一年前に家人が、
結婚指輪が指からはずれなくなり、
消防署に駆け込んでいたことを
昨夜突然、告白した。
家人はふだん、結婚指輪をしていない。
しかし去年の今ごろ、
しばらくアメリカに滞在することになった。
その時、結婚指輪をしていた方が面倒な事態を避けられると思い、
ひさしぶりに指輪をして旅立ったという。
そして一週間の旅を終え、
帰国して指輪をはずそうとしたら、はずれなかった。
現地の食事で指が太ってしまったのかもしれない。
次第に指がむくみ痛みを感じるようになった。
これ以上、我慢するのは危険だと思い、近所の消防署に電話をかけた。
「指輪がはずれなくなってしまったんです」
電話口の消防署員の対応は手慣れたものだったという。
どうやらこの手の電話はよくかかってくるようだ。
実際、指輪をはずす前に、
指輪を切断することを了承する署名をするのだが、
そこにはズラリと名前が並んでいた。
家人の前は高齢の女性だった。
指輪を切断するのに使うのはニッパーかと思っていたが、違った。
家人の説明ではその器具の形状がさっぱりわからないのだが、
ネジのような部分を回して、指輪を断ち切るらしい。
しかし、いざ始めてもなかなか切断できない。
困惑する消防署員。
別の署員に交代するが、やはりダメ。
気がつくと、家人のまわりには何人もの消防署員が集まっていた。
家人曰く、
「屈強な男たちに囲まれて、これは何のプレイなのと思った」
この一連の話を聞いて、僕は憤った。
そんなに面白いことをなんでずっと隠していたのか!