活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

殿様のお嬢さんの本2

2012-03-25 11:01:25 | 活版印刷のふるさと紀行
 勝田さんによると、松田毅一さんは旧制中学卒業のときから「日欧交渉史」を
生涯の研究テーマに決め、上智大学の予科を選ばれたといいます。東大以外は大
学にあらずという周囲の反対を押し切って、しかも戦時下のこと、大変な意思と
決断であったと感心してしまいます。

 『大村純忠伝』の縁で、松田さんの長崎取材は20回近くに及び、旧大村藩内
での講演や対話も同じくらいの回を数えているそうです。
 戦後で列車の切符も手に入らないときだけにさぞかし苦労されたことでしょう。

 松田さんの百冊を越える著作も預かって力になったでしょうが、「南蛮学」や
『ばてれん史」が日の目を見るようになったのは戦後の話、大村純忠直系の大村家
でさえ戦前・戦中を通して「キリシタン」は禁句だったそうです。

 大村家の目黒邸の廊下つづきに分厚い格子のはまった扉付きの内蔵があって幼い
勝田さんは「その中に妖術を使う恐ろしいキリシタンバテレンがいる」と思って、
息を止めて全速力でその前を通ったと思い出しておられます。地元大村でも大村
純忠の話が遠慮なくできるようになったのは『大村純忠伝』が出てからと聞きまし
た。1600年代のキリシタン弾圧の根深さを痛感させられる話です。

コメント
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