「砂山の砂を指で掘ってたら
まっ赤に錆びたジャックナイフが出てきたよ」
ラジオの深夜放送から流れてくる石原裕次郎の唄。
ぼくが裕次郎を最も眩しく感じた時代で
ほかにも沢山のステキな唄を遺しているが
この唄こそぼくの裕次郎である。
その頃、ふしぎな出来事があって
いっそうこの唄に魅かれていった。
七里ガ浜でのキャンプ最後の夜
ぼくはほんとうにジャックナイフを拾ったのである。
・・・・・偶然というには偶然すぎるが。
半分、砂に埋もれていたが落としたばかりの真新しいナイフ。
バシッと手に響き飛び出す感触と
月光を浴びて蒼白く光る危険に
なにやら獣的な興奮を覚えた。
その夜のお別れ会で裕次郎のようにカッコイイ従兄を真似て
ビールとウイスキーのちゃんぽんを呷り
急性アルコール中毒、
浜辺に医者が駆けつけてくれて何本かの注射・・・・・
以来、酒をこわがるようになってしまった。
15歳、少年からの脱皮の時期であった。
七草の二つを省き粥とせり