先月のこと、なんとなく土用丑の日のことを想っているうちに、だんだんと昔の事を思い出してきた。
名前がとっさに出てこなくて焦ったが、なにかの拍子にふと思い出したのね。
社会人になって最初の職場では、まわりの人間関係からぼろぼろになり、ほぼめんたるでぃすおーだーの状態に陥っていた。
いま思えばかなり迷惑な奴だったんだけど、時折自席にいられなくなって、仕事中抜け出して別の職場に行っては、油を売っていた。
自分のいたところとは違うエリアに、わりと静かな人がおおい部署があって、おとなしい感じの女性がふたり、働いていた。
若手のOさんは僕とほぼ同年輩で、先輩格のKさんはいくつぐらいだったのかな。。
Oさんはお父さんお母さんのもとでしっかり育てられたお嬢さんという感じで、子どもがそのまま社会人になったような感じだった。
Kさんはたぶん色々社会経験されて・・なんとなく、ずっとお一人で暮らしてこられたような感じがした。
何を話していたのかぜんぜん覚えていない。Oさんを笑わせるのが結構好きで、なにか面白いことを考えては話していたような気もする。おふたりとも、僕の話によく乗って笑ってくれた。
確か、作業の自動化が進んで、お二人のやっていた部署は廃止になった。Oさんは経理部に異動し、Kさんも別の場所、僕のいたエリアに移動したように記憶している。
その後も二人のところに、個別にお邪魔しては何か話をしていた。ただ、Oさんは別部署に一人で異動したので、職場で声をかけるのは憚られる雰囲気になって・・たまに廊下とかで軽く話す程度になっていった。
Kさんはよく残業していて、これも今思えば申し訳ないんだけど、そこにお邪魔しては脇に座って話をしていた。。
Kさんは時折、ふんふんと鼻歌を歌いながら、仕事をしていた。
どこかで聞いたことのある歌だなあ、と思って色々と記憶をたどって、ふと思い出した。この曲だ。
とんとんとんからりんと 隣組
格子を開ければ 顔馴染
まわして頂戴 回覧板
知らせられたり 知らせたり
メロディは、当時関東地区でよく流れていた眼鏡チェーンのCMで使われていたので知っていたけど、CMは一部編曲されている。Kさんの歌っていたのはオリジナルバージョンだ。
Kさんをいちど、お食事に誘ったことがある。
何の話からそうなったのか、全く忘れたけど、「うなぎで有名な銀座竹葉亭は、じつは鯛茶漬けもおいしい」という話をKさんがしていて、それではお誘いしましょう、ということになった。
竹葉亭と言うのは今もあると思うが、この30年の間に移転していて、その前の場所だったと記憶している。
金曜日、夏でまだ少し明るい時間に一緒にオフィスを出て、たぶん軽くビールでも飲んだのかな。
また行きましょうみたいな話はしたけど、残念ながらこの一度で終わってしまった。

あの頃、高野文子の「るきさん」という漫画があったけど、頭の中の印象ではKさんはるきさんに似てる・・ような気もするけど、漫画を見るとぜんぜんちがう。るきさんの方が若くて行動的。さいごはイタリアに移住しちゃうんだよね。。
でも、マイペースな感じがどこか似てる。
とはいえ、もう少しKさんの方が屈託があるかな。。
前にも書いたけど、ちょうどオガワクンぐらいの年代だったんだよね自分。。
Oさんの方こそ、おデートにお誘いすべきだったのかと思うが、どうもそういう雰囲気には最後までならなかった気がする。。
数年後の春、Oさんは退職された。辞める前に廊下で会ったとき、そのことを告げてくれて、言い方は忘れたけど、この後きっと良いお知らせがくるはず、みたいな事を言われた。
別れ際に、何か意味ありげに微笑んで、その場を去っていった。
その時は何のことかさっぱりわからなかった。
が、しばらくしたら、経理部から、(推薦をもらったので)こちらに異動しないか、というオファーが来た。
たぶんこれが端緒となって、その後は少しずつ、自分の方向性が定まっていき、精神的な危機からも抜け出して行けたように思う。
その意味で、Oさんには感謝してもしきれないものを感じる。
んだけど、その頃はあまり実感なかったし、じゅうぶんなお礼も伝えてないよなあ。。
今はSNSとかもあって、昔の同僚とかにもつながることができるようになったが、KさんもOさんもその後の行方はわからない。
大きな会社なら、OB、OG名簿とか、あるのでしょうけど。。
たぶんもう、一生お会いできないんだろうな。。