小学校が夏休みになりました。
何十年も前のことですが、首からスタンプカードをぶらさげてラジオ体操に
通ったこと、泊りがけで海水浴に行ったこと、朝顔の観察日記や絵日記がめん
どうだったこと、なんだか思い出の宝庫です その宝庫の中にひとつだけとい
いますか、こんな思い出があります。
たしか町の花火の日でした。
「オレんちの物干し台から見るといいぞ」というガキ仲間の家にまだ明るい
うちに押しかけました。彼の家ははがきや名刺や挨拶状などを印刷する端物屋
でした。
そこで、彼の親父さんが私の名前の鉛の活字を「そらっ」といって手渡して
くれたのです。漢字4文字だけですが、銀色で角ばった小さな鉛活字を宝石み
たいにきれいで美しいと感じました。
4文字を糸でしばってハンコがわりにして本やノートに押してみたりして、し
ばらく遊び道具として楽しみました。
おそらく、あれが私と活字との出会いでした。
いまの小学生は「印刷」ということばから、パソコンを使ってコピー機の印
刷することをイメージするそうです。
来週から印刷博物館で夏休みの子供たちが「印刷」と親しむイベントがはじ
まります。夏休み体験教室と銘打ったワークショップで製本・活版印刷・寒天
印刷と3つが用意されているようですが、はたして鉛活字の手触りから「印刷」
を脳裏に刻み込んでくれるでしょうか。