作家、坂口安吾の妻…という書き方は、個人を尊重していないようで嫌いなのですが、これ以外に簡潔に説明する自信がないのであえて書きます。
作家、坂口安吾の妻、坂口三千代さんが書いた、『クラクラ日記』(ちくま文庫)を最近読んでいます。
読むきっかけは、三上延さんの小説、「ビブリア古書堂」シリーズにある重要なヒントとして登場していたから。
「クラクラ」とはフランス語で野雀のことで、そばかすだらけで、いくらでもその辺にいるような平凡なありふれた少女のことをいうあだ名だそうです。
坂口三千代さんは、安吾の死後、銀座に「クラクラ」という名前のバーを開業しています(昭和59年閉店)
その辺にいるありふれた平凡な少女なんてウソばっかり!
坂口安吾との出会い、その破天荒な新婚生活、友人関係、闘病記、そして坂口安吾が亡くなるまで、もう、どこを読んでも目を見張るような描写の連続。
前の夫との間の子供を母親に預け、自分は風呂敷荷物ひとつで安吾の住む家に嫁に行く。
彼のいいなりになりたいと思ったり、私くらいお前を愛してやれるものはいないよ、今より愛されることはないよ、といわれたり。
甘い新婚生活。お金と酒。
出かけたまま帰らない夫を探して旅館にたどり着くと、安吾は女性と一緒。翌朝会うからという伝言を受け取り、夫が他の女と寝ている同じ旅館で一夜を明かす。
睡眠薬に覚せい剤。
書かれている内容は壮絶なのに、このヒシヒシと伝わってくる愛情は何?
人間というものは、なんて無鉄砲で、なんて勇敢なんだと、ページをめくるたびに驚きと賞賛がわきあがってくる。
とっても興味深い内容。
そして、そんな他人が見たら肝を冷やすような生活を、淡々と書く坂口三千代さんの文章がこれまた面白い!
ちょっと夢中になって読んでいます。
作家としての坂口安吾について、正直あまり知らなかったので、この本を読んでその作品にも興味がわいてきました。
ある日、鍋をひっくり返して安吾にちょっとしたヤケドをさせてしまった三千代夫人。
安吾は烈火のごとく怒ります。
「あやまちだといえば許されると思っているのか、コノバカヤロー」
人を殺しておいてあやまちでした、間違いでしたで許してもらえるのか…
間違いでも死んだ人間は生き返らない。
間違いやあやまちはあってはならない。間違いやあやまちに責任を取らないければならない。
「あやまちでしたすみません」ですむと思うのか。
大人の世界はそんなもんじゃないよ。バカも休み休みいえ、このバカヤロー。
どっかの政治家や、電力会社の役員に聞かせてやりたい…
ま、鍋をひっくり返しただけでここまで怒る安吾も大人気ないとは思いますけどね(苦笑)
読んだ本をきっかけにして、また新しい本にハマッてしまった。
でもこの出会いは嬉しい出会いになりました♪
時間をかけて何度も繰り返し読む本になりそうです。