前回、常緑樹と落葉樹についてお話をしました。
今回は、落葉広葉樹林の下で生育する低木性常緑樹の生存戦略について。
冬季の落葉広葉樹林は、林内が明るく、林床まで光が差し込みます。
このような落葉広葉樹林で生育する代表的な常緑樹がシャクナゲやユキツバキなど低木性の常緑広葉樹です。
低木は高木のような主幹(1つの大きな幹)を持たないので、積雪による枝や幹の折損リスクはかなり低くなります。(低木と高木の違いは別の機会に。)
また、雪の中は外気温より暖かいので、積雪は寒さや乾燥から守る役目になります。
上層の落葉樹が葉を着けている間は、林床に光が差し込まず、低木の常緑樹にとって光合成に適した環境とは言えません。
しかし、上層の落葉樹が落葉すると、林内が明るくなり、林床に光が差し込み、光合成に適した環境になります。
シャクナゲやユキツバキは、気温が高ければ、冬季の間でも光合成ができるため、上層木が着葉している春~秋の間は、わずかな光で光合成をしつつ、呼吸など葉の維持コストを抑制していると考えられます。
また、低木だと、生きるために必要な養分や水分が高木よりも少なくてすみ、全体的に低コストに抑えることが出来ます。
シャクナゲやユキツバキは、冬季の落葉広葉樹林という限定的な環境を狙った生存戦略を取っていると考えられます。
普通に考えると、生育に不適切な環境なので避けたいように思いますが、不適切な環境ということは、それだけ競争相手が少ないということになります。
シャクナゲやユキツバキは、落葉広葉樹林下という限定的な環境に適応した能力を備えることで、生存競争が激しくない環境で生育する生き方を選んだのではないかと思います。
「生存競争に勝ち残る能力を備えた樹木」、「不適切な環境に適応した能力を備えた樹木」という風に、樹木の生き方は、実に色々存在しており、高木と低木、常緑と落葉も生存戦略の1つの能力だと思います。