新生活
2月1日の新聞天風録に川柳が取り上げられていた。「寒いだろ給料袋にカイロはる」。なんとも楽しい、さみしい、寒い---句だ。
入社して数年後に結婚した私の、初めての給料日。当時はまだ給料は、現金の入った紙封筒で、手渡しだった。少し厚みがあり幾分意識は高揚する。仕事終了後、戦術をたてることもせず、ことばを飾ることもせず、また中身を抜き取ることもせず、家内に手渡しした。大きな間違いではあった。
お疲れさまなどのねぎらいと、愛情あふれる表情はあったものと想像できる。また事前に奨学金の返済が必要なことや私の交際費について霧のかかった深さの話はしていた。家内は中身を確認して、「生活が---」と発言し、「しまった」とでも思ったのか、その後言葉を止めた。
立場を整理すると、家内は「これからの1カ月」を考えたのだろうし、私はとっさの「一場面の態度」を考えたかと思う。はっきりしていることは立場の優劣だ。それから40年を超えている。どうもその優劣は変わっていないように感じる。遠い昔を偲ぶことができた記事だった。