博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大航海』No.66 「特集:中国 歴史と現在」

2008年04月13日 | 中国学書籍
新書館発行の『大航海』第66号で「中国 歴史と現在」という特集をしていたので読んでみました。この雑誌は以前白川静の追悼特集をしていた雑誌ですね。

人文系中国学からは礪波護・藤井省三・加藤徹・高木智見・上田信・小島毅といった諸氏が寄稿しています。詳しいリストはこちらの公式サイトを参照のこと。

個人的に興味深かった論考は以下の通りです。

礪波護「京都の中国学」:
吉川幸次郎・宮崎市定・貝塚茂樹・白川静の微妙な関係に言及。特に宮崎先生は殷周史専攻の貝塚先生という同僚がいながら西周抹殺論を唱えたりと不審な所があったのですが、宮崎先生が先に中国古代都市国家説を唱えたのに、貝塚氏が中国古代封建制説から都市国家説に鞍替えするのに宮崎説に言及しなかったりと、色々あったんですね……

松本健一「共産党王朝が倒れる時」:
要するに日本人はいつの時代も現実の中国を直視せず、自分達の見たいバーチャル中国を見続けてきたということで……

高木智見「自己修養の三千年」:
『江沢民文選』を古代からの修養論の伝統を受け継ぐものとして評価。言ってみれば現代の『貞観政要』みたいなもんでしょうか。

岸田秀×国分良成(対談)「羊が狼になる日」:
台湾総統選で馬英九、謝長廷のどちらが当選しても大陸にとっては痛し痒しで、中台関係の大勢に影響は無いよね。とか、映画『ラスト、コーション』が受け入れられる中国社会とは?とか、ぶっちゃけすぎる発言が満載です(^^;)

ただ、ひとつ惜しいのは今回の特集の編集時期がギョーザ事件より前だったことですね。ギョーザ事件とチベット騒乱(この事件ももう一つしっくりくる呼び方が無いですね。取り敢えずこのように呼んでおきます。)を踏まえれば全体の論調がもう少し変わっていたかもしれないと思うと残念ではあります。
コメント (4)
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