冬、樹木は、気温の低下による寒さの被害を受けることがあります。
和歌山県は温暖な地域なので、寒さの被害は一部の地域に限られます。
文字ばかりで申し訳ないですが、今回は、寒さの被害の種類を紹介します。
「冷温障害」
熱帯・亜熱帯産の樹木は、15℃以下の気温で生理的障害を受けます。
これは、低温状態における生理機能の低下が原因で発生します。
身近なもので例えると、野菜や果物を5℃以下の冷蔵庫に入れると変色する現象と似ています。
「寒害」
0℃以下の低温により樹体の一部が凍結することで、水分不足を引き起こして発生する被害を言います。
「凍害」
植物が低温に耐えられる温度以下に冷やされると、細胞内で凍結が起こり、細胞の生理機能を損傷する被害を言います。
この被害は、季節と樹種毎の耐凍性と密接な関係を持っています。
カラマツのように耐凍性が高い樹種ほど凍害にかかりにくく、スギのように耐凍性が低い樹種は凍害にかかりやすい・・・ということです。
細胞が凍結しているため、材内で変色が起こり、その傷を「凍傷痕」といい、材木の価値を低下させる原因にもなります。
「早霜害・晩霜害」
晩秋の成長休止前(休眠前)に起こった突然の寒さで生じる被害を早霜害といい、春の成長開始後の寒さで展葉直後の枝先に生じる被害を晩霜害といいます。
いずれも細胞の凍害が原因で発生します。
「寒風害・寒乾(干)害」
土壌凍結や幹の凍結で水分の供給ができないとき、樹体水分が低下して起きる被害を言います。
寒風害は、冬の季節風にさらされた葉からの蒸散が原因で起こる被害をいい、寒乾(干)害は、日射による樹体温度の上昇による蒸散が原因で起こる被害を言います。
簡単に言うと、水分が供給されない中で葉が蒸散するため、このような被害が発生するということです。
水分が供給されない環境というのは、真夏のような暑さや乾燥だけでなく、凍結などもその要因になります。
「凍裂」
厳冬期に幹の内部から樹皮部分まで、縦(放射)方向に割れる被害を言い、「蛇下がり」とも言います。
割れ目は1m~数mまでに及ぶ場合があり、材内の含水率が高い木ほど発生しやすいです。
割れ目は癒合されますが、再発することもあり、何度も繰り返されると凍裂した部分が盛り上がる「霜腫れ」という傷が発生し、材質の低下と材価の低下を招きます(1度でも凍裂が発生すれば、材価は下がりますが。)。
凍裂は、成長の良い樹木、肥沃な立地で発生しやすいとされています。
「凍上害」
霜柱によって苗木の根が浮き上がり、苗木が倒伏枯死する被害を言います。
「凍土滞水害」
積雪が少なくて寒さが厳しい地域において、緩傾斜地、平坦地、凹地などの土壌が深さ数十cmにわたって凍結し、この凍結が春先に融けて、土壌中に停滞水として留まることで、根の過湿害や呼吸障害を起こす被害を言います。
文字ばかりで分かりにくく、大変恐縮ですが、以上、寒さによる被害のご紹介でした。
虫害や病害は、ある程度の事前・事後対策は可能ですが、気象害はいつ発生するのか分かりませんし、その規模も予測できません。
収穫(主伐)まで50年以上要する林業において、寒さの害をはじめとする気象害は、一番の悩みどころではないかと思います。