>2025年 2月 18日 公明新聞
厚労省の報告書が示す三つの柱
2025/02/18 3面
誰もが安心して働ける労働環境の整備について議論を重ねてきた厚生労働省は、▽女性従業員の健康診断の充実▽職場のメンタルヘルス対策▽高年齢労働者の労働災害防止――などを柱にした報告書を1月17日にまとめた。同省は開会中の通常国会に関連法の改正案を提出する予定だ。主な施策のポイントについて解説する。
■(女性の健康)生理や更年期障害などを企業健診の問診票に追加
働く女性が増える中、女性従業員の健康を守る企業の取り組みが重要性を増している。生理や更年期障害など、女性は人生の各段階でさまざまな健康課題に直面しているからだ。
このため報告書では、労働安全衛生法に基づき企業が従業員向けに実施している定期健康診断(健診)において、女性の健康課題に関する質問を問診票に追加するとした。
具体的には「女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害など)で職場において困っていることがありますか」といった質問を想定。健康課題があると答えた人に対しては、健診を担当する医師から、必要に応じて産婦人科など専門医への早期受診を勧めたり情報提供する。本人の気付きを促すとともに、健康課題に対する配慮について職場で申し出を行いやすくする狙いがある。
質問に対する回答は、健診機関から事業者に提供しないこととする。その上で、困っている従業員への対応について、健診機関と事業者それぞれに指針などを示す方針だ。
厚労省は健診の問診票における項目の追加に関し、2026年度からの実施に向けた通達の発出をめざしている。一方、男性の更年期障害については、さらなる医学的知見の集積を踏まえ必要に応じて検討する。
公明党は23年5月に女性委員会が政府に申し入れた「すべての女性のためのトータルプラン」の中で、更年期障害に関する項目を健診に追加することなどを提案。厚労省の検討会の設立につながり、健診内容の見直しに向けて議論が重ねられてきた。
■(メンタルヘルス)ストレスチェックの実施、50人未満含む全事業所で
過去1年間にメンタルヘルスの不調により、連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10・4%に上っている(厚労省の23年実態調査)。労働者が心の不調を未然に防ぎ、健康で働き続けるためには職場のメンタルヘルス対策の推進が欠かせない。
ストレス度合いを把握する上で有効な手段の一つが「ストレスチェック制度」だ。そこで報告書では、制度の義務化の対象を「労働者が50人以上の事業所」から「全事業所」へと拡大。小規模な事業所の実施率向上をめざす。
なお、50人未満の事業所で実施するに当たっては、労働者のプライバシーを保護する観点から原則、外部委託を推奨。事業所の負担を軽減するため、労働基準監督署への結果の報告義務は課さないとした。
厚労省は今後、医師による高ストレス者への面接指導に対応する「地域産業保健センター」の体制充実など、50人未満の事業所に対して支援策を講じる。その上で、事業所の負担に配慮し、実施には十分な準備期間を確保するとしている。
■(高年齢労働者)増加する労災。職場の段差解消や作業見直しへ指針
働く高齢者の増加を踏まえた就労環境の整備も重要だ。報告書では、厚労省がおおむね60歳以上とする高年齢労働者の労働災害を防ぐため、特性に配慮した作業環境の改善や適切な作業の管理などについて、事業者の努力義務とするとした。
高年齢労働者は若年世代と比べて、労働災害の発生率が高い傾向がある。厚労省によると、23年の労働災害に関する死傷者数(休業4日以上)は約13万人に上った。そのうち60歳以上が占める割合は29・3%で年々上昇傾向にある。
厚労省は今後、高年齢労働者の労働災害防止へ事業者が適切な取り組みを実施するため、必要な指針の公表をめざす考えだ。職場の実情に応じて、職場内の段差解消や手すりの設置、作業内容の見直しなどが一層進むことを期待している。
高年齢労働者の労働災害防止に関する施策を巡って厚労省は、メンタルヘルス対策と合わせて、今国会に労働安全衛生法改正案の提出を予定している。
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