高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

食べる日々(10)

2024-10-16 09:00:00 | 連載
会員の丸井一郎です。

食べる日々(10)

自治都市(城壁都市)の住民=市民へのパンの供給は公共的に保証され監督されていたことを紹介した。
画像は南西ドイツ、フライブルク市の大聖堂(ミュンスター)正面の台座に残る線刻である。
円形や楕円形の黒い図形は、各種パンの大きさの最低限度を示す。
大聖堂前の広場には今もマルクト(市、マーケット、マルシェ、メルカート)が立つ。
市当局がパンの基準を、おそらくマルクトの長(マイスター)を通じて、台座に刻ませたのは「主の年」(=西暦)1320年と1317年と判読される。


近代になって、ギルド、ツンフトなどの独占に対抗して市民や住民一般の協同が生まれ、地域の共用パン焼き工房(Backhaus)が成立する。
イギリスでも17世紀半ばに造船工の組合が製粉場(!)とパン焼き設備を設置したという記録がある。

村の「パン焼き小屋」 

バックハウスというパン焼き工房では、日を決めて火をおこし作業する。
前日から粉と塩と水と酵母を練って準備する。
一つ3~5Kgのパンが焼き上がる。


窯の中で火をたき 300℃近くにまで加熱し、燠(おき)などを掻き出して、その後にパンのもとをさし入れる。
写真は、さし入れ取り出し用の木製。
用具(現役使用中)。


焼き上がったパンは、まるごとか、切り分けて 販売する。
焼き上がりの時点では大きめの食卓ナイフで問題なく半分にできる。
ちなみにライ麦パンは一日おいてから食べるのが原則。
(焼きたては腹の中で沸くので、とのこと)


日がたって固くなると専用の器具が必要になる。
固い皮は装甲(兜)と呼ばれる。
保存には好適だが、最後は刃も通らなくなる。
(グラタン、シチュウ、粥に利用)

 
サラミは伝統的には牧人達が世話した放牧豚が素材。

(画像は低脂肪の上質品)

菜園のラディッシュと青唐辛子はそのままかじる。
ライ麦パンと合わせて風土が提供する材料を活用する。
穀物、獣肉と脂、低加工の野菜など。
ほぼ一年を通して大きな変化はない。
例外は屠畜の季節(初冬)の肉類、とくに豚の頭や血。
親戚や知り合いの農家から譲り受けて利用する。
これは食品の工業生産化以前からの民俗である。
(今回は乳製品関連は除外)

社会・文化の多様な歴史的背景と、風土の多様性とをのぞき見れば、食材アイテムを「横流し」で移入しても、生体や生活形式(飲食生態)の「欧米化」とはならないことが分かる。
ありがたいことに、またある意味でかなり危ないことに。

筆者より:今回で一応休止します。感想などお聞かせ下さい。

※ この記事は、NPO法人土といのち『土といのち通信』2024年10月号より転載しました。

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