「寿命で愛犬が亡くなった」
愛犬を購入したペットショップに、
そう報告に来た夫婦がいたそうだ。
そこはある犬種の専門店で、
店内には亡くなった愛犬と同じ犬種の子犬がいる。
それを見た夫は、
すぐさま新しい犬を飼おうと言い出した。
だが妻は、
とうぶん新しい犬を飼う気持ちにはなれないと言った。
その日はそのまま帰って二人だが、
後日、妻の方から電話がきた。
「新しい犬を世話して頂きたくて」
あの時は反対していたのに。
気持ちが変わったのだろうか。
さりげなく理由を尋ねると、
「主人が会社から帰ってくるたび、
玄関先で泣くんです」
仕事から疲れてきて帰ってきた彼を、
毎日、愛犬が出迎えていたのだろう。
昔は子どもや妻がやっていたその役を、
愛犬が担っていたのだろう。
こうしてその夫婦は、
新しい子犬を迎えることになったのだ。