熊澤良尊の将棋駒三昧

生涯2冊目の本「駒と歩む」。ペンクラブ大賞受賞。
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25年ほど前の話

2024-12-08 17:08:50 | 文章

12月9日(月)、曇り。
今日も寒く、ブルブル震えました。

今は日本国中そういうこと。しばらく辛抱して春を待つことにします。

コメントで将棋盤について、最上品は天地柾だと書きました。
その天地柾の中でも「すだれ柾」が最上級ということになるでしょう。
すだれ柾は、木口の年輪模様が簾(すだれ)のように、上方から真っ直ぐ下にタラタラと垂れていて美しく、その数は少なく、私はほんの数台しか見たことがありません。

ところで、先日書きました「名人戦創設ゆかりの盤」ですが、その入手した時の経緯を思い出しました。
もう、25年以上(実際は28年くらいかもう少し)前のことです。
ある時、出張で上京して、仕事前にいつものように、上野池之端にある櫛店「十三や」さんを尋ねようと御徒町で下車し、商店街にある骨董店のウインドウの蒔絵の盤を見つけました。
この骨董店は、「十三や」さんに行く前後に良く立ち寄る店で、この日もそうでした。
ウインドウの盤は吉祥の貝の漆蒔絵がしてあって、貝は少し膨らんだり凹んでいたりとリアルそのもの。値段を聞くとかなりなものであった。その盤の蒔絵がこれ。

値段は少し高かったので、多少値引きしてもらって、思い切って買うことになった。

それから2カ月したある日のこと。
その骨董屋から電話があって「熊澤さん。またすばらしい将棋盤が入りました。どうですかネ?」と。
盤はもちろん日本榧。細かな柾目で厚みは五寸5寸2分。蓋には十三世関根名人の署名と揮毫があって、贈・阿部真之助殿とある。」とのことだった。
ウムム。これはただなならならぬものだと直感。詳細を尋ねました。
その結果、「分かりました。二~三日中に伺います。それまでは暗いところにしまっておいてください」と。
 ということで、急遽、千葉工場での仕事を作り、そのついでに(ついででなく、これが本命なのですが)骨董屋さんに立ち寄りました。

店の前に行くと、ウインドウに飾ってあるではないか。
これを見た私は、すぐさま「盤をむき出しで、ウインドウに飾るのは盤の為にならない。すぐに引っ込めてください」と言って、しげしげと眺めました。
盤は思っていた以上。まぎれもなく、昭和10年に始まった実力名人戦に関わるものだと分かりました。
「それにしても、このような盤はどうして手に入ったのですか」と尋ねたところ、「過日、さるところで内覧会があって、そこには立派な碁盤、将棋盤がいくつもあって、私はこれを落札しました」と。
「その内覧会は文京区のコレコレではないか」というと、「商売上の仁義で、詳しくは言えないが、よく分かりましたね」と。

実はその前に、水道橋にあったM碁盤店で「文京区にあるさるお屋敷の大企業の当主が、碁盤、将棋盤を集めるのが趣味で立派なものをたくさん集めていて、この間は、熊澤さんとそのお屋敷に、その内、一緒に見に行こうかと言っていたが、先ほど亡くなってしまった」と、聞いていたところだったのでした。

示された値段は、当時の我が家の年間家計費の半分くらい。それでも欲しいと思いました。
さてどうするかです。

この続きは、後ほど。


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