三上延さんの小説『ビブリオ古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)には様々な本がキーワードとして登場するのですが、登場人物の中に”せどり”を生業とする笠井菊哉、通称「男爵」というキャラクターが登場します。
”せどり”というのは古書業界の用語で、掘り出し物を安く買い、それを高く売って差額を収入とする行為。
その「男爵」、笠井菊哉の登場する本として『ビブリオ古書堂』の中で紹介されている本が本屋さんにあったので、読んでみました。
梶山季之 著
『せどり男爵数奇譚』(ちくま文庫)
もともと1974年に出版された物を、2000年に再刊した本です。
古書業界の人々から「せどり男爵」と呼ばれている笠井菊哉。
彼が主人公に語るという形で展開する古書を巡る数々の出来事。
戦中、戦後の混乱期。
士族出身の古書マニアの老人に指南を受けたり、GHQ統治下でユダヤ人の富豪とシェークスピアの初版本を巡りし烈なかけ引きをしたり。
梶山季之さんの書くものだけあって、「ワ印」だとか艶本だとか、危ない話もたくさん出てきます。
中には本の表紙に人間の皮を使った「人皮本」の話まで(!)
江戸時代から家の家宝として伝わってきた和書の秘蔵本が、明治維新と続く大戦で思わぬ所から出て来たり、希少本が田舎の資産家の倉の中で忘れられていたり、未亡人により売りに出されたり、それを発掘し、手に入れる古書店関係者たちの手練手管が面白い♪
興味のない人にはゴミ同然の紙の束が、欲しい人には何億円というお金を払っても欲しいのだから、本を巡る世界は奥が深い!
『ビブリオ古書堂』と違って、年配のオジサンたちが活躍するので、ちょっとむさ苦しいところはありますが、これはこれでとっても面白かったです。
本の世界はまだまだ知らないことがいっぱいあります。
同じく『ビブリオ古書堂』に登場する小川清さんの『落穂拾い・聖アンデルセン』(新潮文庫)も読んでみたいなぁ~
こうやって広がっていくから読みたい本がどんどん増えてしまう…
小説はあまり読まないという人でも、”せどり”とか古本屋をあつかったマンガ、芳崎せいむさんの『金魚屋古書店』(小学館)なんかを読むと、その楽しさが少しはわかってもらえると思います。
こちらは古書は古書でもマンガの古書。
古本屋さんでずっと探していた本を見つけた時なんか、本当に小躍りしたいほど嬉しいですからね。
ずっと探している本がまだたくさんあるんです。
こんな本読んじゃうと、古本屋巡りがますますやめられなくなっちゃうなぁ。