住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

大覚寺の研究2

2007年10月18日 08時52分46秒 | 様々な出来事について
その後両統迭立の和談が調い、後宇多帝の第二皇子後醍醐天皇が即位すると、天皇親政の理想を掲げ、討幕運動を起こし、足利尊氏、新田義貞が参戦して、1333年に幕府を滅ぼし、天皇親政の建武の新政を実現する。

治世の権を息子に譲り、後宇多法皇は大覚寺の再興に尽力され、元享元年(1321)ごろから「大覚寺伽藍古図」に見るような、現在地を南端として、北は山裾に至る広大な地に、金堂、御影堂、心経堂、講堂、さらに沢山の子院が取り囲む大伽藍を造営された。

後宇多法皇は、8歳で皇位につき、二度の蒙古来襲に遭遇し、父亀山上皇と敵国降伏の祈願を行ったと言われ、幼くして霊感強く仏教に帰依されていた。誠に信仰深く、特に真言密教の奥義を究めたと言われる。

仁和寺の禅助から伝授された密教の教えに関する聖教類など密教史上きわめて貴重な多数の書き物、加えて法皇自らが筆を執って書写されたものが多く残されている。法皇撰による宸翰「弘法大師伝」、「御手印遺告」など国宝も収蔵されている。

こうした伽藍の造営とその大覚寺と真言密教に寄せる並々ならぬ信仰から後宇多法皇は大覚寺中興としてたたえられている。しかし、誠に残念ながら、後宇多法皇逝去後12年にして、延元元年(建武3年・1336)足利尊氏によって火を放たれほとんどの堂舎を失ってしまう。

建武の新政は、武士かたの論功行賞などに対する不満から反乱が起こり、3年で崩壊。後醍醐天皇は吉野に行宮を営み、足利尊氏は持明院統の光明天皇を仰いで室町幕府を開いた。60年あまり南朝北朝に皇統が別れていたが、元中9年(明徳3年・1392)には大覚寺の「剣爾の間」で南北講和が行なわれた。

南朝の後亀山天皇は、北朝の後小松天皇に三種の神器を譲って大覚寺に入った。しかし、和議の条件が果たされなかったため、応栄17年(1410)、後亀山上皇の吉野出奔以後、南朝の再興運動が起こり、大覚寺もこの運動に深く関わっていく。

大覚寺はその後、後宇多帝、亀山帝など天皇を父に持つ門跡が続いた後、足利義満の子であった義昭が住職の時、兄将軍義教に対する謀反を起こしたとされる大覚寺門主義昭の乱があり、南朝再興と将軍職継承問題も絡めた政争の中に翻弄された。

そして、このころ14世紀半ばから、疫病が蔓延したりすると、嵯峨天皇宸筆紺紙金字の宸翰般若心経が大覚寺から借り出されて、人々がこの般若心経を飲んだと言われる。宸筆心経の欠損が甚だしいのはそのためと言われ、15世紀後半からは拝見だけされるようになったという。

戦国時代に入り、応仁2年(1468)9月、応仁の乱によりほとんどの堂宇を焼失。その後摂関家からの門主が続き、天正17年(1589)、皇族から空性を門跡に迎えて、衰退した大覚寺の再建にとりかかり、寛永年間(1624~44)には、ほぼ寺観が整えられた。

空性の後、後水尾上皇の弟尊性の頃から、茶の湯、文芸など華やかな文化サロンとして高貴な人々の交流の場となっていたことが、当時の皇族公家の書状が保存されていることから伺われる。

そして、その後四代近衛家から門主が出て、江戸末期、天保8年(1837)に、有栖川宮家の慈性法親王が20歳で門主になると、その四年後に嵯峨天皇一千年忌を催し、その翌年には、東大寺別当を兼務、さらには、江戸寛永寺に住まい日光にある輪王寺の門主となって天台宗の座主をも兼ねることになり、大覚寺を輪王寺が兼務することになる。

慈性門主は大覚寺最後の宮門跡として、心経殿の再興を願っていた。江戸へ下向する日、勅使門・唐門から出た慈性は名残惜しそうに何度も振り返っと言われ、「おなごりの門」と別名される。

結局、隠居願いが聞き届けられ、輪王寺から帰る準備中に上野の森でなくなった。幕府は、尊皇反幕運動の中心人物になるのではないとか恐れられるほどのカリスマ性のあるお方であったことが災いをもたらしたと言えようか。

その後、明治の激動の末、一時無住となり、明治6年に、中御門神海を門主に迎え、皇室から二百石をうけて復旧した。そして、大正13年(1924)、第48代龍池密雄門跡が心経殿を再建。また大正天皇即位式の饗宴殿を移築し、御影堂(心経前殿)とした。

一方、大正11年(1922)、大沢池附名古曽滝跡が国指定名勝、昭和13年(1938)には大覚寺御所として境内全域が国指定史跡に指定された。また平成4年には、心経殿が、指定文化財になっている。つづく


(↓よろしければ、一日一回クリックいただき、教えの伝達にご協力下さい)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ

日記@BlogRanking


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする