熊澤良尊の将棋駒三昧

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肉筆書き駒と、盛上げ駒について、「その1」

2018-07-10 04:19:32 | 文章
7月10日(火)、晴れ。

今日は、肉筆書き駒と、盛上げ駒について触れてみたい。
少々、長文になりそうなので、ボツボツと何回かに分けて書き足して行くことにします。

1,江戸時代以前、駒の文字は極僅かな例外を除いて、ほとんど総てが肉筆で書かれた「書き駒」であった。
  因みに、平安時代の最古とされる法隆寺境内から発掘された20枚ほどの駒は、当時の僧侶が自分用に、
  手慰みに作った墨書の駒である。
  素材は高級なツゲではなく、杉など手近にある端材を利用して、その形は素朴で不揃いな5角形に墨で
  玉将とか歩兵とかの文字を書いて駒にした、どちらかというと粗末なモノであり、庶民的な駒だと言え
  よう。

2,では、当時の駒は、そのようなモノばかりだったのであったのであろうか、少し考えてみる。
  源氏物語で知られるような上流社会の公家達の嗜好は、どうであったかである。
  前に述べた、この時代の遺跡から発掘されているような粗雑で粗末な駒では、当時の貴族は満足するはず
  もない。「もっとしっかり作られた高級な駒も、当時からあったはず」だという考えである。
  しかし、実際には、古い遺跡から発掘された駒には、そのような駒が発見されていない。
  これは、どのような理由なのかである。

3,その理由を、あるときフトしたことで気がついた。
  30年ほど前に「豊島龍山の遺族から譲り受けた遺品」の何百枚あるいは1千枚を超える古いツゲ駒の
  中に、黒くボロボロになったモノが結構沢山あって、中にはお菓子の「ウエハウス」のようにスカスカ
  状態で、かろうじて駒のカタチを保っているものが、百枚ほど。
  どうやらそれは製品にならなかったハネ品であり、龍山は、それらを倉庫の棚に置きっ放しにしていて、
  それが長年、雨漏りにさらされた結果、ツゲの駒がスカスカに朽ちた。
  駒を使いっぱなしにしたり、箱に入れたまま放置すると「黄色や紫のカビが生えやすい」のも同根で、
  「ツゲは雨ざらしに弱く、数年か数十年で朽ちる」。
  ツゲには、そのような性質があるのです。

この続きは、また。
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