活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

残酷なメルヘン、「戦火の馬」を見て

2012-03-10 16:31:00 | 活版印刷のふるさと紀行
 冷雨の土曜日、アメリカ映画「戦火の馬」を観て来ました。
たびたび見せられたTVの上映予告のせいもありますが、監督が
スティーヴン・スピルバーグときては見逃す手はありません。

 舞台は第1次大戦間近かのイギリスの農村、空撮でとらえた美しい田園
風景や主人公になる子馬の誕生の瞬間、それを見守る少年。冒頭シーンか
ら青空のもと、風にのって匂ってくる草いきれを感じさせるほど、観客を
惹きつける導入部描写はさすがでした。

 その馬はやがて少年アルバートの家の持ち馬になり、ジョニーと名付けられ
ます。アルバートにしつけられていくジョニーの眼、しぐさ、大変な演技力で
した。思わず、スビルバーグの「E,T、」の画面、少年と異星人との絡みを
思い出しました。そしていよいよ軍馬への転身です。

 原作名が「War Horse」ですから当然ですが、イギリス軍の最前戦から一転
ドイツ軍に使役されるようになったり、映画の中心はハラハラドキドキの戦闘
シーンです。軍馬ジョニーの活躍がすざまじいのです。
かと思うと、つかの間、フランスの農家の少女に愛されるやさしいシーンもあ
りました。これからご覧になる方のためにあらすじは書きませんが、これぞ、
スピルバーグ作品という出来です。

 しかし、監督は「戦争はすべてを奪い去る」と登場人物にさりげなくいわせ
ていますが、敗戦国民日本人の一人として、まだまだ、戦争はこんなものじゃ
ありませんとだけは、いいたい気もしました。
 スピルバーグは戦線離脱して自軍に銃殺されてしまうドイツの少年兵兄弟、
多分敵兵に凌辱されて亡くなったであろうフランス人少女やその両親、映画の
中で戦争なるがゆえに殺されていった登場人物にそれをいわせているのかも知
れません。

 アルバートとジョニーは劇的な再会をします。過酷な運命に弄ばれた彼らを
結びつける絆の物語。私は残酷なメルヘンだと思いました。原作が1982年
に発表されたイギリス人作家マイケル・モーバーゴの児童図書と聞いてなるほ
どでした。





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