信州スロウライフ12ヵ月

野菜や草花と暮らす生活

沈まぬ太陽

2009年11月01日 23時04分45秒 | Weblog



先週封切りになった、山崎豊子原作の話題の沈まぬ太陽の映画を観る。

先週の土曜日の朝日新聞のentertainmentの欄に渡辺謙の記事が載った。

若さがこれほど価値を持つようになったのはいつの頃からだろう。誰もがアンチエイジングに狂奔する時代。
男優も若さを競い、テレビや映画は年齢不詳の若者であふれ返る。
山崎豊子の小説を映像化するのが流行している。
しかし、大人であることに価値があった頃の大人を演じられる2枚目がいない。
今の男優が大人の重みや渋みを表現しようとしても、力んでいるようにしか見えない。
しかしこの人だけは違う。
何もしなくても大人の男の魅力がにおい立つ。
渡辺謙ほど山崎ドラマが似合う男はいない。

との文章を読んで岡谷の映画館へ出かけた。
映画と温泉とダブルで一日を過ごす計画だった。

映画が始まり、ジャンボ墜落機の事故現場とアフリカでの象を打ち倒すシーン、労組交渉の場面などでそれらが一つに頭の中で重なるまで回想と共に一気に進む。
墜落事故現場の遺族や棺が520人分並ぶ体育館の画面は泣かずにはいられない。
周囲は皆ハンカチで涙を拭き鼻水をすする音が聞こえ、次々と目の奥が熱くなり、涙がこみ上げてくる。

3時間30分の途中休憩時間も入り長い、一人の国民航空の社員の生き様を描いていった。
恩地元という主人公は30年間の不遇の海外勤務を経て、不当な扱いを受け続けても、会社を辞めようとはしなかった。

今の社会では、我慢も限界と感じれば、そこに留まらず他で生きる道を選ぶ。
恩地は何故か?
彼を押しとどめたのは表面的なプライドではない。
悩み苦しみをそぎ落とし、それでも骨の奥に残った矜持です。と渡辺謙は言う。

最悪の事故の遺族担当になり遺族に丁寧に向かい合い、やがて再度アフリカの大地に立つ。

折りしもJALの再建のニュースが毎日目にするが、30年前のその頃の企業と政府のあり方がこのようであったのか
、お金を積んで政府高官を手の中に入れて利益至上主義をまっしぐらに突き進むのと丹念に描く山崎豊子の小説は胸が痛み心が重かった。
登場人物それぞれからも生き方を学ばされた。

新聞記事の最後には、説得力を持つ2枚目の大人が他にいるだろうか。
日本のいたるところで彼のような大人が必要とされている。
若さ至上主義はもう要らない。と結んでいる。

自分達も同じ時代を生きてきた。
今職場でも生活の場でも若さが特権で、アンチエイシングの言葉があふれるが、どうしてどうして、ウイズエイジングと共に
苦労して生きて得た価値を出して行ける勇気を与えてくれた映画であった。

昨年の今頃は緒方拳に涙し、今年は渡辺謙。
感動をいつまでも持ち続けさせてくれる俳優は他にいなくなった。

3時間半の映画が終わり、ムスメとハハはため息をつきながら、その後の温泉行きは取りやめ、黙々と疲れ果てて家に向かったのである。