ネムノキはマメ科の樹木で、先端が桃色でかわいらしい花が特徴的で、少し郊外の街中でも見られる一般的な樹木ではないかなと思います。
花も特徴的ですが、オジギソウに似た葉も特徴的なので、覚えやすい樹木の1つではないでしょうか。
ネムノキの葉は、羽状複葉で、葉の付き方は互生。
面白い特徴は、日暮れとともに葉をとじ合わせて眠るところです。
夕暮れになると葉を閉じて眠り、夜明けとともに葉を開いて目覚めるその姿が名前の由来となって「ネムノキ」。
ネムノキを漢字で書くと「合歓木」で、この合歓(ごうかん)は、「夫婦の合歓」から来ており、夜になると葉と葉が閉じ合う姿を夫婦の合歓に見立て、幸福の意を込めて、付けられた名前だそうです。
葉の茎に付着している部分と小葉がそれぞれ付着している部分(葉柄)の基部が膨れていて、そこの細胞内の圧力が、昼と夜で変化するので、葉が開閉するそうです。
←小葉の基部
この膨らみの部分を「葉沈(ようちん)」と言います。
ちなみに、オジギソウの葉は、刺激を与えると小葉が閉じて、そして、葉全体が折り下がります。
これは、虫や動物に捕食されないよう、葉を閉じて防ぐそうです。
ネムノキも、葉を閉じるのは、夜中の”何か”から守っているのかもしれない・・・(^_^;)。
花期は6~7月で、花は、葉が閉じる夕方に咲き、葉が開く夜明けとともにしぼみます。
ネムノキは、花が咲くと葉は閉じ、葉が開くと花がしぼむ、という面白い一面を備えています。
というものの、結構、正午なのにしぼんでいない花もありますけどね・・・(^_^;)。
果期は9~10月で、実の形状は豆です。マメ科ですから。
ネムノキの用途は色々あります。
材は建築材、器具材などに使用され、昔は下駄の歯にも使われたそうです。
ネムノキの葉は「抹香(まっこう)」の材料として有名で、乾燥させた葉を粉末状にして抹香として使われます。
樹木そのものは緑化樹(庭木)としても使われます。
また、ネムノキの樹皮は「合歓皮(ごうかんひ)」という生薬になります。
夏~秋頃に採取した樹皮を日干しで乾燥させ、利尿、強壮、鎮痛、腰痛、手荒れ、打ち身、腫れ物、水虫、精神安定などの効果があるようです。
こうした効果があるからなのか、江戸時代の儒学者である貝原益軒(かいばら えいけん)の「花譜・菜譜」(だったかな・・)にも、
「この木を植えると人の怒りを取り除き、若葉を食べると五臓を安じ、気を和らげる」と書かれています。
江戸時代も怒った人がいたら、
「まぁまぁ、とりあえず、これ飲んで、落ちつきなさいなぁ。」と言って、合歓皮を飲ませていたんですかね。
あと、万葉集でも、ネムノキをテーマに詠まれた詩も多く、僕自身、あまり詳しくないんですが、万葉集では「合勧木(ねぶ)」と詠われています。
紀女郎(きのいらつめ)氏の「昼は咲き、夜は恋ひ寝る合歓ぶの花 君のみ見めや戯奴さへに見よ」が代表的・・・というか、知っている詩がこれくらいで、すみません、あんまり詳しくないです(^_^;)。。
「昼間は美しく咲いて、夜は好きな人に抱かれるように眠るネムノキがうらやましい。」という意味だったと思います。
身近な樹木の1つ「ネムノキ」。
実は、万葉集でも詠まれ、江戸時代の学者にも紹介されるくらい、日本に馴染みなる樹木なんです。
歴史を感じさせてくれる樹木だなー。と思いません?