冒頭から、ラッセル・クロウ演じる殺人鬼の狂気と、ちょっとしたきっかけで暴力が暴走するアメリカの社会がナレーションで描かれる。
映画「パージ」のパージ法が施行されるきっかけになった事件のような映画だ。
原題は「unhinged」で「精神的に不安定な、気の動転した、動揺した、錯乱した」と言う意味で、クラクションを鳴らして殺人鬼のターゲットになってしまう話で、アオリ運転の恐怖より、女が殺人鬼に狙われるホラー映画だ。で、ストレスで暴力が暴走するアメリカ社会だから、この主人公の女性(レイチェル)も殺人鬼と似たようなストレスを抱えていて、気が強い。もしかしたら、殺人鬼側に行っちゃうかもしれない。
ボディスーツを着て殺人鬼を演じたラッセル・クロウは、デカくて力持ちなだけで、殺人鬼の凄みがあんまりなかったなあ。「ビューティフル・マインド」の彼は良かったのになあ。
なぜかマイケル・ダクラスとロバート・デュバルの「フォーリング・ダウン」を思い出した。この映画の2人は良かったなあ。
伏線を上手に拾ってストーリーは進む。レイチェルがスマホをロックしてないせいで、殺人鬼がそのスマホを手に入れて、気の毒な人たちが殺されていく。道路でも無関係な人がどんどん事故に巻き込まれていく。でも、レイチェルの親族は死なない。都合がいいな。
一番驚いたのは、最後の警官のセリフ。殺人鬼と戦って、もちろん予想通りレイチェル親子の勝利なんだが、二人ともかなり殴られてる。10歳位の息子なんてコードで首も絞められてる。レイチェルは正当防衛で勝利!とは言え、殺人鬼を殺っちゃってる。
それなのに、警官が「家(うち)に帰っていいぞ」。で、二人は映画の最初から乗ってる赤いボルボを運転して家に帰るんだ。レイチェルが赤信号無視の危険運転した自動車に、クラクションを鳴らそうとして、でも思いとどまって、息子に「Good choice」というセリフを言わせるためにそんなストーリーにしたんだろうが。
あの巨体に何発も殴られているのに病院行って検査しなくていいのか? ハサミで人の顔突き刺してる殺して数時間後の精神的にダメージを受けてるはずの女の人に、自分で自動車運転させて二人で帰させるってどうなのよ。せめて警官、送っていけよ。それに帰る家(うち)も、殺人現場だよ。殺人鬼が暴れて、血だらけで焼け焦げた後あって、ガラス戸も割れてるんだぞ。そこに帰れだと? ホテル、とってやれよ。
それとも、これが暴力が日常化してるアメリカなのか?
と、どんな恐怖シーンより、そこが一番驚いた。