妻の恵子の体重が今日初めて30キロの大台に達した。
減ったのではなく、やっとここまで体重が回復したのだ。
昨年の夏に、彼女の体重は28キロまで落ちていた。脳卒中を発症した時の体重が40キロ前後だったので、そこから10キロ以上落ちたことになる。
世の中の人は体重を落とすことに血道をあげるが、こうして病気とかを体験すると体重を増やすことがいかに困難な作業なのかがよくわかる。
特に、彼女は半身麻痺の身体をリハビリで元通りに動かせるように訓練を続けている。
体力がなくてはリハビリそのものを維持していくことが難しいのだから体重を増やすことは治療の一環でもある。
体重の減少は、長い入院生活と麻痺した身体が筋肉そのものをそぎ落としてしまった結果だ。
人間の体重は、もちろん脂肪が担っている部分も大きいが一番比重をしめるのは筋肉だ。
なので、ボディービルダーは、体重を減らすことなどハナから考えない。ひたすら筋肉を増強して体重も増加させる。けっして彼ら彼女らは痩せてはいないのだ。
彼女は、もちろんボディビルなどとは無縁の身体だ。
むしろ、ボディビルダーのように、あんな筋肉があればなと羨ましくさえ思う。
昨年の夏に落ちた体重は、さらに別の悲劇も生んでしまった。
担当医師は、「飲む点滴」のような栄養剤も処方してくれたが、同時に食欲増進のために別の薬も処方してくれた。しかし、これが大変な事態を招いてしまう。
この薬を服用してまもなく、彼女の身体が以前よりも身体がこわばり、震えだし、麻痺のない方の足までまったく動かなくなってしまったのだ。
その様子は、まさしく「パーキンソン病患者」の症状と同じ。
あわてて、医師に電話すると、「その薬は稀にパーキンソン病のような副作用を起こすことがあるのですぐに服用を中止するように」。
そんなの早く言ってくれよ。症状が出てからじゃ遅いだろ。
私は医師にそう叫びたくなったが、私は、恨みごとは言わなかった。
件の医師も本来適量とされる量の薬を処方しただけだ。
恵子があまりにもやせ過ぎていたために医師の考えた薬の適量が適量でなくなっていたのだから、誰を恨むわけにもいかない。
幸い、この副作用騒ぎは薬の服用を中止したことですぐに収まったが、このトラウマは今もなお私と恵子の頭に重くのしかかっている。
クスリは怖い。まあ、そんなことは当たり前のことなのだろう。全てのクスリは毒だ、という認識をまず持たなければならない。
毒になるものだからこそクスリになる。そういう言い方もまんざら間違いではない。
ワクチンにしろ何にしろ、クスリというのは、ある意味「毒をもって毒を制している」だけの話だ。
なるべくクスリは飲まない方が良い。これも当たり前の話なのだ。
私は、彼女の入院から今日までずっと「完璧な栄養士」をやってきたつもりだった。
入院中から彼女に出された食事はすべて中身も味もチェックしてきた。
だから、自宅介護でも栄養士としてはパーフェクトに食事を作ってきたつもりなのだが、にもかかわらず彼女の体重は減少した。
さまざまな要因が彼女の食事を邪魔するからだ。
栄養剤を毎日飲み、一回でそれほどの量の食べられない彼女に三度ではなく一日五食で分けて食事をさせながらも、なかなか体重は増えず、週一回の体重測定でも0.1キロとか0.2キロずつぐらいしか体重は増えていかない。
しかし、その彼女の体重がとりあえずの目標である30キロオーバーに今日達した。
もちろん嬉しいことだが、それでも「また減ってしまうのでは」という不安も心のどこかにある。
まあ、そんな弱気ではしょうがないので、今は次の目標の35キロオーバーを目指して頑張るしかない。
彼女が病気に倒れた時にかかげた5つの目標(一人でトイレに行く、車椅子からサヨナラする、杖なしで歩く、右手で食べる、右手で絵を描く)があったが、その5つのうちクリアできたのはまだ最初の2つだけだ。
目標を5段階に設定したが、目標の2を達成した後の3までの距離が限りなく遠い。
きっと、目標を設定した時にはまだそれぞれの目標の難易度そのものがあまり良く理解できていなかったからなのだろう。
しかし、いくら遠くても到達できない目標はない。
到達できないと思った瞬間、目標はまたさらに遠くなっていく。
人の進歩なんてこんなものなのじゃないのかな。
亀のように鈍い歩みでも前に進み続ければいつかはゴールに到達する。
そう信じなくては。
減ったのではなく、やっとここまで体重が回復したのだ。
昨年の夏に、彼女の体重は28キロまで落ちていた。脳卒中を発症した時の体重が40キロ前後だったので、そこから10キロ以上落ちたことになる。
世の中の人は体重を落とすことに血道をあげるが、こうして病気とかを体験すると体重を増やすことがいかに困難な作業なのかがよくわかる。
特に、彼女は半身麻痺の身体をリハビリで元通りに動かせるように訓練を続けている。
体力がなくてはリハビリそのものを維持していくことが難しいのだから体重を増やすことは治療の一環でもある。
体重の減少は、長い入院生活と麻痺した身体が筋肉そのものをそぎ落としてしまった結果だ。
人間の体重は、もちろん脂肪が担っている部分も大きいが一番比重をしめるのは筋肉だ。
なので、ボディービルダーは、体重を減らすことなどハナから考えない。ひたすら筋肉を増強して体重も増加させる。けっして彼ら彼女らは痩せてはいないのだ。
彼女は、もちろんボディビルなどとは無縁の身体だ。
むしろ、ボディビルダーのように、あんな筋肉があればなと羨ましくさえ思う。
昨年の夏に落ちた体重は、さらに別の悲劇も生んでしまった。
担当医師は、「飲む点滴」のような栄養剤も処方してくれたが、同時に食欲増進のために別の薬も処方してくれた。しかし、これが大変な事態を招いてしまう。
この薬を服用してまもなく、彼女の身体が以前よりも身体がこわばり、震えだし、麻痺のない方の足までまったく動かなくなってしまったのだ。
その様子は、まさしく「パーキンソン病患者」の症状と同じ。
あわてて、医師に電話すると、「その薬は稀にパーキンソン病のような副作用を起こすことがあるのですぐに服用を中止するように」。
そんなの早く言ってくれよ。症状が出てからじゃ遅いだろ。
私は医師にそう叫びたくなったが、私は、恨みごとは言わなかった。
件の医師も本来適量とされる量の薬を処方しただけだ。
恵子があまりにもやせ過ぎていたために医師の考えた薬の適量が適量でなくなっていたのだから、誰を恨むわけにもいかない。
幸い、この副作用騒ぎは薬の服用を中止したことですぐに収まったが、このトラウマは今もなお私と恵子の頭に重くのしかかっている。
クスリは怖い。まあ、そんなことは当たり前のことなのだろう。全てのクスリは毒だ、という認識をまず持たなければならない。
毒になるものだからこそクスリになる。そういう言い方もまんざら間違いではない。
ワクチンにしろ何にしろ、クスリというのは、ある意味「毒をもって毒を制している」だけの話だ。
なるべくクスリは飲まない方が良い。これも当たり前の話なのだ。
私は、彼女の入院から今日までずっと「完璧な栄養士」をやってきたつもりだった。
入院中から彼女に出された食事はすべて中身も味もチェックしてきた。
だから、自宅介護でも栄養士としてはパーフェクトに食事を作ってきたつもりなのだが、にもかかわらず彼女の体重は減少した。
さまざまな要因が彼女の食事を邪魔するからだ。
栄養剤を毎日飲み、一回でそれほどの量の食べられない彼女に三度ではなく一日五食で分けて食事をさせながらも、なかなか体重は増えず、週一回の体重測定でも0.1キロとか0.2キロずつぐらいしか体重は増えていかない。
しかし、その彼女の体重がとりあえずの目標である30キロオーバーに今日達した。
もちろん嬉しいことだが、それでも「また減ってしまうのでは」という不安も心のどこかにある。
まあ、そんな弱気ではしょうがないので、今は次の目標の35キロオーバーを目指して頑張るしかない。
彼女が病気に倒れた時にかかげた5つの目標(一人でトイレに行く、車椅子からサヨナラする、杖なしで歩く、右手で食べる、右手で絵を描く)があったが、その5つのうちクリアできたのはまだ最初の2つだけだ。
目標を5段階に設定したが、目標の2を達成した後の3までの距離が限りなく遠い。
きっと、目標を設定した時にはまだそれぞれの目標の難易度そのものがあまり良く理解できていなかったからなのだろう。
しかし、いくら遠くても到達できない目標はない。
到達できないと思った瞬間、目標はまたさらに遠くなっていく。
人の進歩なんてこんなものなのじゃないのかな。
亀のように鈍い歩みでも前に進み続ければいつかはゴールに到達する。
そう信じなくては。