オオタニサン。やりましたね。20号。
漆について「数種類を混ぜるのは、なぜか?」というお尋ねがありました。
それについて、お答え致します。
一口に「漆」と言っても、色あいは黒色もあれば半透明の木地色もあるわけで、自分好みの中間的な色合いにするためには、混ぜ合わせなければなりませんし、粘っこい漆を使いやすい状態に調整するためにもそれが必要です。
同じ黒でも光沢の具合の違いや混ぜ物の有り無しや、精製方法と処理時間の違いによって粘り気は強くも弱くも変わります。
その違いは実際に使ってみないとわからないし、書きやすく自分好みの漆にするためには、単一の漆をそのまま使うのではなく、選び抜いた数種類を混ぜ合わせて使っています。
追加として、
「油は混ぜるのですか?」という質問もありましたので、混ぜ物の話をします。
混ぜ物のないピュアな漆は、乾くと表面が蝋のような鈍い光沢になるところから「蝋色漆」と呼ばれ、乾いた後、表面を磨き上げることで、深みのある光沢が生まれます。そして品質的には「蝋色漆」は最も固く、本来の漆が持つ特性を最高に発揮し、高級な作家の作品には専らこの「蝋色漆」が好まれて使われるところから、私もそれに倣っています。
「蝋色漆」に対して「塗り立て漆」と呼ばれる漆があります。
「塗り立て漆」は塗った漆が乾くと、表面がピカピカ光った状態で仕上がるので、わざわざ磨く手間もかけずに手早くピカッと光った製品が出来上がります。
混ぜ物は油のほか、蜂蜜などもあって、混ぜ物をすることで、その分だけ漆の量を増やせ、漆自体も多少品質の劣った漆でも、それなりに使えるので、普通の箱やお椀などには高価な「蝋色漆」ではなく、安価な「塗り立て漆」が使われます。
(因みに、日航東照宮の修復には、中国産漆ではなく、専ら日本産漆が使われている)
なお、中国産漆の歴史は古くから日本に入ってきており、昔から多くの駒には安価な中国産漆が使われてきた、と考えて間違いないと思っています。