駅前のロータリーでバスを待っていたら、
バス運転手の大きな声が聞こえてきた。
「きれいにいったねえ」
声がする方を見ると、
ロータリーの中央に待機中のバスが数台あり、
その1台の前に運転手が4人集まって、
車体を見ている。
車体の側面に大きく傷ができていた。
電柱に引っかけたようだ。
引っかけたと思しきその電柱は、
車道に向かって傾いているらしく、
それは運転手たちの間では周知の事実のようで、
みんな仕切りにうなづいていた。
一人の運転手が大声で繰り返す。
「電柱注意だよ」
「毎日電柱注意って言ってるよ」
電柱注意。
バス運転手しか口にしないだろうその言葉は、
考えて浮かぶものではないのでとても魅力的だ。