今回は、エミリー・ブロンテの*(キラキラ)*『嵐が丘』*(キラキラ)*(ワザリングハイツ)をご紹介します☆
有名なお話なので、題名くらいは聞いたことがあるという方もいらっしゃることでしょう。
とっても毒のある小説です。
まず、二人の女性を中心に男たちが配置されます。
一人は「嵐が丘」と呼ばれるお屋敷のお嬢様、キャサリン・アーンショウ。
もう一人は、その娘、母親と同じ名前のキャサリン(キャシー)・リントン。
舞台は19世紀のイギリスですが、こんなに罵詈雑言の飛び交う小説は読んだことがありません。
そして暴力。
それなのに、物語は恋愛中心で進んでいくのです!
まずは、キャサリンが子どもの頃に、父親が一人の男の子を連れて来ます。
飢え死にしそうになっていたところを拾われたこのヒースクリフという少年と、すぐに仲良くなったキャサリンは、二人で野原を駆け回って過ごします。
しかし、キャサリンの兄、ヒンドリーは、ヒースクリフに辛く当たり、父親が亡くなって家を継ぐと、ヒースクリフを家族ではなく召し使いの地位に落としてしまうのです。
そんな兄に反発しながらも、相変わらずなにかにつけてヒースクリフと過ごすキャサリン。
しかしこの二人の関係は、決して温かなものではなく、時に激しい言葉を投げつけあい、時に傷つけあうこともしばしば。
それでもお互い、なくてはならない存在であり、その姿はまるで一つの魂のように描かれます。
この後、キャサリンはお金持ちのエドガー・リントンという青年に求婚され、キャサリンはそれを受けることにします。
いくらヒースクリフがキャサリンを大切に思っていても、財産もないヒースクリフと結婚したら、その日から物乞いになるしかない。
愛だけでは生きていけない。
むしろエドガーと結婚することで、ヒースクリフの後ろ盾になってやり、兄から彼を守ることができるだろうと語るキャサリン。
それもかなり自分勝手な考えだとは思うのですが、傷ついたヒースクリフは、「嵐が丘」から姿を消してしまいます。
狂ったようにヒースクリフを捜すキャサリン。
そして、ここからヒースクリフの復讐劇が始まるのです。
ここからの展開は、ちょっと常軌を逸しています。
まず、このヒースクリフが、お金持ちになって再び「嵐が丘」に現われ、自分をいじめたヒンドリーからあの手この手で財産を奪い、「嵐が丘」の屋敷と、ヒンドリーの一人息子、ヘアトンを自分のものにしてしまいます。
また、最愛のキャサリンの家庭にもやって来て、密会を重ねた上に、エドガーの妹を手なずけ、駆け落ちのような格好で結婚してしまいます。
幸い、エドガーの妹は、ヒースクリフの正体にすぐに気付き、逃げ出すのですが、その時にはもうヒースクリフの息子を宿しています。
そして最愛のキャサリンが気が狂ってしまい、息を引き取る寸前に産み落としたエドガーとの娘、キャサリン・リントン(キャシー)が成長すると、自分の息子に近づけ、強引に結婚させてしまうのです。
しかも、それはエドガーの財産を自分のものにするためであり、決してキャシーに母親の面影を求めているわけではありません。
彼にとってのキャサリンは絶対的なものであり、彼女の娘だからといって決してかわりにはなりません。
それどころか、逆に、エドガーの娘だということで、義理の娘になったキャシーにも辛く当たるのです!
なんて男! なんて男!
キャサリンに対する一途な愛を貫き、野心家でワイルドなヒースクリフが魅力的だという淑女の皆さん。
いいんですかそれで!?
『源氏物語』を読んでもちっとも光源氏がカッコイイとは思えません。
カッコよさとはまた違う魅力?
なぜ不良ばかりがこんなにモテるの!?
キャサリンの亡骸が納められた棺を掘り起こし、そのフタを開けて愛しい人をながめるヒースクリフ。
私たちの心の中には、善も悪も同居しています。
自分の感情に振り回され、自分で自分を傷つけるようなことをし、自分の心なのにわからなくなったり。
こんな自分が大嫌いだと思った何時間後に、もう笑っている自分がいたり。
弱い自分。強い自分。
ぜんぶ、なにもかもひっくるめて自分自身。
キャサリンとヒースクリフは、作者の魂の一部、一番激しい部分の、二つの磁力の対極であり、だからもっとも引かれ合い、一つになろうとするのかも知れません。
堕落していくヒンドリーも、無学で優しさを表現するのがヘタなヘアトンも、人を傷つけたくないばかりに自分の大切なものを守れないエドガーも、みんな、私たちの心の中に、少しずつ住んでいる…
復讐を果たしたヒースクリフの行く手に待っているのは、いったいどんな結末か?
そして母親を愛した男の手中に落ちてしまったキャシーの運命は?
…しかしエドガー。
キャサリンに横っ面をひっぱたかれて、彼女の猫っかぶりがあらわになったはずなのに、涙で引き止められて、その日のうちにプロポーズ?
そこが一番納得いかない!
エミリー・ブロンテ 著
鴻巣 友季子 訳
新潮文庫
有名なお話なので、題名くらいは聞いたことがあるという方もいらっしゃることでしょう。
とっても毒のある小説です。
まず、二人の女性を中心に男たちが配置されます。
一人は「嵐が丘」と呼ばれるお屋敷のお嬢様、キャサリン・アーンショウ。
もう一人は、その娘、母親と同じ名前のキャサリン(キャシー)・リントン。
舞台は19世紀のイギリスですが、こんなに罵詈雑言の飛び交う小説は読んだことがありません。
そして暴力。
それなのに、物語は恋愛中心で進んでいくのです!
まずは、キャサリンが子どもの頃に、父親が一人の男の子を連れて来ます。
飢え死にしそうになっていたところを拾われたこのヒースクリフという少年と、すぐに仲良くなったキャサリンは、二人で野原を駆け回って過ごします。
しかし、キャサリンの兄、ヒンドリーは、ヒースクリフに辛く当たり、父親が亡くなって家を継ぐと、ヒースクリフを家族ではなく召し使いの地位に落としてしまうのです。
そんな兄に反発しながらも、相変わらずなにかにつけてヒースクリフと過ごすキャサリン。
しかしこの二人の関係は、決して温かなものではなく、時に激しい言葉を投げつけあい、時に傷つけあうこともしばしば。
それでもお互い、なくてはならない存在であり、その姿はまるで一つの魂のように描かれます。
この後、キャサリンはお金持ちのエドガー・リントンという青年に求婚され、キャサリンはそれを受けることにします。
いくらヒースクリフがキャサリンを大切に思っていても、財産もないヒースクリフと結婚したら、その日から物乞いになるしかない。
愛だけでは生きていけない。
むしろエドガーと結婚することで、ヒースクリフの後ろ盾になってやり、兄から彼を守ることができるだろうと語るキャサリン。
それもかなり自分勝手な考えだとは思うのですが、傷ついたヒースクリフは、「嵐が丘」から姿を消してしまいます。
狂ったようにヒースクリフを捜すキャサリン。
そして、ここからヒースクリフの復讐劇が始まるのです。
ここからの展開は、ちょっと常軌を逸しています。
まず、このヒースクリフが、お金持ちになって再び「嵐が丘」に現われ、自分をいじめたヒンドリーからあの手この手で財産を奪い、「嵐が丘」の屋敷と、ヒンドリーの一人息子、ヘアトンを自分のものにしてしまいます。
また、最愛のキャサリンの家庭にもやって来て、密会を重ねた上に、エドガーの妹を手なずけ、駆け落ちのような格好で結婚してしまいます。
幸い、エドガーの妹は、ヒースクリフの正体にすぐに気付き、逃げ出すのですが、その時にはもうヒースクリフの息子を宿しています。
そして最愛のキャサリンが気が狂ってしまい、息を引き取る寸前に産み落としたエドガーとの娘、キャサリン・リントン(キャシー)が成長すると、自分の息子に近づけ、強引に結婚させてしまうのです。
しかも、それはエドガーの財産を自分のものにするためであり、決してキャシーに母親の面影を求めているわけではありません。
彼にとってのキャサリンは絶対的なものであり、彼女の娘だからといって決してかわりにはなりません。
それどころか、逆に、エドガーの娘だということで、義理の娘になったキャシーにも辛く当たるのです!
なんて男! なんて男!
キャサリンに対する一途な愛を貫き、野心家でワイルドなヒースクリフが魅力的だという淑女の皆さん。
いいんですかそれで!?
『源氏物語』を読んでもちっとも光源氏がカッコイイとは思えません。
カッコよさとはまた違う魅力?
なぜ不良ばかりがこんなにモテるの!?
キャサリンの亡骸が納められた棺を掘り起こし、そのフタを開けて愛しい人をながめるヒースクリフ。
私たちの心の中には、善も悪も同居しています。
自分の感情に振り回され、自分で自分を傷つけるようなことをし、自分の心なのにわからなくなったり。
こんな自分が大嫌いだと思った何時間後に、もう笑っている自分がいたり。
弱い自分。強い自分。
ぜんぶ、なにもかもひっくるめて自分自身。
キャサリンとヒースクリフは、作者の魂の一部、一番激しい部分の、二つの磁力の対極であり、だからもっとも引かれ合い、一つになろうとするのかも知れません。
堕落していくヒンドリーも、無学で優しさを表現するのがヘタなヘアトンも、人を傷つけたくないばかりに自分の大切なものを守れないエドガーも、みんな、私たちの心の中に、少しずつ住んでいる…
復讐を果たしたヒースクリフの行く手に待っているのは、いったいどんな結末か?
そして母親を愛した男の手中に落ちてしまったキャシーの運命は?
…しかしエドガー。
キャサリンに横っ面をひっぱたかれて、彼女の猫っかぶりがあらわになったはずなのに、涙で引き止められて、その日のうちにプロポーズ?
そこが一番納得いかない!
エミリー・ブロンテ 著
鴻巣 友季子 訳
新潮文庫