「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

BODY TEMPERATURE 体温 Long Good-bye 2022・01・14

2022-01-14 05:17:00 | Weblog


  今日の「 お気に入り 」は 、ノンフィクション作家 ビル・ブライソンさん の

 著書 " The Body ― A Guide for Occupants " からの 抜き書き 。 。

  ” THE SURFACE LAW is not something most of us ever have to
  think about, but it explains a lot about you. The law states simply that
  as the volume of an object grows, its relative surface area decreases.
  Think of a balloon. When a balloon is empty, it is mostly rubber with a
  trivial amount of air inside. But blow it up and it becomes mostly air with
  a comparatively small amount of rubber on the outside. The more you
  inflate it, the more its interior dominates the whole.
   Heat is lost at the surface, so the more surface area you have relative to
  volume, the harder you must work to stay warm. That means that little
  creatures have to produce heat more rapidly than large creatures.
  They must therefore lead completely different lifestyles. An elephant's
  heart beats just thirty times a minute, a human's sixty, a cow's between
  fifty and eighty, but a mouse's beats six hundred times a minute — ten
  times a second. Every day, just to survive, the mouse must eat about
  50 percent of its own body weight.
   We humans, by contrast, need to consume only about 2 percent of
  our body weight to supply our energy requirements. One area where
  animals are curiously — almost eerily — uniform is with the number
  of heartbeats they have in a lifetime.

  Despite the vast differences in heart rates, nearly all animals have
  about 800 million heartbeats in them if they live an average life. The
  exception is humans. We pass 800 million heartbeats after twenty-five
  years, and just keep on going for another fifty years and 1.6 billion
  heartbeats or so. It is tempting to attribute this exceptional vigor to
  some innate superiority on our part, but in fact it is only over the last
  ten or twelve generations that we have deviated from the standard
  mammalian pattern thanks to improvements in our life expectancy.
  For most of our history, 800 million beats per lifetime was about the
  human average, too.

   We could reduce our energy needs considerably if we elected to
  be cold-blooded. A typical mammal uses about thirty times as much
  energy in a day as a typical reptile, which means that we must eat
  every day what a crocodile needs in a month. What we get from this
  is an ability to leap out of bed in the morning, rather than having to
  bask on a rock until the sun warms us, and to move about at night
  or in cold weather, and just to be generally more energetic and
  responsive than our reptilian counterparts.

  We exist within extraordinarily fine tolerances. .Although our body
  temperature varies slightly through the day ( it is lowest in the
  morning, highest in the late afternoon or evening ) , it normally
  doesn't stray more than a degree or so from 98.6 degrees Fahrenheit.
  ( That's in adults. Children tend to run about one degree higher. )
  To move more than a very few degrees in either direction is to invite
  a lot of trouble. A fall of just two degrees below normal, or a rise of four
  degrees above, can tip the brain into a crisis that can swiftly lead to
  irreversible damage or death. To avoid catastrophe, the brain has its
  trusty control center, the hypothalamus, which tells the body to cool
  itself by sweating or to warm itself by shivering and diverting blood flow
  away from the skin and into the more vulnerable organs.

   That may not seem terribly sophisticated way of dealing with such a
  critical matter, but the body does it remarkably well. ・・・ "

  " Occasionally, as we all know, our body temperature is elevated beyond
  normal in the condition known as a fever. Curiously, no one knows quite
  why this happens — whether fevers are an innate defense mechanism
  aimed at killing invading pathogens or simply a by-product of the body
  working hard to fight off infection. The question is important because if
  fever is a defense mechanism, then any effort to suppress or eliminate
  it may be counterproductive. Allowing a fever to run its course ( within
  limits, needless to say ) could be the wisest thing. An increase of only a
  degree or so in body temperature has been shown to slow the replication
  rate of viruses by a factor of two hundred
— an astonishing increase in
  selfdefense from only a very modest rise in warmth. The trouble is, we
  don't entirely understand what is going on with fevers. ・・・ "

  " If elevating our temperature a degree or two is so helpful at fending
  off invading microbes, then why not raise it permanently ? The answer
  is that it is just too costly. If we were to raise our body temperature
  permanently by only 3 - 4 degrees Fahrenheit, our energy requirements
  would shoot up by about 20 percent. The temperature we have is a
  reasonable compromise between utility and cost, as with most things,

  and actually even normal temperature is pretty good at keeping microbes
  in check.
Just look at how swiftly they swarm in and devour you when
  you die. That's because your lifeless body falls to a delicious come-and
  -get-it temperature, like a pie left to cool on a windowsill. "

   ( 出典 :Bill Bryson 著 " The Body ― A Guide for Occupants " .
        Knopf Doubleday Publishing Group. 刊 )


  上掲の英語の文章は 、翻訳本の中で 、次のように 日本語訳されています 。

  「 『 体表面積の法則 』は 、ほとんどの人にとってなじみのないもの

   だが 、これを知れば人体について多くのことがわかる 。法則は単純

   に 、物体の体積が増せば 、相対的な表面積が減少することを示して

   いる 。風船について考えてみよう 。しぼんだ風船はほとんどがゴム

   で 、中に空気はほんの少ししか入っていない 。しかし膨らませれば

   ほとんどが空気になり 、外側のゴムの量は相対的に小さくなる 。膨

   らませれば膨らませるほど 、全体に占める中身の割合が増していく 。

    熱は表面から失われるので 、体積に対する表面積が大きいほど 、

   保温に懸命に取り組む必要がある 。つまり 、小さい生物は大きい

   生物よりすばやく熱を産生しなくてはならない 。したがって 、両

   者はまったく異なる生活を送ることになる 。ゾウの心拍数は一分

   にたった三十回 、ヒトは六十回 、ウシは五十~八十回だが 、ネズ

   ミは一分に六百回 ― 一秒に 十回だ 。毎日 、生き延びるためだけ

   に 、ネズミは体重の約五十パーセントの食糧をとらなくてはなら

   ない 。それに対して 、わたしたち人間は 、エネルギー必要量を満

   たすのに 、体重の約二パーセントの食糧をとるだけで足りる 。

   物たちのあいだで不思議なほど ― ほとんど不気味なほど ― 共通

   しているのは 、一生の心拍数だ 。一分間の心拍は大幅に異なるの

   に 、ほぼすべての哺乳類は 、平均寿命まで生きれば約八億回の

   心拍数を記録する 。例外は人間だ 。わたしたちは二十五年余りで

   八億回の心拍数を超え 、さらに五十年進み続けて 、およそ十六億

   回に達する 。この並外れた活力は 、ヒトが持つ生まれながらの優

   位性によるものと考えたくなるが 、実際には 、平均寿命が向上し

   たおかげで哺乳類の標準パターンから外れたのは 、ここ十世代か

   ら十二世代のことにすぎない 。歴史の大半を通じて 、一生に八億

   回の心拍数はヒトの平均値でもあった


    もしわたしたちが変温動物になる道を選んでいたら 、エネルギ

   ー必要量を減らせただろう 。典型的な哺乳類は一日に 、典型的な

   爬虫類の約三十倍のエネルギーを使う 。つまり 、ヒトはワニのひ

   と月分の食糧を毎日食べなくてはならない 。そのおかげで 、太陽

   が体を温めてくれるまで岩の上で日向ぼっこしなくても 、朝ベッ

   ドから飛び起き 、夜や寒い気候でも動き回り 、たいていは爬虫類

   より精力的で敏感に反応できる 。

    わたしたちは 、きわめて精密な許容範囲の中で生きている 。ヒ

   トの体温は一日を通してわずかに変化するが ( 朝に最も低く 、午

   後遅くか夕方に最も高い ) 、摂氏三十六~三十八度というごく狭

   い範囲にとどまる 。どちらの方向へでも数度以上ずれれば 、い

   くつもの問題を招くことになる 。平熱よりたった二度下がるか 、

   四度上がるだけで 、脳は危機に陥り 、瞬く間に回復不可能な損

   傷や死を招きかねない 。大惨事を避けるため 、脳には頼りにな

   る制御中枢 、視床下部があり 、汗をかいて体温を下げろとい

   う指示や 、身震いしたり 、血流を皮膚から遠ざけて損傷しやす

   い器官に向かわせたりして体温を上げろという指示を出す 。

    重要な問題の対処法としてはあまり洗練されていないようにも

   思えるが 、体はそれをみごとにこなしている 。・・・ 」


  「 誰もが知っているように 、ときどきわたしたちの体温は普段よ

   り上がって 、発熱と呼ばれる状態になる 。不思議なことに 、

   なぜそうなるのか正確にはわかっていない 。熱は 、侵入する病

   原体を殺すことを目的とした生来の防御機構なのか 、それとも

   体が感染症を撃退しようと懸命に戦っているときの単なる副産

   物なのか ? もし発熱が防御機構なら 、熱を抑えたり下げたり

   する努力は逆効果かもしれないので 、この疑問は重要だ 。もし

   かすると 、発熱は自然に下がるのを待つべきなのかもしれない

   ( もちろん 、適度な範囲で ) 。体温がほんの一度ほど上がるだけ

   で 、ウィルスの複製速度が二百分の一になる
ことが示された 。

   少し温かくなるだけなのに 、驚くほど自衛力が増加する 。問題

   は 、発熱で何が起こっているのか完全には理解できていないこ

   とだ 。・・・ 」


  「 体温を一、二度上げるのが 、侵入する微生物を撃退するのに

   そんなに役立つのなら 、なぜ常に上げておかないのか ?

   答えは 、単にあまりにも高くつくからだ 。わずか二度ほど

   常に体温を上げようとすれば 、エネルギー必要量が約二十パ

   ーセント急増する 。わたしたちの体温は 、ほとんどのものと

   同様 、実益とコストの合理的な妥協点であり 、実のところ 、

   平熱でもかなりうまく微生物を食い止めている
。もしも死ん

   だら 、どれほどすばやく微生物が群がってあなたを貪り食う

   か 、見てみるといい 。生命を失った体は 、まるで出窓に置

   いて冷ましたパイのように 、すぐに食べられるおいしい適温

   にまで下がっているからだ 。」

   ( 出典 : ビル・ブライソン著 桐谷知未訳 「 人体大全 ― なぜ生まれ 、
         死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか ― 」新潮社 刊 ) 

   原書および翻訳本の第11章からの引用はここまで 。
   
   ( 筆者註 )
    ・原書の第11章のタイトル「 EQUILIBRIUM 」は 、本文中の次のくだりから
     とられているようです。

     ” Maintaining equilibrium within the body is called homeostasis ( 恒常性 ) .
      The man who coined the term and is often referred to as the father
      of the discipline was the Harvard physiologist Walter Bradford
      Cannon ( 1871 - 1945 ). ・・・
” 

    ・華氏度 ( ファーレンハイト度、°F ) と摂氏度 ( セルシウス度、°C ):
      前者は 、考案者であるドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイトに因み 、
      後者は 、スウェーデンの天文学者・測地学者アンデルス・セルシウスに由来し 、
      水の氷点と沸点との間を100分割した目盛り付けであるとか 。 
 
      両者の換算は次の通り :
                  セルシウス度から    セルシウス度へ
      ファーレンハイト度  [°F] = [°C] × 9⁄5 + 32   [°C] = ([°F] − 32) × 5⁄9 

      日本の計量法上は、「ファーレンハイト度」や「華氏度」を使用することは
      禁止されている。

     上記の他 、インターネットのフリー百科事典「 ウィキペディア 」
     には 、次のような解説記事も掲載されています 。

     ・平賀源内が1765年に作った温度計「日本創製寒熱昇降器」には 、
      極寒、寒、冷、平、暖、暑、極暑の文字列のほか
      数字列も記されており「 華氏」を採用していた 。

     ・SF作家レイ・ブラッドベリの『華氏451度』 - 華氏451度(摂氏233度)
        は紙の燃焼点(または引火点)である。未来世界で本が規制され
        焚書されているという設定から来ている。
     ・キースの「98.6」 - 人間の平熱とされる華氏98.6度を、歌手のキースは
        そのままタイトルにして1966年に発表 。本国やイギリスなどで
        ヒットした。
     ・アメリカ合衆国のロックバンド、ボン・ジョヴィの『7800°ファーレン
        ハイト( 7800° Fahrenheit )』 - 華氏7800度は岩(ロック)を
        溶かす温度である。
     ・マイケル・ムーア監督の映画『華氏911』 - 『華氏451度』と9月11日(ア
        メリカ同時多発テロ事件)をかけたもの。


     ・アメリカ合衆国・ジャマイカではメートル法への置き換えが生産者側・消費
      者側の両方で大きな抵抗に遭っているため、カ氏度は様々な分野で広く使わ
      れ続けている。同様にイギリスの一部では低い温度はセルシウス温度で表さ
      れるが、日常的に使われる温度はカ氏温度で測定されている。

     ・カナダの天気予報や報道機関は全てセルシウス度を使い、日常でもセルシウ
      ス度が使われているが、カナダのキッチンオーブンや一部のエアコンは、
      カ氏度で利用されることがある。これは、アメリカ向けの家電製品を使う
      機会が多いため、カ氏度が初期設定としてセットされているためである。
      最近は、アナログ表示が減り、デジタル表示の製品が増え、簡単にカ氏温度
      とセルシウス温度との切り替えが可能になっているため、カ氏温度のみを表
      示する製品は減少している。

     ・ニュージーランドやオーストラリアでは完全にセルシウス度(およびセルシ
      ウス温度)への移行が完了している。

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