「カンツオーネを聞きながら料理を楽しもう」
第二弾に参加した。
テノール歌手が前日から準備してくれたイタリア料理。
オードブルは鮭の燻製。
近くの農園から集めてきたリンゴの枝をチップとしたもので
口に含むと鼻腔でほんのりとりんごが薫る。
一本のままの最高級パルマハムを眼の前で切り分けてくれる。
その薄い生ハムにクレソンを包んで戴くと
苦味と良質の脂のあまみが見事にからみ合う。
同じ皿に黒トリフ入りチキンのパティは
焼きたての白パンに付けて戴く。
メーンデッシュはポルチーニ入り牛肉のシチュウ。
ひかえめなソースに手折りのパスタをからめて戴くと
赤ワインとパルメザンチーズの香りが芳ばしい。
デザートはアイスクリームの上から
熱いカプチーノを廻しかけたもの。
冷たさと熱さとが舌の上で絶妙なコントラストをかもしだす。
一時間半ほどのフルコースが済むと
テノール歌手は急ぎ調理服をスーツに着替えて
場面はコンサートに変わる。
件の友人宅では調理場が狭いため
会場は新築したばかりの生活改善センターを借用した。
いささかミスマッチの感はあるが
テノール歌手が自ら料理したものを
そのまま戴けるという贅沢を
25名の参加者全員が充分に堪能できた。
日向ぼこ六腑に光みなぎらふ やす
収穫の終えたりんご園は寂しい。
たわわに実っていた筈の枝の間を木枯らしが吹き抜けている。
数件、送ってもらうところがあって
女房がそれらの支払いをしているすきに
ぼくは園内に入ってリンゴを盗む。
いくつかのとり残しをねらって・・・・。
この悪徳の行為がなんともスリルがあって好きなのだが
きょうは主人が出てきて
「あの辺りにまだ生っているかも・・・」と
奥のほうを覗いては余計なことを呟いてみせる。
眼をつぶっているから盗んで来いと言わんばかり・・・
これじゃあ駄目!
緊張感と罪悪感のない盗みなんて
ちっともスリリングではない。
コガラの一群がせわしそうに熟柿を啄ばんでいる。
メジロもやってくるらしい。
「山に木の実が豊富なのでことしは飛来が少ない」
と 主人が言う。
主人が目配せしたあたりの
大きいのを盗んだつもりのリンゴ・・・・
家に戻ってから皮を剥くと、半分は虫食いであった。
ぬ、ぬ、奴め!
霊智欲しからばりんご丸かぢり やす