門を取り壊したときは
長年そこに在ったものが消えてなくなるという
一種の悔恨、あるいは虚無感のような感慨を抱いたが
その感情ですらひと月も経てば薄れてしまう。
むしろ重々しい建造物のない広がりと自由さも
なかなか良いものだとさえ感じられるようになった。
造っては壊し、壊しては造りつぎつぎと
人間ほど環境に手をつける生きものはいない。
その点、人間は高等生物なのだろうか。
何にでも合わせることができて、
何でもすぐに忘れることができて
それとも人間は単なるお調子者なのだろうか?
ワニガメの生態を観た。
そのグロテスクな容姿に似合わず
実に巧妙な方法で餌を獲る。
口を大きく開けると喉の奥から赤いミミズのようなものが
ひらひらゆらゆら現われる。
魚はそれに惹かれて、吸い寄せられるように口の中へ・・・・
ばくっと顎を閉じれば仕事はおしまい。
そうやってワニガメは何万年も生きている。
神様の創造力には驚かされるが
なぜ人間にだけこんなに忙しい「時間」が与えられたのだろうか。
時間給という労働評価もあって
みんなせかせかきょろきょろ生きている。
ステルスの如く地上すれすれ雨燕 やす