白紙の領収書騒ぎで思い出したのは、
なぜか”作りハガキ”のことだった。
僕がそんな必要のあるラジオ番組に携わっていたのはもう20年近く前の話だ。
現在のラジオの現場がどうなっているのかはわからない。
それはさておき。
当時は「作りハガキ」が必要だったのだ。
毎週、色々なコーナーでネタを募集する。
しかし紹介するに足るネタが来ないこともある。
そういう時、放送作家がネタを作る。
それが「作りハガキ」だ。
ネタを考えることはさほど大変ではない。
大変なのは、
パーソナリティーを騙すことだった。
スタッフの「作りハガキ」だとバレてはいけない。
その事に、渾身の注意を払った。
同一人物が書いたようにバレないように、
一生懸命、筆跡を変えた。
筆跡に違いが出るよう、多種類のペンを持つ放送作家もいた。
しかしながら、それでも限界はある。
男性の作家が、女性の「作りハガキ」を書くのは難しい。
そういう時はネタを作った後、女性スタッフを探し清書してもらった。
さらに、ハガキ自体をどうするかという問題もあった。
実際には投函しない「作りハガキ」には消印がない。
これは不自然であり、パーソナリティーにバレるかもしれない。
そこで住所を鉛筆で書き、裏面は白紙のハガキをあちこちのポストから、
番組宛てに投函し、消印付きのハガキを入手した。
パーソナリティーの気分を害さないためとはいえ、
なぜそこまで必死になって騙そうとしたのか、今となっては不思議だ。
白紙の領収書のニュースを読んで、
なぜかそんなことを思い出した。