ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

交信OK

2008-04-27 13:29:36 | 日記・エッセイ・コラム

約束どおり叔父シローの墓参り。
新緑の雑木山がほっくらと膨らみ
何処からかそよ風に乗って、昼の揚げ物の匂いがしてくる。

花を供え、缶ビールの栓を抜いたとたん
どうしたことか! 蛙が一斉に鳴きだした。
あまりに突然のことで、ぼくの方が驚いたくらいだ。
水を張ったばかりの田圃がにぎやかになって
いかにも叔父シローが喜んでいるようにも感じられた。

昔は、墓の前に立っても何ら感慨が湧くことはなかったが
歳の所為だろうか、この頃はすこし思いが変わってきたようだ。
二、三本の雑草を抜き、墓碑を撫でたりしていると
急に体の中に爽やかな風が吹き込んできて
あちらの世界との交信がスイッチONされたような気配がする。
いくぶん体が軽くなるような気もするのである。

そう言えば、叔父シローが初めてぼくに贈ってくれた本が
『ノンちゃん雲に乗る』であった。
叔父からのプレゼントというのは、親からのそれとはちがう
何か特別の感慨があって
50年経った現在でも忘れることのできない
うれしい想い出である。

  
*「ノンちゃん雲に乗る」 石井桃子著 1947年初版本 
                    1951年第一回芸術選奨の文部大
臣賞

   捨てられしままに水仙咲きにけり   やす