした。そして、白石を面会室から連れ出そうとする。そのとき白石が言った。

「これ以上、話を聞きたければ、有料です。もし、希望するなら時間をとります。手紙よりも電報のほうが早いので、スケジュールを書いておいてください。そうすれば、その日は空けておきますので」

 さすがナンパ師。人の心を動かす戦術を知っているのだろう。そのため、私は「もっと話を聞きたい」という感情に、強く支配された。

 拘置所から出るときに、私はお金を払うべきか悩んだ。すでに出版社の中には、有料でインタビューしている雑誌もあったが、まだまだ聞きたいことはたくさんある。

 裁判が始まり白石が“証言”をしたとしても、本当のことを話すかはわからない。それ以前に、傍聴希望者が多いことが想像でき、抽選に当たるかどうかもわからない。ならば、一度だけでも事件の詳細を聞きたい。

 葛藤の末、私は事件の話を聞くことし、拘置所の近くにあるコンビニで現金を引き落とし、再び、拘置所へ戻って白石から提示された額を差し入れした。そして帰宅後、次の面会日を書いた電報を送ることにした。

それから約2週間が経過し、私は再び、立川拘置所へと向かった。

 このときは面会室「3番」に通された。ほどなくして白石が現れ、彼は開口一番、「なんでも聞いてください」と言った。

 事件の本題に関する詳しいやりとりは、拙著『ルポ 平成ネット犯罪』に記しているが、いちばん印象に残っているのは、白石はアカウントを5つ持っていたというが、もっとも女性の反応がよかったのが「@死にたい」だったということだ。自殺を考えている人は、話を聞いてほしいという心理があるからだろう。

 いくつものアカウントを使って、自殺をしたい人とつながった白石だが、本人は、少なくとも事件を起こす前、自殺願望はなかったという。被害者に「一緒に死のう」などと言ったのは、あくまでも誘い出す手口だった、ということだ。

「自殺は考えたことはないですね。あるとすれば逮捕後。厳しい時期があったので頭をよぎったんです。でも、立川(拘置所)に移って環境が改善されたんです。ごはんも美味しいので、今は大丈夫です」

 警察の取り調べの中で、「厳しい」と感じるときがあり、自殺を考えたということか。事件で逮捕され、勾留されていれば、心情的にネガティブになることはあるだろう。しかし、自殺が頭をよぎるほどの圧迫を感じることはめったにないはずだが、起こした事件の大きさを考えるとしかたない。
「人間をバラしたことがある人はわかると思う」

 白石が殺害したのは男女9人だが、実際、会ったのは13人だったという。つまり、4人は殺害しなかった。何か「基準」のようなものがあるのだろうか。

「4人のうち1人は男性。お金もなさそうだった。もう1人は、事件を起こした8月から9月まで付き合っていました。部屋にクーラーボックスがあったのを見て逃げ出した女性もいました。残りの1人は10日間だけですが、一緒に住んでいました」

 白石は、ネットで知り合った人とは恋愛関係になっていないと最初の面会で言っていた。矛盾する証言ではないかと考えたが、もしかすると、付き合っていただけ、一緒に住んでいただけで。恋愛とは別なのか。ここはあとで気がついた点で、短い面会時間で確認できなかったことを後悔している。

 事件後、白石は警察に見つからないようにさまざまな工夫をしていたという。これまでの殺人事件で犯人が逮捕されたタイミングを調べあげ、一定の知識を身につけていた。

「それぞれの事件発覚に該当しない方法を実行しようと思ったんです。携帯電話は長い間、放置しないと警察は位置情報を特定できない。このことは、前回に逮捕されたとき、刑事に教わったんですよ」


送検時、両手で顔を隠し最後まで顔を見せなかった白石容疑者
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 白石は事件前、ソープランドへの斡旋の疑いで逮捕、起訴され、執行猶予判決が下された過去がある。そのときの取り調べて、犯罪のヒントを得てしまったのだ。警察の事情聴取で“ヒント”を得ることはよくある。自殺未遂者を救済したあとで、医師や警察官が、リアルな自殺方法を教えてしまうこともあるくらいだ。

 この、座間9遺体事件の取材で「男に猟奇的な面があり、バラバラにしたあと、食べたのではないか」という情報を耳にした。もしこれが事実であれば、人肉を食べた事件として、さらに異常性が増す。そして衝撃度も変わる。不謹慎ながらも、あえて、白石にその点を問いただした。するとこんな答えが返ってきた。

 「食べていないですよ」

 そして、笑いながら、こうも言った。

「(あなたは)人を殺したことないでしょ。人間をバラしたことがある人はわかると思うが、人は臭いです。食べる気にはならないです。食欲がわくにおいではないです」

 事件が発覚して10月末で2年になる。

 SNSで知り合い、自殺願望の女性を殺害するという類似の事件は、今年の9月にも東京・池袋で起きたばかりだ。しかし多くの人間からすれば、すでに終わった事件で、記憶から忘れ去られた事件でもある。日常で、この事件について話をする機会は、さらになくなってきているのが現実だ。

 最後の質問として、自分の家族や被害者遺族に何か言うことはないかと聞いた。

「家族に対しては、『ごめんなさい』かな。いや、違うな。『もう忘れてください』かな。もう会うこともないだろうし。被害者遺族にも忘れてください、ですね」

 事件を記憶し、この事件から得られる教訓は何か。個人レベルでも、家族レベルでも、地域や職場レベルでも、それぞれの立場で何ができるのかは考えてほしい。

渋井哲也(しぶい・てつや)◎ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。東日本大震災以後、被災地で継続して取材を重ねている。『ルポ 平成ネット犯罪』(筑摩書房)ほか著書多数。


座間9人切断遺体事件にみる「8つの謎」と誰もが殺人鬼になる可能性

2020年08月27日 04時19分35秒 | 事件・事故

事件殺人事件死体遺棄自殺容疑者

週刊女性2017年11月21日号

【短期間に9人を殺し、バラバラで捨てるのは可能か?】

 長年、事件を追っている事件記者が話す。

「白石容疑者は、被害者を自宅に招き入れて、すぐ殺害に及んだと供述している。遺体をバラバラにする際、最初の被害者の処理には3日かかり、2人目以降は1日で処理したという。一部はゴミと一緒に出し証拠隠滅を図ったが、頭部は室内のクーラーボックスなどに隠していた」

 一帯は住宅地のため、容疑者宅周辺にも10数か所のゴミ捨て場が設置されている。


容疑者宅近くのごみ収集所
 近所に住む60代の女性は、「この地域は、行政が指定するゴミ袋による回収をしていないので、可燃ゴミはコンビニやスーパーのレジ袋で捨てることができます」

 頭部と240本近い骨は、容疑者宅に残されていた。さすがに、小さなレジ袋に頭部を入れると目立つ。

「そういえば、遺体がまったく残らなかったバラバラ殺人事件があった」と前出・事件記者が振り返る。

「2008年、東京・江東区のマンションで起きたバラバラ殺人事件。33歳(当時)の派遣社員の男が、同じマンションに住む23歳(当時)の女性を“性奴隷”にする目的で自室に連れ込み、殺した。

 マンション内の捜索が始まったため、男は浴室で、ノコギリなどの刃物を使いバラバラに切断。細かく刻んだ肉片はトイレに流し、大きな部位は可燃ゴミにまぎらせ捨てるなどして、約2週間で証拠をすべて隠滅している」

【被害者の身元が判明しないこともあるのか?】

「11月6日、警視庁は被害者の1人が、逮捕の端緒になった八王子市の田村愛子さん(23)と発表しました」

 と前出の事件記者。今後、8人の身元確認作業について、

「容疑者は被害者の名前を知らず、所持品も捨てたなどと供述していたが、現場検証で複数の女性のキャッシュカードや身分証明書が見つかった。それでもわからなければ残された遺体の一部からDNAを採取して、行方不明者と照合していくしかない」

 全国の警察に届けられる行方不明者は、年間約8万5000人。事件・事故に巻き込まれたのか、家出なのかわからないケースも多い。

「『特異行方不明者』のデータベースがある。そこには不明者の家族がDNA型を提出している約4000人も含まれている。事件発覚後、わが子ではという問い合わせが多いという。家族にDNA型の提出を求め、1人ずつ調べていくことになる」(同記者)

【自殺願望のある人を殺した場合、罪が軽くなるって本当?】

「2005年、大阪府堺市で、人材派遣会社に勤務する36歳(当時)の男が、自殺サイトに書き込みをした14~25歳の男女3人を殺害する事件がありましたが、殺人罪が適用されました。男が、殺人目的で自殺サイトを物色し、自己欲求を満たすために犯行に及んでいたからです」

 と話すのは、ジャーナリストの渋井哲也氏。

「自殺願望者の中には、探偵のサイトや便利屋のサイトにアクセスして“私を殺してください”と依頼し、実際に事件化した例もあります。常識的には考えられませんが、“なんでもやります”という宣伝文句をはき違え、頼んだということでしょう」

 白石容疑者は現状、9人全員の殺害を認め、嘱託殺人の主張はしていないが、供述はいつ翻すかわからない。前出・事件記者が解説する。

「自殺を手伝った場合は自殺幇助罪。殺害を依頼され犯行に及んだ場合は嘱託殺人罪。量刑はいずれも、6か月以上7年以下の懲役または禁錮刑で、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役の殺人罪の量刑より軽くなる」

【容疑者はごく普通の青年だった。誰でもやれることなのか?】

「今回の事件は、本当にレアケース。このような犯罪をする人間は、1億人の中に1人いたって珍しい。それくらいのレベルなのです。


中学時代は将来に希望を持っていたのか(※一部加工)
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 殺人の動機として最も多いのが怨恨に基づくものですが今回の被害者は会ったばかりの他人。ということは殺すことが強い快感であったか、遺体に興味があったか。この2つの仮説が支持されます」

 そう分析するのは、犯罪心理学者で東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授。

「9人も殺し、遺体の一部を部屋に残していることから、よほど遺体に強い執着、興味があったのでしょう。解体している最中も自分が相手を支配しているという強い快感があったのだと推測できます。

 そして女性ばかりを狙ったのは、単純に襲いやすかったから。相手を殺害できなければ意味がないわけですから、絶対的弱者を狙ったということです」

【小さいころの経験と事件を結びつけるものはあるのか?】

「殺人事件の報道で“小さいときにカエルを殺していた”などと出ることがありますが、これらが直接殺人に結びつくことはありません。殺意というのは徐々に形成されていくものではなく、何らかのきっかけで殺人に興味を持つことがある。ただ、そのきっかけは本当に千差万別です」

 と前出・出口教授。ひとつの引き金として“支配感”というキーワードをあげる。

「誰にでも支配感はありますが、何かしらのきっかけで、人を殺すことで強い自身の支配感を満たし、快感を得られるのかもしれないと興味を持ったのではないか」

【被害者の最低所持金は500円。殺人の対価になりうるのか?】

 容疑者は性的暴行と金銭目的もあったと供述している。

「例えば強盗殺人は金銭を目的とし、その手段として殺人を選択している。しかし今回の事件で容疑者が求めているのは、人を殺すということが目的であったと推測でき、金銭目的や乱暴目的だと供述していたとしても、それは2次的、3次的な動機で、あわよくばというレベルです」

 と出口教授は指摘する。遺体の一部を部屋に保管していたことも出口教授が知る殺人犯とは違っていると続ける。

「刑務所などでさまざまな殺人犯と面談しましたが、死体と一緒にいたいと話す殺人犯に私は会ったことがありません。殺人をしてしまったら、死体を遠ざけて遺棄したいと思うものです。だから今回は非常にレアなケースだといえる」

【立て続けに9人も殺害。発覚しやすいのになぜ?】

「殺害をするときや解体をするときに、かなり強い快感があった。だから次もやろう。もっと強い刺激や快感があるかもしれないと繰り返していくわけです。薬物依存と同じような状態であったのではないかと考えられます」

 快楽殺人の様相も見える事件で、容疑者は死にたがっている人間にまんまと接触し、口車に乗せ、犯行現場に誘い込んだ。その手口は、手慣れたものだ。

「普通の人は、コミュニケーション能力をよい方向に使う。しかし彼は、悪用する術として使用して、被害者を自宅に誘い込み殺害した。容疑者はコミュニケーション能力が非常に高く、社会生活の中で培った経験から、その素顔を使い分け、誰にも怪しまれないように、善良な人間を演じていたのでしょう」

【被害者たちはなぜ、容疑者の部屋に素直に入ってしまったのか】


現場アパート前を慌ただしく出入りする捜査員
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 犯行現場になったアパートは、線路沿いに位置する。電車の通過音は頻繁で、近くには米軍座間キャンプがあり、

「戦闘機の飛行訓練の音に、住人は慣れていますよ」

 と近所に住む50代の男性。物音に慣れっこになっていたからか、殺害の際の物音に気づく近隣住民はいなかった。

 自殺願望者は、容疑者に抵抗することなく部屋に入る。

「自殺願望者は、見知らぬ人に頼り、自分を追い込もうとする。何度も自殺に失敗している人ほど途中で断念しないように“監視要員”に頼るのです」(前出・渋井氏)

 “監視要員”の役目を期待した容疑者に裏切られ、自殺願望者は納得できない死を押しつけられたことになる。

 

 

 


茨城県内 新型コロナウイルス感染症 累計感染者数:524名

2020年08月27日 04時15分02秒 | 社会・文化・政治・経済

茨城県内における新型コロナウイルス感染症例発生状況

累計感染者数:524名 茨城版コロナNext(対策指針):Stage3

8月26日(水曜日)、県内で新たに新型コロナウイルス感染症患者(12名)が確認されました。

0826新型コロナウイルス感染患者発生の推移

新型コロナウイルス感染症陽性者一覧

茨城県内の新型コロナウイルス感染症の陽性者の状況

0826陽性者の状況