◎講道館への入門と「五箇条の誓文」
昨日、紹介した服部興覇著『図解説明最新柔道教範』(藤谷崇文堂、一九三三)という本だが、これは、一九二六年(大正一五)に出た、同じ著者による『柔道入門』(藤谷崇文堂)という本と、実質的に同じ本なのではないのだろうか。というのは、国立国会図書館の書誌情報を見ると、『柔道入門』の題簽〈ダイセン〉等に、「柔道教範」、「柔道図解」とあるという注記があるからである。本当に同じ本なのかどうかは、まだ確認できていない。ちなみに、『柔道入門』は、国立国会図書館の関西館のみに架蔵されている。
ところで、『図解説明最新柔道教範』の巻末には、「付録」として、いくつかの資料が載っている。これが、いかにも時代がかっていて興味深い。本日は、これら資料のうち、「講道館入門規則」というものを紹介してみよう。
講道館入門規則
一、入門を請ふ者は願書(第一号書式)に履歴書(第二号書式)を添へ講道館幹事に差出すべし。
一、入門を許可する際には左の五箇条の誓文に記名調印せしむ。
第一条 此度〈コノタビ〉御門〈ゴモン〉に入り〈イリ〉柔道の御教授を相願上〈アイネガイアゲ〉候上は猥に〈ミダリニ〉修行中止仕間敷〈ツカマツルマジク〉候事〈ソウロウコト〉。
第二条 御道場の面目〈メンボク〉を汚し候様の〈ソウロウヨウノ〉事一切仕間敷き〈ツカマツルマジキ〉事。
第三条 御許可なくして秘事を他言し、或は他見為仕〈タケンサセ〉間敷き事。
第四条 御許可なく柔道の教授仕間敷候事。
第五条 修業中諸規則堅く相守可〈アイマモルベキ〉は勿論、御免許後と雖も〈イエドモ〉教導に従事仕〈ジュウジツカマツリ〉候ときは必ず御成規に相背き申〈アイソムキモウス〉間敷候事。
一、入門の許可を得たる者は金弐円を添へ、扇子一封〈センスイップウ〉を入門の儀として納むべし。
一、外国其他〈ソノタ〉遠隔の地にありて入門を請ふ者は、講道館有段者の紹介を以て、願書、履歴書に扇子及び入門金弐円を添へ、誓文に記名調印して送付するときは詮議の上之を許可すべし。
但外国に在住するものに限り、扇子に代ふるに適宜の扇子料を以てする事を得〈ウ〉。
一、外国其他地方の道場に於ては、特に本館の許可を得て此規則を取捨する事を得。