高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

ニュージーランド見聞記

2014-06-10 09:00:00 | 日記
理事長 丸井一郎です。

 古くからの友人の母国を訪ねた。本人の帰省期間に合わせた短い日程だったが、大変に周到な準備がなされた案内を得て、観光客では手の届かない訪問先も紹介された。旅行の目的は、北島のホークスベイ周辺のワインと、関連して環境、農業、食材の観察。
 
 オークランド空港に着くなり、友人夫妻とレンタカーでホークスベイのネイピア市を目指す。途中タウポの湖畔で昼食と休憩(といち早く買い物)。400Km以上の道のりを7時間ほどかけて夕刻に到着。夏の終わりにあたる季節で、沿道の景観は極度のモノカルチャーという印象。原生でない森、牧草地、カボチャや飼料作物の農地が延々と連なるゆるやかな起伏の風景。所々に原生林があり全く異質な景観を示す。
 
 ネイピアは、1931年の大地震で破壊されたが、再建にあたって多くの建物がアールデコの様式で建設された。植民地らしくない(?)優雅なたたずまいである。宿泊したホテルも非の打ち所がない様式美を見せていた。ホテルのパブとレストランは「NZでNo.1」を自称するだけあって、違和感のない洗練された料理が提供されていた。ワインと現地でお初の対面であった。軽快なソーヴィニョン・ブランで始めて、シャルドネ(以上白)、さらに赤へ。ピノ・ノワルはやや甘めで優雅。驚いたことに(失礼)、シラーとメルローは実のあるしっかりした作りだった。子羊のフィレもチェダーチーズも期待に違わない品質だった。 

 翌日はブドウ園とワイン醸造場めぐり。ワインに余り興味のなさそうな英語圏の相客達(カナダ+連合王国)とマイクロバスで移動。エコロジカルな栽培と醸造を強調する小規模な2カ所の蔵と、海外への輸出を目指す大規模な蔵とを見学。最初に訪問したSalvareという小さな蔵が一番本格的だった。3カ所とも隣町のヘイスティングスに位置して、ブドウ以外にも多くの果樹園や野菜畑が見られた。

紙幅の関係で、以下主な観察項目を列挙する。 
農作物(とくに野菜)やワインは安価ではないが、質実で信頼性が高い。地産地消の志向が強いように見うけられる。("proudly produced in NZ" というタッグが目に付いた。)
通常の食物は、ヨーロッパ風の畜産品が中心で、しっかりした品質であるが、脂とクリーム分の過剰にやや食傷する。(よってイタリア人の店に一時避難することとなった。当地は良質のオリーブ油も産する。) 
魚介類は新鮮で高品質。朝どれの鮮魚が出る。(料理はまあまあ。開発の余地がある。)とくにmusselとよばれるムール貝(巨大な亜種?)は美味で安価。食堂ではKg単位で提供。
豪州タスマニア島から起こったperma(nent) culture略してパーマカルチャという生態系に配慮した農法の広大な農場(入り江と池あり)を見学。持続可能性を質実・堅実かつグローバルな視点で追求している(日本でもセミナーを開催とのこと)。 
自炊を試みて、地産の食材を大規模な量販店でそろえたが、上記のように、野菜などはやや固太りで繊維質も多く、まがい物ではなかった。

全体として振り返ると、この社会からは以下のような印象を受けた(あくまで「印象」)。
旧宗主国の飲食生態はそれなりに受け継がれているが(サンドウィッチ類が愛好されるなど)、全体として独自の飲食作法を発展させている。欧州その他の様々に異なる地域からの移住者が貢献していると思われる。人々の交流のスタイルはフランクで柔軟、この点で欧州とは明らかに異なる。
島全体の牧草地化は、純生物学的には生態系の破壊であるが、賢明に実施され、いわば第2の自然生態を形成したとも言える。全く異質の土地利用も可能であったにせよ。
今回は集中的に調査できなかったが、先住のマオリ族の言語・文化など伝統が正当に評価され、Kiwi(果物ではなく鳥)と自称するNZ人全体の自己理解を支えている。テレビにも独自のチャンネルがあり、大学にはマオリ語だけが使用される部門がある。美術館の表記はまずマオリ語、英語はその後。お隣さんとの差異が大きい。

コメント
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