活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

矢萩喜従郎さんとロトチェンコ

2012-03-03 11:26:10 | 活版印刷のふるさと紀行
 ギンザ・グラフィック・ギャラリーの3月展オープニングに行ってきました。
一昨年、庭園美術館でかなりおおがかりのアレクサンドル・ロトチェンコと奥さん
のワルワーラ・ステバーノフ?の2人展を観ていますし、原宿で観たこともありま
すので、「ロトチェンコか」という気持ちが正直、若干ありました。

 ところがドッコイでした。私の眼に、ロトチェンコの作品がみずみずしいくらい
に飛び込んできて、もう一度新鮮な出会いになったのです。
 理由はすぐに了解できました。会場構成がいいのです。作品の中の色に合わせて
しっとりと落ち着いた色の空間に、ロトチェンコの明快で力のこもったグラフィッ
クがとても90年前の作品とは思えない新鮮さで語りかけてくるのです。


 会場構成は矢萩喜従郎さんでした。建築はもとよりグラフィック、エディトリアル、
写真、アート、家具、e.t.c.ロトチェンコをはるかに上回る芸術活動をしておられる
矢萩さんならばこそ、ロトチェンコへの深い理解と愛着を形にされたのだと直感でき
ました。
 地下会場でロトチェンコのお孫さんアレクサンドル・ラブレンチェフさんがビデオ
で矢萩さんとGGGの空間について話しておられるのを聞いてもそれがよくわかりま
した。

 原画はもちろん、印刷作品もふくめて157点という展示作品は全部、このお孫さ
んの所蔵のものを借り出したそうで、初めて見る作品がかなりありました。ブランド
マークを筆頭に現代の要素だらけのポスターにくらべて、実に簡素でありながら、力
強い訴求力をもつ作品に圧倒されます。惹かれます。この写真の作品はゴム会社のポ
スターでラクダの背の上に訴求媒体である靴を置き、アラビア文字のコピーを添えて
います。また、メインの円の中にテーブルオイルを3本配してアッピールしているポ
スターも、これぞロトチェンコのデザイン思想と印象に残りました。

 このロトチェンコの展覧会は3月27日(火)までで、矢萩さんのギャラリートーク
は3月16日、要予約です。
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