知り合いのシングルマザーの話だ。
息子が高校生の頃、2人で温泉に行った。
彼女は当時、四十代半ばだったが、それよりずっと若く見える。
一方、息子は背が高く、高校生には見えなかった。
部屋に来た仲居が、彼女に囁いた。
「貸し切りできるお風呂もありますけど」
どうやら親子ではなく、
年下の愛人と旅行に来た女性と勘違いされたらしい。
しかし彼女が息子に語りかける口調は、
どう見ても母親のそれだから、
宿の人たちはどんなふうに感じていたんだろう。
それはそれで、
かえって「あやしい関係」に見えたのかもしれない。