がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

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悪女・百十踏揚

2016年10月23日 | ・和心な本、琉球な本

歴史上の人物がどんな人だったのか…

見る人や、立場によって変わるのが当たり前で
1つの人物像だけが真実ではないというのが
ワタシのスタンスです。

多面的に見てみる。
いろんな説や人物像を調べてみる。
その上で自分なりの人物像を描いていけばいい。

それがワタシの歴史の楽しみ方。

 

史料に乏しい古琉球の人物なら尚更、
英雄像がある反面、反英雄像もあって然り。

それが阿麻和利だろうが、
護佐丸だろうが、
鬼大城だろうが、

百十踏揚だろうが。

 

そう!

何度かこのブログでもチラっと触れてきた
百十踏揚悪女説!

この原典はもしかしてこれか!?

という物語を、やっと見つけることができました!

 

 

 

『ザ・阿麻和利』
(比嘉美代子 英語劇団赤バナー訳)

…ってか、この本自体は知ってたんだけど、
劇の脚本集だったのでノーマークでした。
何年も前にパラ見はしてたはずなのに!


(以下、ネタバレ注意)

 

キリスト教短期大学で行われていた
英語劇用に作られた歴史劇の和訳本。

本の発行は2009年ですが、
『ザ・阿麻和利』が書かれたのは1987年。

英雄阿麻和利像を描いており、
乱の黒幕は金丸(と尚泰久)なのですが、
特筆すべきは
百十踏揚の悪女っぷり!

大城賢雄(※本では大城里之子)に想いを寄せ、
彼と夫婦になるべく、
祖父(護佐丸)や夫(阿麻和利)の
命を奪う事すら一切躊躇しない
気性の激しい情念の女性
…として描かれています。

大城に夜這いに来いとまで言うし、
民には厳しくしないとつけあがると意見するし、
阿麻和利に絶縁状まで渡すし、
とにかく高飛車で強い女。

ってゆーか、
絶縁状のくだりなんか結構サイテー女…。

完全に私利私欲のために動いているので
そこに正義はありません…。 

 

「主体性を持ち
努めて主張する女として描いた」
と紹介文で書いているので
筆者のこだわりでもあったようですが…。

ちなみに一人称は「わらわ」
これでなんとなくイメージできるかな?

 

 

阿麻和利は民を思ういい按司なんだけど
夢見がちで世間知らずで
ちょっと女々しい。

尚泰久も権力を拡大・誇示しようと
結構腹黒い。

阿麻和利の元恋人「ナビー」と
ユタの「カマドゥ」が面白い立ち位置でした。

 

筆者はシェイクスピア劇に影響を受けているようで
物語の結末としては、
なんとも、こう、
シェイクスピア的悲劇でした。
(えー!?こんな終わり方!?ってなったヨ)

 

劇脚本をそのまま和訳した本なので
小説のように情景描写や心理描写などはなく
セリフのみで進んでいくので
(ト書きもあんまりない)
文字だけで読むとやや淡々とした印象はありますが
これを演劇で見たかったな~
というのが読み終わっての感想。

 

とにかく新鮮な百十踏揚像でした。

百十踏揚は割とどの本でも
麗しく悲劇の王女として描かれているので
このような真逆の人物像はかなり貴重。

百十踏揚という女性像を
より深く、
より自分のものにするためにも
一読をおススメいたします。

 

 

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ま、とは言っても
ワタシは悪女説はとりませんけどね!
小説「百十踏揚」の人物像が不動のベスト。


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